松居大悟監督、須賀健太刈谷友衣子落合モトキ荒井萌松田翔太谷村美月利重剛木下隆行出演の『スイートプールサイド』。

原作は押見修造の同名漫画。未読。



太田年彦(須賀健太)は高校生なのにまだアソコに毛が生えていないことを気に病んでいる。同じ水泳部の後藤綾子(刈谷友衣子)は反対に自分の毛深さに悩んでいた。ある日、綾子は年彦に「私の毛を剃ってくれない?」と頼む。それから年彦は月曜日の部活の帰りに橋の下で綾子の腕やスネ、そして腋の下の毛を剃るのが恒例となった。おかげでクロールもできるようになった綾子はタイムも伸びて水泳部の代表に選ばれる。ところが、年彦の同級生の麻衣(荒井萌)がふたりの秘密を見てしまう。


あらすじを読んで「なんじゃこりゃ」と思った人もいるだろうし、多分、今これ以外に観るべき映画は他にいくらでもあるんでしょうが、どうも今週はヒット作とか映画好きな人たちが薦めるような作品を観る気がしなくて、あまり他の人が観てなくてしかもアート系ではない、くだらない内容の作品はないだろうか、と思っていたら、以前予告篇で高校生男子が同学年の女子のいろんな部分の毛を剃ってたこの映画が公開中だったんで鑑賞。

ちょっとエロくてキュンとする映画を期待してたんだけど。

映画館はきっと閑散としてるんだろうな、と思ってたら(失礼にもほどがあるが)意外と何人か観に来てて、中にはカップルの姿も。

あのポスターや予告篇観てカップルで観に行こうと思ったというのがスゴいけど。

原作漫画の読者だったりするのかな?

でもまぁ、小さな会場だし、お客さんのほとんどはおそらく水着の女の子目当ての俺みたいなおっさんばっかでしたが。

んで、スクリーンが小さいもんだから真ん前のど真ん中の席で観たんですが、本篇の前に女の子同士がレズったりSMやったりするいかにもなエロ系の作品の予告が始まって、この映画もあんな安い感じのだったらヤだな~、と思っていたんだけど、出演者はわりと名前が知られてたり顔が売れはじめてる人が多いし、内容も青春モノでわりと楽しめました。

途中までは。

中盤以降、主人公とヒロインの仲がギクシャクしだしてから、なんかかったるくなってきちゃって^_^;

原作は読んでないのでそれにどれだけ忠実なのかは知りませんが、映画としてはかなり惜しいなぁ、と。

演出も出演者の演技も撮影もいいのに、脚本が…。

そもそも原作漫画自体がそうなのかもしれないけど、中学生や高校生の男子の妄想をそのまんま映像化したような作品でした。

だって、冴えない男子にいつもちょっかい出してきて実は彼のことが好きな同級生の美少女とか、水泳部でこれまた別の美少女が自分の毛を剃ってくれって頼んでくるとかさぁ。

発想そのものが中坊の妄想以外の何物でもないでしょ(;^_^A

いや、まぁそういう話を観に行ってるわけなんだけれども。

観てていかにも「アニヲタなんかが思いつきそうなパターン化されたシチュエーションだなぁ」と。

どうせ妄想を描くんなら、もっと観てるこちらが身を乗り出して食いつくか、逆に思いっきりヒクぐらいのものを描いてくんなきゃ。

相手への想いが高じて、剃り落とした彼女の毛を食べちゃうとことかイイ感じではあるんだけど。

でも、映画の中で須賀健太演じる主人公の年彦は、同じ部活の毛深い女の子・綾子の生い茂った腋毛を見て「ヒイたわ~」と心の中で呟くんだが、

おまえバカじゃねぇの?と。

こんな美少女の腋に生えてるうっそうとした森(笑)を見たら、そのギャップに逆に萌えるわ!!

