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ギャレス・エヴァンス監督、イコ・ウワイス主演のインドネシア産ヴァイオレンス・アクション映画『ザ・レイド』。R15+



警察の特殊部隊がギャングの巣窟となっているマンションを急襲する。目的は麻薬王リヤディを捕らえること。しかしマンションの各階にはリヤディの手下たちが棲んでおり、手に手に武器をもって襲ってくる。隊員たちはひとりまたひとりと命を落としていく。


まず、予告篇の冒頭に長々と出てくる、まるで統一性のない過去のアクション映画のタイトルはこの映画とはまったくなんの関係もありません。

これみよがしもいいとこだけど、逆効果だと思う。

これは、いってみればインドネシア版『死亡遊戯』といったところか。

僕は、もしかしたらインドネシアの映画を観るのはこれがはじめてかもしれない。

かねてよりトニー・ジャーの『マッハ!!!!!!!!』やジージャー・ヤーニンの『チョコレート・ファイター』などに次ぐ格闘アクション映画といううわさを聞いて、興味をもっていました。

以下、ネタバレあり。



舞台となるのは古びた高層マンション。

映画はもうこれ以上ないぐらいに単純で、つまり主人公たち特殊部隊の隊員たちがギャングのボスがいる15階の司令室を目指す。

マンションは要塞と化していて、いたるところに監視カメラが取り付けてある。

マンションに住む子どもの通報で警察が踏み込んだことを知ったギャングのボスのリヤディ(レイ・サヘタピー)はマイクで手下たちに招かれざる客の“駆除”を指示、また右腕の“マッド・ドッグ”と呼ばれる殺し屋を差し向ける。

映画では、格闘技“シラット”のインストラクターでマッド・ドッグを演じるヤヤン・ルヒアンが武術指導をつとめている。

ただ、僕はド素人なんでシラットという格闘技についてはこの映画ではじめて知ったし、正直、映画を観ていてもたとえばタイのムエタイとまるで区別がつかなかったんですが。

このマッド・ドッグ先生、ヒゲ面で長髪の喜多郎クリンゴン人みたいな風貌で体格も小柄だが、ひとたび暴れだすとジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー2/クーロンズ・アイ』の「アパアパ」の人ベニー・ライ)みたいに強い。

相手を殺せるチャンスなのに銃を置いてわざわざ素手で闘ったりする。

クライマックスでは鎖で縛って痛めつけていた相手を助けに主人公があらわれると、なんと人質を解放して2対1の戦いにみずからを追い込むという格闘ジャンキー。

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卑怯な手をつかわない男のなかの男である。

別名「バカ」ともいうが。

首に割れた蛍光灯が刺さったまま闘ってるし汗

この映画を観る前に読んだほかの人のレヴューに「ストーリーがかったるい」みたいなこと書いてあったり、「ザ・シネマハスラー」のハスリングライムスター宇多丸さんも「後半が盛り下がる」みたいなことおっしゃってたんでそのあたりはかなり警戒もしていたんだけど、僕はストーリーに関してはさほど疑問を感じませんでした。

主人公ラマ(イコ・ウワイス)とリヤディの手下としてマンションにもぐりこんでいたラマの義兄アンディ(ドニー・アラムシャー)のやりとりも、マッド・ドッグ戦のあとの黒幕についての警部補とリヤディの問答も冗長というほどではなく、必要最低限に切り詰められていたし。

リヤディが警部補にいう「これでお偉いさんの仲間入りができると思ってたのか?あんたはもう終わってるんだよ」という捨て台詞も、いかにもだけど切り捨てられる人間の哀しさが出てて悪くなかった。

ラマと身重の妻の件も、途中で彼や仲間を助ける病気の妻をもったマンションの住人とかさなって、やはり余分な描写ではない。

まぁ、あんなヤクザばっか住んでるところにふつうに堅気の人が入居してるってのも無理があるような気はするけど。

僕はむしろアクション場面でちょっと退屈してしまったんですが。

というのも、ところどころスゴいことやってるのはわかるし(投げられて落下した男がコンクリートの手すりに激突して背骨がグニャるとことか)基本的には面白かったんだけど、先ほどのトニー・ジャーやジージャーの映画のような「見世物」としてのスタントアクションよりも実戦っぽさを優先してか派手さがあまりないこと、そしていろいろ工夫はしているものの、闘う場所がマンションの室内や廊下に限定されているためにどうしても似たような画が多くなってしまって、観ているうちにじょじょに単調に感じられてきてしまうのだ。

僕がこの映画を観て思ったのは、これまでにほかの作品でも感じてたけど、やはりこういうタイプの映画はどこかに「笑い」の要素がないと途中で飽きちゃうな、ってことだった。

あまりにスゴすぎて笑っちゃうってこともあるにはあるけど。

トニー・ジャーやジージャーの作品も笑いがあってこそ僕は楽しめる。

それでもおっかなそうなお兄さんたちがマチェーテやトンファーぶん回したりステゴロで闘いつづける姿にはスカッとしました。

あれだけ殺し合いまくりながら意外とグロさはないし。

宇多丸師匠によれば、この映画で使われてる銃器はほとんどすべてがトイガンなんだそうな。

つまり、日本映画でだってやろうと思えばあれぐらいの銃撃戦が描けるということ。

これ観たらプロの人はきっと発奮させられるでしょうね。

なにしろ制作費は8000万だそうで。

…っていわれても、それが破格の安さなのかどうかよくわかんないけど。

ちなみにこの映画の舞台は「30階建ての高層マンション」となっているけど、じっさいに映画のなかで描かれているのはせいぜい数階で(敵のボスがいるのは15階だし)、じつは10数階建てであってもいっこうにかまわないのだ。

でもそれじゃ迫力がないんで高層マンションという設定にしているわけである。

これもかぎられた予算でなるべく効果的にみせる工夫といえる。

この映画は世界中でヒットしてるそうで、続篇の制作も決まってるらしい。

次回はもっともっと予算が注ぎ込まれるんでしょう。

楽しみにしてます。マッド・ドッグ先生はまた出てくれるかな?(^∇^)



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