「小室直樹の世界」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「三島由紀夫は、小室博士より7歳ほど年上と、年代もわりに近い。三島は、小説家としての才能があり、また極めて得意な養育のされ方をした家庭環境から、自分を例外者だと見ていた。才能ある例外者として日本社会を生きていかなければならない点は、小室博士と共通していた。」

「もうひとつの共通点は、本質的な近代主義者であるところ。法律学の素養、仏教の素養は、その一例である。「豊饒の海」四部作は、法律と仏教が、通奏低音のように流れる作品だ。尼になった聡子の寺が法相宗であったことから、小室博士は作品に秘められた深い哲理を感得した。三島の法律論、憲法解釈はとても明快で、一流の憲法学者の説明を聞くようである。近代が何であるか、憲法が何であるか、三島は身体にしみこんで理解していたに違いない。数学、物理学、経済学、統計学、社会学、政治学、法学、人類学、宗教学はじめすべての学問のエッセンスが骨肉にしみついているという点では、小室博士も同じ。そこで三島の自決は、同士の死であると、小室博士に理解されたのであろう。」


 三島由紀夫、田中角栄に対する小室直樹の論考を読んでみたい。