 


この程度でヒイてどうするよ。

ヘンタイの風上にも置けない奴だ。置いてくれと頼まれてないが。

昔、パトリシア・アークエットが『ヒューマンネイチュア』で宇宙一毛深い女性を演じてたけど、惜しみない脱ぎっぷりのアークエットはエロかったし、そういえば、安藤モモ子監督による『カケラ』で主演の満島ひかりが“リアル腋毛”を生やしていて、映画館で彼女の腋から「ボッ」と咲いてる小さいタワシ状の毛のかたまりに「ををっ」とちょっとした衝撃を受けたことを思いだす。

ヨーロッパ映画なんかで茶色や赤毛の腋毛を伸ばしたままの女性を目撃したことは何度もあったけど、日本人女性であんなのびのびと成長した腋毛見たのは黒木香(誰なのかわからない人はお父さんかお兄ちゃんに聞こう)以来だったもんだから。

そっか、普通は女性は皆さんしっかり処理してるから無いだけで、自然に生えてるままにしておくとあれぐらい伸びるんだ、とイイ勉強になりました。

結局、主人公は毛深い女の子に対するフェティシズムというのは特になくて、単に彼女の身体に触れたりアソコの毛まで剃ることを妄想して興奮してるだけの、ごく普通の童貞男子にすぎないのだ。

フェチの中には「剃毛」というジャンルもあるらしいけど、じゃあ、そういう剃毛マニアについての映画かというと、剃ったり剃られたりする快感がそんなに突き詰めて描かれるわけじゃないし。

綾子は最初から最後まで自分の毛深さを気にしてそれが取り除かれるのを願っているだけだし、年彦も綾子の太ももの奥の密林を想像してモンモンとしてるだけで、毛を剃る、という行為そのものに特別な思い入れがあるようにも思えない。

彼が綾子の毛を剃るたびに森の中でノコギリを振るう映像が流れて、血だらけになりながら満身創痍で剃り終える場面は笑ったけど。

僕は、年彦は最初は綾子の毛深さにヒイてたのが最後にはむしろ彼女の毛深さにこそ愛着や性的興奮を覚えるようになった、とかいうんであれば実にステキな少年の成長譚になったと思うんですけどね。

で、綾子ちゃんはありのままの自分を受け入れて正々堂々と毛を生やしたままプールで泳ぐ、と。

ありの~ままの~姿見せるのよ~♪

ちなみに、この映画では綾子役の刈谷友衣子は、腕や腋の下、スネなどには作り物の毛を貼りつけている。

よくできてはいるけど、毛の根元が格子状になってて作り物なのがわかっちゃうのが残念でした。


…毛の話で何を熱弁してるんでしょうか、私は。

今回はこういう感じの感想です。

チョイチョイ僕のどーでもいい性的嗜好について触れますので、不快かもしれません。あらかじめご了承ください。

それでは、以降はネタバレもありなのでご注意を。



いきなりですが、小学五年生の時に友人と彼の従姉妹の女の子と一緒にプールに行って、彼女の腕やうなじに産毛が一杯生えてるのを見てちょっとグッときてしまった。

別に毛深い女性フェチでもなんでもないんだけど、でも特に日本の女性ってわりと神経質に産毛の処理までするから、逆に生えっぱなしの状態を見るとなんとなく「隙がある」ようにも思えてちょっとコーフンいたします。

それ以来、女性の産毛フェチに。

ハリウッド映画などで、美人女優さんが意外なほど腕や太ももに産毛がみっちり、しかも長いのが生えてたりして風にそよいでるのを見て嬉しくなってしまうことも。

あちらの人たちは金髪だったりして目立たないけど。

僕自身が体毛が薄いんで、自分よりも産毛が濃い女性には性的魅力を感じるのですね。

…さっきから僕の気持ち悪い情報ばかりを垂れ流してますが、でもこの作品は身体的な「コンプレックス」についての映画で、それは「性」と密接にかかわっているものでもあるから、まったく無関係なことを書いてるわけじゃないのです。

年彦は綾子の毛深さに羨ましさを感じ、逆に彼女は高校生にもなってまだアソコに毛も生えてないような年彦のスベスベの肌(須賀君の肌は見た目それほどスベスベではないのだが)に対して劣等感を抱いている。

年彦が綾子の腕やスネ、そして腋から剃った毛を収集して、夜になるとそれを自分の腕に擦りつけたり、口に入れて食っちゃう場面なんか見てもわかるように、ようするに年彦は綾子のようになりたいのだ。

だったらやっぱり、彼女の腋毛を見てヒイたりはしないでしょ。興奮するはずだ(断言)w

この作品は、高校生の女の子が主人公の男子に剃毛を頼む、というありえないお話をやりたいがために、彼女は不器用で自分で体毛の処理ができず、また肌が弱いために脱毛剤も使うことができない、などという無理矢理な設定となっている。

僕はよく知らないんでそういう人がいたらすみませんが、脱毛クリームが使えないような肌が弱い子が剛毛だったり、水泳部で塩素がいっぱい入ってるプールで泳ぎまくったりできるんですかね?

