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ジョセフ・コシンスキー監督、トム・クルーズオルガ・キュリレンコアンドレア・ライズボローモーガン・フリーマンメリッサ・レオ出演の『オブリビオン』。

IMAX2Dでの鑑賞。



2077年。“スカヴ”とよばれるエイリアンとの戦争で地球は荒廃し、人類は土星の衛星タイタンに移住を開始した。整備士のジャック(トム・クルーズ)は、スカヴを発見し攻撃するための無人ロボット“ドローン”のメンテナンスと地上の監視のために同僚のヴィカ(アンドレア・ライズボロー)とともに毎日作業をつづけていた。あとわずかで任務は終了し、ふたりでタイタンへ行ける。しかしある日、地球製とおもわれる宇宙船が墜落、調査にむかったジャックは、その残骸から彼の記憶のなかにあるひとりの女性を発見する。


2010年公開のディズニー映画『トロン:レガシー』の監督の最新作。

『トロン:レガシー』はIMAX3Dで観ました。

なかなか楽しいアトラクション・ムーヴィーでした。

わざわざ“アトラクション・ムーヴィー”などという言い方をしたように、映像はそれなりに見ごたえあったけどストーリーの方はようするに『マトリックス』の焼き直しといった感じの、ぶっちゃけかなりおおざっぱな映画でした。

で、この『オブリビオン』も観る前からほかのかたがたの感想をちょっとのぞいてみたところ、「いろんなSF映画の寄せ集めみたいな映画」という意見がけっこうあったので、あぁやっぱりそういうのなんだ、と。

どうやら今回も物語の出来には期待できないよーで。

ただ映像に関しては「すばらしい!」と絶賛する声も多く、そうすると、やはりこれも僕はIMAXで観たリドリー・スコット監督の『プロメテウス』みたいな感じなのかな、と勝手に想像していました。

結果的にその予想はわりと当たってましたね。

いちおうこの映画のストーリーには謎があるんですが、ただし、これから挙げる映画のタイトルでオチがわかってしまうため、この先は映画をすでにごらんになったかたか、ネタバレしてもオッケーというかたのみお読みください。



オーブリヴィオンヌッ

…すいません、予告篇のタイトルコールが耳についてマネしたくてしょーがなかったもんだから。

Oblivion = 忘却。


さて、この映画とまーったく関係ないですが、いきなり寄り道を。

“オブリビオン”というタイトルを聞くと、日本では1996年に公開されたトム・ディチロ監督の『リビング・イン・オブリビオン/悪夢の撮影日誌』という映画を思いだす。

スティーヴ・ブシェミが映画監督を演じていて、あの映画に登場するわがままな映画スターのキャラクターはブラピをモデルにしてる(ブラッド・ピットはディチロ監督の前作『ジョニー・スエード』に出演している)、なんて話もどっかで読んだっけ。

たしかに演じていたジェームズ・レグロスは、ちょっとブラッド・ピット似だった。

当時、インディーズ系の映画を観はじめた頃だったので、低予算映画の裏側を描いたこの作品はなかなか興味深くて印象に残ってるんだけど、トム・ディチロはその後2000年代以降はTVドラマの仕事が多いようで、映画の新作を見ない。

『リビング・イン・オブリビオン/悪夢の撮影日誌』(1995) 出演:キャサリン・キーナー ダーモット・マルロニー



もうひとつは、やはりおなじ頃に日本で公開されたSF映画『スペース・リザード3001』。

これの原題が、やはり“オブリビオン”。

昔、TSUTAYAかどっかでヴィデオを発見したときにこの原題を知ったんだと思うけど、興味をそそられながらもけっきょく観なかった。

今回予告篇を観たら、SF映画とはいっても主人公がトカゲみたいな顔した宇宙人であとは西部劇みたいな作品らしく、ものすごく安っぽくて「これは面白くなさそうだ」と思った。

