遺言書は、当然ですが遺言者の意思に沿ったものでなければいけません。公証人はそれをどうやって確認するのでしょうか?
《法律のきまり》
民法には公正証書によって遺言をする際のきまりが定められています。それによれば、遺言者が遺言の趣旨を公証人へ口頭で伝え、公証人がその内容を書面にして、遺言者と証人に読み聞かせることによって、内容に間違いがないか確認することになっています。
《実際の運用》
実際には時間の都合もあって、予め遺言の内容を公証人へ伝えておき、公証人はその内容をもとに書面を作成しておきます。当日は、その書面の内容が遺言者の意思に沿ったものであるか、証人二人を交えて確認します。
《公証役場での当日》
当日は、公証人が事前に作成した書面を読み上げ、間違いがないか確認することが多いですが、高齢者の場合、遺言者によっては読み上げる前に遺言者に大まかな遺言内容を聞くことがあります。「この土地・建物はどなたに相続させますか?」という具合です。
《食い違いの発生》
ここで、事前に公証人に伝えた内容と違っていると、遺言者の意思が確認できないというこになり、そこでストップしてしまうことがあります。こういうことは実際に起こります。専門家(士業の方)に依頼して遺言公正証書を作成する場合も起こりえます。かくいう私も仕切り直しとなっことがあります。
《原因》
以下のような原因が考えられます。
〇遺言内容を十分に検討しなかった(親族の要望により作成した場合など)。
〇財産・種類が多く、考えが整理できていなかった。
〇迷いが生じた。
〇良かれと思って専門家が起案した遺言内容が複雑だった。
〇主位的遺言(遺言本体)と予備的遺言(※)の区別ができていなかった。
〇公証役場で緊張してしまった。
〇当日、判断能力がなかった(この場合は、そもそも遺言書を作成できません)。
(※)予備的遺言とは、例えば、「自宅の土地・建物は長男に相続させるが、長男が遺言者より先に亡くなった場合は、長男の子(遺言者の孫)に相続させる」といった具合の遺言(後半部分)です。
《対策》
対策として、以下のようなことが挙げられます。
〇十分な時間を掛けて、遺言内容を検討します。
〇予め公証人に伝えた内容と現在の意思内容に変化がないかを確認します。
〇専門家(士業の方)を介して遺言公正証書を作成する場合、遺言内容が複雑だなと少しでも不安を感じたら、何度でも専門家と打合せを行い、説明を受けて自分の意思に沿ったものであるか確認します。
〇その上で、不安な場合は当日、メモを用意するなどします。
参考になれば幸いです。