城山三郎「男子の本懐」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「経済学を中心に勉強だけは続けた。それに、松山以来、ずっとロンドンタイムズを購読している。たとえ、草深い日本の田舎にいても、その草に埋もれることなく、目を高く上げ、国際的視野を失わないようにしよう、というのである。」


「人間には、慣れというものがある。慣れによって救われる場合もあるが、慣れによってスポイルされることのほうがはるかに多い。慣れを防ぐには、つとめて初心に帰ること、自らを空しくして、事に取り組むことである。初心に立ち返るためには、ただ手をこまねいて「初心」、「初心」といって居ればいいというものではない。そうではなくて、つとめて新しい勉強をし、新しい角度から、物事を眺めようとする努力が必要であろう。」




「 男子の本懐」とは、昭和5年1月に断行された金解禁を遂行した浜口雄幸と井上準之助が、いかにして一つの政策に生命を賭けたか、人間の生きがいとは何かを静かに問いかけた長編経済小説。 「落日燃ゆ」とともに好きな本だ。