いや、ストップモーションの大サソリとか、なんかなごむけど。

ちょっと脳内で別のSF映画『アリーナ』とゴッチャになってますが。

『スペース・リザード3001/宇宙の極道蜥蜴』(1994) 監督:サム・アーヴィン



ほんとにどうでもいい話をすみませんでした。

なんか頭んなかでモヤモヤとしてたものを吐きだしたかったので。


気が済んだので話を本題にもどしますが、この『オブリビオン』、映像が見ごたえあるというのはたしかで、それだけでも劇場に足を運んで自分の目で確かめてみる価値はあったと思います。

でも、この映画は不思議なことに2Dとして作られている。

これこそ3Dだったらいっそう迫力があったと思うんですが、なぜそうしなかったんだろう。

前作『トロン:レガシー』で3D映画の大変さが身に沁みたのか、技術的な問題なのか、それとも3Dにまでまわす予算がなかったのか。

理由は知りませんが、おそらく『プロメテウス』がIMAX3Dでこそその魅力を最大限に発揮できたように、せっかくなら3Dで観てみたかった。

トム・クルーズ演じる主人公がバイクで走る場面で、砂に埋もれた建築物や船舶、スタジアムなど実景とCGを組み合わせた映像は2Dでもじゅうぶん迫力はありましたが。

個人的な見どころはそこと空中の施設での風景かな。

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すでにさまざまな人が指摘しているように、この映画には観客が「あ、あの映画」とわかる元ネタがいくつかある。

2001年宇宙の旅』、そして『月に囚われた男』。

赤い単眼のコンピューターHAL9000をおもわせる“ドローン”、最後にあらわれる巨大な逆ピラミッド型の物体。

そして主人公はじつはクローンだった、というオチ。

『2001年宇宙の旅』(1968) 監督:スタンリー・キューブリック 主演:キア・デュリア



味方をなかなか識別しなくて、観ていてハラハラさせてくれるポンコツロボットのドローンは、『ロボコップ』に登場したオムニ社の警備ロボットED209っぽくもある。

あと、大昔に劇場で観たきりなんであまりよくおぼえていないんだけど、マーク・ハミルが悪役で出演してた『風の惑星/スリップストリーム』(監督は『トロン』1作目のスティーヴン・リズバーガー)という映画をちょっと連想したりもしました。

主人公が乗り物で渓谷を飛んでいくシーンとか、モーガン・フリーマンと仲間たちの服装なんかが。

荒廃した土地に緑につつまれた場所がある、といったところなんかも。

『風の惑星/スリップストリーム』(1989)
出演:ボブ・ペック キティ・オルドリッジ ビル・パクストン F・マーレイ・エイブラハム




もっとほかにもあるかもしれないけれど、延々元ネタ探しをしてもきりがないし、別に「アノ映画をパクった!」とか非難したいわけではないのでこのへんにしときますが。

でも、すくなくとも最初に挙げた『2001年宇宙の旅』(“オデッセイ号”という名前などからも)と『月に囚われた男』が意識的にこの映画に取り入れられているのはたしかだと思う。

ジョセフ・コシンスキー監督は、さっきも書いたように前作『トロン:レガシー』でわりと露骨に『マトリックス』の真似っこをやってて、つまりネタ元をあえてかくそうとか思わない人のようだ。

そのあたりを「潔い」ととるか、「あつかましい」ととるかは悩めるところだけど。

よくパクリかオマージュか、といった問題がうんぬんされるけど、過去の作品からなにひとつパクっていない新作などこの世には存在しないので、どの作品をパクったとかそういうことはこの際どうだってよくて(むしろ元ネタを挙げ合いっこしたら楽しいだろうし)、問題なのは彼の作品が総体的にそれら元ネタを超えていないこと。

VFXの技術は進歩して、さらに3Dを使っていたとしても『トロン:レガシー』は『マトリックス』を超える作品にはならなかったし、おなじ2Dの『オブリビオン』は『2001年』を超えてはいない。それは誰が観ても明白でしょう。