僕は肌があまり強くなくて体毛も薄いんですが。プールの水も苦手だった。

まぁ、そこは百歩譲って、そういう体質の女の子がいるとしましょう(※「肌が弱くて剛毛ですが、何か?w」という返信をいただきました。そして、剛毛=多毛ではないんですよね。失礼いたしました)。

でも、この映画はどうもおかしなところだらけで、それがいちいち引っかかるもんだから青春モノにもエロにも集中できないんですよね。

たとえば最初の方にも書いたけど、クラスで年彦の後ろの席に座ってる麻衣はいつも年彦にちょっかいを出してきて、僕は最初彼女はクラスにいる単に「おとなしい男子」をからかうのが好きな子だと思ってたら、どうやら麻衣は年彦に気があるらしいことがわかってくる。

「キスして」とか言ってくるし。

 


この辺りなんかも早速2次元ヲタクの妄想じゃないですか。

なんでクラスで冴えなくて部活でも先輩たちから「ツル彦」とか呼ばれてるような奴が、本人は何も努力してないのに勝手にあんな可愛い子に惚れられてんの?

もしも綾子や麻衣がオアシズ大久保さんみたいな顔なら納得しますが。

そんな映画観たくねぇけど。

いやいや、もともと漫画なんだから細けぇことはいいんだよ、って言われるかもしれないけど、高校生の男子が女子の体毛を剃る、というエロい大嘘をつくために、それ以外の部分は極力リアリズムに徹するべきなんじゃないかと思うんですよね。

あんな誰に見られるかもわからないような橋の下で腋毛剃ったり、そもそも海でもプールでもない場所に普通のその辺の女の子が水着一丁で現われたりしないでしょ。

シチュエーションがありえなさすぎるので、エロにもリアリティがない。

せめて人目につかない室内とかにしろよな。


僕がもったいないなぁと感じるのは、この映画が主人公とヒロインの毛を剃る、剃らない、という話に終始してしまって(まぁそういう作品だからなんだが)、他のキャラクターたちがほとんど活かされていなかったこと。

どの登場人物も描き込みが不十分。

なんで麻衣はあんなに一方的に年彦に好意を抱いているのか。

綾子のことが好きみたいな水泳部の部長も綾子とキスしそうになる教育実習生も、彼らのエピソードが中途半端なために、描きようによっては青春群像劇の秀作にもなったかもしれないのが、毛が生える生えないという、中高生には切実かもしれないけど年取ったらきわめてどーでもいいことにこだわるだけの小さな話で終わってしまっている。

もう、後半で年彦と綾子がそれぞれおかしくなっていく辺りで飽きてきちゃったんだよね。あまりにどーでもよすぎて。

綾子のアソコの毛が剃りたすぎて気がふれた年彦は、夜のプールサイドで綾子にそれを願い出るが、「いいよ」と言われて予想通り「やっぱり剃れない!」となる。

こうして『マトリックス リローデッド』の光る扉みたいな綾子のアソコは守られた。

…いや、そういう終わり方でもいいと思うんだけど、やっぱなんかもっとさぁ、まわりのみんなや家族も巻き込んでどんどん暴走していくようなカオスな展開だったらよかったのに。

なぜか年彦の両親は一度も登場しないんだけど、その代わりに兄(松田翔太)とカノジョ(谷村美月)が年彦を見守っている。

この二人はカノジョの方が妊娠しちゃうんだが、それも年彦から「そんなことで悩んでるなんてお気楽でいいね」と言われるだけで、その後は「両親に話したらオッケー出た」みたいなこれまた適当なフォローだけ。




毛が生えないことに悩む年彦にいろいろと兄らしくアドヴァイスする松田翔太はけっこうよかったんで(この人の演技は実際の兄貴である松田龍平よりも自然だと思う)、彼の出番はもっとあってほしかった。


利重剛演じる綾子の父親にしてもただ出てきただけで、やはり話にはほとんど絡まない。

どうやら綾子の家は親父が無職で貧しく食事にも事欠く有様らしいんだけど、そのわりには普通に一軒家に住んでて切迫感がないし、またそういう彼女の家庭の事情は物語とは全然関係ない。

だいたい、父親が娘の自殺未遂(腕毛を剃ろうとして不器用すぎてハサミで切り刻んでしまったのだが)の原因を作った若い男を彼女と部屋で二人きりにしたりするか?