また、ストーリーについてもオチを大胆に拝借した『月に囚われた男』(ここまでおなじだともはや偶然とはいえないだろう)以上の面白さがあったとはいいがたい。

ただ、大スターであるトム・クルーズが主演であること以外は。

いってみれば、これは映画スター、トム・クルーズを「人類でもっともすぐれた人間」として描いてみせた(劇中でそう言及される)SF宗教映画かもしれない。

そして、そここそが唯一この映画のオリジナルといえる要素だ。

この映画の主人公ジャック・ハーパーは、「お前たちの神」と称する赤い単眼の巨大な三角すいによってえらばれ、クローン(ここでいう“クローン”とはあくまでもSF映画的なガジェットのことであって、現実のクローン技術とは関係がない)として大量に培養される。

僕がこの映画を観る前に『プロメテウス』を思い浮かべたのも、あながち的外れではなかったようだ。

キューブリックの『2001年』がそうだったように、あれもまたリドリー・スコットの描く“”についての物語だったのだから。

では、ジャックが「ここでずっと暮らしたい」と望んでいた木々や動物たちにかこまれた小屋は、ちょうど『2001年』でボーマン船長が目覚めた白い部屋や、あるいはタルコフスキーの『惑星ソラリス』で“ソラリスの海”に浮かんでいたあの風景のようなものなのだろうか。

あのような荒れ果てた地上の一角にあんなのどかな環境がある、というのもヘンだし、ジャックが執拗に「ここでずっと暮らしたい」と強調するのも妙だったので。

『月に囚われた男』では悲劇にならざるをえない結末が待っていたが、この『オブリビオン』では主人公の夢は最後にかなう。

クライマックスのあたりの駆け足ぶりにもツッコミは入れられるけど、とにかく僕が気になったのは、この監督は『トロン:レガシー』がそうだったようにテーマを深く掘り下げようという気がさらさらないらしく、神と人間についても時を越えた男女の愛にもアイデンティティの問題についてもどうやらたいして興味はないようなのが丸わかりなのだ。

そうでなければ、こんなふうにどっかで観たような場面を数珠つなぎにしてそれでよし、なんていうふうには仕上げないはず。

『2001年』には観客はみんな「この映画のあの場面はいったいどういう意味なんだろう」と悩んだんだし、『月に囚われた男』の監督ダンカン・ジョーンズからは、つづく『ミッション:8ミニッツ』もそうだったように人の“アイデンティティ”について深い関心があるのがうかがえる。

ジョセフ・コシンスキーの作品には、そういうものがない。

だったら単純なSFアクション映画に徹すればいいんで、そのわりにはこの『オブリビオン』はやたらと設定がとっちらかっている。

そして、僕はかなりビックリしたんですが、ストーリーの要となる部分を登場人物たちが毎度台詞で説明しちゃうのだ。

この映画の世界観は、冒頭でトム・クルーズによって延々と説明される。

モーガン・フリーマン演じるビーチは、ジャックが拾った古代ローマについての本のこと(これもじつはたいして深くストーリーにはからんでいない)をぜんぶ台詞で説明する。

最後に正体をあらわす“サリー”によって、またしてもすべて台詞で説明される。

でも、ハッキリいってこれらの説明は単に設定やストーリーの真相を観客に伝える「説明」のための「説明」でしかなくて、そういうことは本来「映像」で語るべきでしょう。

キューブリックがなぜ『2001年』からナレーションをすべてカットしたのか考えてみればわかることだ。

いちいちぜんぶ説明したら映画の神秘性が薄れるから。

リドリー・スコットは説明しなさすぎて失敗してましたが。

まぁ『プロメテウス』に関しては、僕はハゲマッチョと巨大イカがくんずほぐれつ格闘する場面でもとをとった気がしたんで。

この『オブリビオン』には、そういうトンデモなところもなかったしなぁ。

カプセルの中身はてっきりオルガ・キュリレンコだと思ってたら…モーガン・フリーマンでしたぁ、“神さま”ガァ~ン!!というシーンはちょっと笑いそうになったけど。


あ、「なんかまた悪口いいだしやがった」とおもわれてるかもしれませんが、最初からストーリーに期待してなかったから、別に本気で怒ってるわけじゃありませんので。

映像についてはそれなりに満足感もあったので、それ以外で気づいたところを挙げているだけです。


出演者については、オルガ・キュリレンコ演じるジュリアはたしかに主人公にとって最愛の女性なんだけど、映画のなかではずっと具合悪そうにしてるんで、なんかもったいない気はした。

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ふだんは笑顔(^o^)

これまで何本かの映画でその脱ぎっぷりのよさが話題になった人なのに、そういう色っぽい場面はまったくないし。

そのかわり、ヴィカを演じるアンドレア・ライズボローがプールでお尻見せてくれましたが。

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どうせならキュリレンコさんのも見たかったなーっと(なんか話題が急に下衆な方向に)。

モニター越しでいつも「あなたたちは最高のチーム?」と笑顔で挨拶してくるおっかない“サリー”を演じてるのは、僕は観てるあいだはてっきりデブラ・ウィンガーだとばかり思いこんでて「あぁ『シェルタリング・スカイ』でマルコヴィッチとヤリまくってたあの女優さんも年取ったなぁ」などと思ってたら、メリッサ・レオだった。

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ザ・ファイター』ではバットマン、じゃなくてクリスチャン・ベイルのめんどくさい母親を演じてた人ですね。けっこう美人なんだな。怖いけど。

メリッサ・レオって、失礼ながら僕は60代ぐらいの人だと思ってたら、なんとまだ50代前半なんだって。

デブラ・ウィンガーの方が5つも年上なのであった。


そして、モーガン・フリーマンはなぁ…^_^;

なんかちょっと『ドリームキャッチャー』の基地外軍人思いだした。

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この人と仲間についてはあきらかに描写不足・説明不足(あんだけ台詞で長々と説明してたのに)で、けっきょく誰だったんだお前ら、って感じでした。

せっかくメンバーのひとりに『キル・ビル』のスタントや『デス・プルーフ』に出演してたゾーイ・ベルがいるのに、目立ったアクションシーンもなかったし。

量産型ボール…じゃなくてドローンが暴れる場面で、じつはちょっと退屈してしまったんだよね。

ほんとはあそこでこそモーガン・フリーマンたち生き残った人々のことをじっくり描くことができたと思うんだけど、そのへんもかなりおざなりで。


つまり“スカヴ”ってなんだったの?この映画の本筋と関係ないんじゃないの?とか(このへんもぜんぶ台詞での説明なので、右の耳から左の耳に流れていった)、なんでサリーはジャックとヴィカのクローンを作って記憶を消す必要があったの?とか(おなじ顔だったら、そりゃいつか鉢合わせするでしょうよ)、とにかく必然性が感じられない要素がいっぱい入ってて、そういうどっかからもってきたアイディアとか場面を未整理なままつなげてるだけなんじゃないかと。

よーするにこれは、“”にえらばれたトム・クルーズが、その神もろともジャマになったオンナをまとめて始末して(“52号”といっしょにいた最後の一人はどーなったのか忘却してしまったが)愛する女性とともに生き残る、というなかなか困ったお話だったわけで。

それをなんだか感動的な音楽でしめくくられてもなぁ。

しかも生き残ったのは主人公とおなじ顔してるけど別人ですから。

観終わって釈然としなかったのは僕だけでしょうか。


この監督さんは、「謎解き」のような入り組んだストーリーじゃなくて、もっとシンプルなアトラクション映画を撮った方がいいんじゃないかな。

映像へのこだわりはあるんだし、『トロン:レガシー』だって円盤投げやライトサイクルのシーンは観ていて気持ちよかったんだから。

この『オブリビオン』も、特に前半の映像はよかったです。

ただ、上映時間は2時間ちょっとにもかかわらず長く感じたし、「本」は出てきたけどこの監督さんには「物語」を語る能力が不足してると思いました。

また3D撮ったらどうでしょう。


最後に、

オーブリヴィオンヌッ(しつこい)。



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