そういうおかしな場面が多過ぎなのだ。

別に家族ぐるみの付き合いがあるわけでもないのに、麻衣がいきなり年彦の家に来て部屋に上がりこんだりコクりだすのもありえないし。

何より綾子が、年彦に毛が生えてきたら彼女の毛を剃るのをやめる、と考えた理由がまったくわからない。

なんで毛が生えたら綾子のことを避けることになるの?

そして彼女は、あの教育実習生と一体どうなりたかったのか。

年彦が水爆の作り方を調べはじめるくだりも意味不明。

わけわかんなくなっちゃった高校生のわけわかんない行動を描いたんだろうか。

もう、作り手がストーリー上とりあえず年彦と綾子を引き離したいので強引に理由つけたようにしか見えないんだよね。

綾子は、自分はあの教育実習生が好きなんだ、と年彦にハッキリ言ってるんだからその通りなんだろうけど、綾子の毛を剃ることに夢中になってる年彦と違って「毛を剃られる」という行為が綾子にどのような影響を及ぼしたのか、彼女にとってはそれが何を意味するのかよくわかんないから、ただ単に思わせぶりなだけの女子になってしまっている。

自分にコンプレックスを持ってて親しい友人もいないという設定なのに、年彦や教育実習生には気安く身体に触れたりして、こんな子いるか?と。

年彦と普通に2ケツしてるしさ。




なんか、リアルに「モテね男」な俺みたいなのからすると、ここで描かれてるのは全部絵空事というか、よーするにモテない男の貧しい空想で作られた世界なんですわ。

確かに奥手な童貞君は女の子から愛想よく話しかけられたり気軽に身体に触られたりすると「この子は俺に気があるんじゃないか」と勘違いしがちだから、漫画的にデフォルメされた世界でそういう高校生男子の女子に対する憧れや恐れ、そして妄想を映像化した作品なのだといえるかもしれないけど。

最後に、ついにアソコに毛が生えた年彦に今度は綾子が「私が剃ってあげる」と言う。

これこそが年彦が夢見た妄想なんだろう。

可愛い女の子にアソコの毛を剃られたい。

イイ感じに頭の悪い高校生の妄想であるw

主役二人や出演者たちの演技はよかったので、それでかろうじて作品が救われていた。

これがアニメだったら、絶対に目も当てられない作品になってるはず。


年彦役の須賀健太は「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズの茶川淳之介役でお馴染みだけど、もう21歳なんだなぁ。

今回も頼りなさげな役だけど、実はけっこう筋肉質の細マッチョだったりする。

さすが、仮面ライダーに出るために鍛えてるだけのことはあるw

この映画では女の子のお尻は一切見られませんが、須賀君のお尻は拝めます(ウホッ)。




須賀健太ファンは観ておいて損はないんじゃないでしょうか。彼に萌える映画なのは確かなんで。

ヒロインの綾子を演じる刈谷友衣子はどっかで見た子だなぁ、と思ってたら、クドカンの『中学生円山』でも主人公をモンモンとさせていた。

僕もこの映画で須賀君と同様にモヤモヤとさせていただきますた(^ε^)

 


水泳部の部長役の井之脇海も見覚えあるなぁ、と思ってたら、NHKの朝ドラ「ごちそうさん」で主人公の弟を演じていたんだな。




また、元水泳部員でチャラめの教育実習生役の落合モトキは、『桐島、部活やめるってよ』で橋本愛と付き合ってるチャラ男を演じていた(年彦のクラスメイト役の太賀も『桐島』出演組)。

皆さん、ご活躍ですね。

 


劇中で綾子と年彦が泉谷しげるの歌を唄うけど、サビだけだったんでできればエンドクレジットで全部流してほしかったなぁ。

歌詞が映画の内容とリンクしてるから、けっこうグッときたと思うんだけど。

泉谷しげる - 春夏秋冬



いろいろ文句言いましたが、でもこういうちょいエロな青春モノはわりと好きなので、ぜひぜひまた男子や女子の妄想に溢れた映画を撮っていただきたいものです。



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