管理職になりたいか?って言われると…私はなりたくない。そういう人多いんじゃないでしょうか…
昨今の職場のメンタルヘルスで最も多いのは適応障害だと思います。
適応障害はうつ病や統合失調症のような特殊な精神疾患ではありません。
正常なストレス反応からくる、誰にでも起こりうる心身の変化です。
普通に働いていた人がストレスに晒されて最初は上手く対処できていたのに、やがてできなくなる、という心理反応です。
多くの場合、原因は職場のストレスという外部の環境が要因となって発症します。
うつ病は外部要因以外にも性格や人格障害、脳内の神経伝達物質の異常など別の原因が複数考えられます。
うつ病は適応障害よりも広い概念で、適応障害はその中の一つのパターンです。
でも、実際に適応障害の診断がついて、医師から自宅療養の指示が出ると職場の反応はどうでしょう?
問題の本質は職場のストレスであるにも関わらず、それを考慮しないで当事者個人の能力や思考など内部的な要因に帰着させ、問題の本質を見ることができていない場合がほとんどのように感じます。
そうは言っても、私も上司側、職場側の気持ちは痛いほどわかります。自分達が見聞きしたことがない病気で次々休まれる。
原因は職場環境だと言われても、なかなか納得しがたいもの。
多くの職員が問題なく働いている。その中の一人が職場のストレスでメンタルの不調をきたす。果たして本当に職場の問題か?個人の問題では?と思いたくなる気持ち。
確かに個人の問題もあります。ストレスの受けやすさ、感じ方は人それぞれです。強弱はある。
そして、昔はこんなにメンタルを崩す職員がいなかったのになぜ…、職場は何も変わっていないのになぜ…、自分達の管理の問題ではなく、最近の若者の特性ではないのかと腑に落ちない気持ちでしょう。
確かに世代の特性もあると思います。
そして、上司世代も特性があるように感じます。
上司世代は、働き方が画一的で育成や指導もあまり理論的ではなかった時代。理屈ではなく感覚というか。
そしてその頃、経済成長期からバブル期。
努力すればするだけ成果に繋がった。社会全体が活気に満ちていて働くことの意味も見出しやすく、人々は努力することが生活レベルの向上や富みを生み出すことに直結していることを実感できたため、ストレスは多くなかったのではないかと思います。
実際、バブル期は私たちの少し上の世代。今の管理職の若かりし頃ではないでしょうか。
その後、日本は景気が後退。
頑張っても就職できない、給料は上がらない、経済格差が広がる。子供達はいじめや不登校、引きこもりが増えた中で教育も迷走。
経済とは裏腹にインターネットや携帯電話が使用され始め、人々の生活は情報に満ち溢れてきます。仕事でも膨大な情報を処理しなければならなかったり、業務時間に関係なく連絡が来るようになる。電話やメール、ネットから離れられない生活。それだけでもストレス過多。
SNS等では他人の生活が丸見え。自分と他者を線引きする空間が減り、ネット上での繋がりがメインの生き方となっています。
努力と成果が1:1ではない時代に生まれ、情報やコミュニケーションストレスを受け続けているのが今の若者です。
それに加えて、このコロナ禍。
ストレスがあっても飲みに行けない、遊びに行けない。リモートでしか人との関わりが持てない、マスク生活で相手の表情が読めないなど対人関係への影響。弊害の多い時代と青春が重なりました。
違う時代を生きた人種が上手く交わっていくのは一筋縄ではいかないのが現状です。
【上の立場のあなたがやるべきこと】
上司が部下のメンタル不全に対してどうするか。
・どうしていいかわからず、結局何もしない
・「根性」「気のゆるみ」など精神論に置き換える
・「この程度でおかしくなるはずがない」など、自分の価値観で判断する
・親身になりすぎて部下との関係を余計に濃密にする
良くある対応ですが、やってはいけない対応だと思います。
部下がメンタルで休職してしまった上司がやるべきことは、
1.正しい知識を身に付ける
適応障害をはじめ、メンタル不全についての知識を得る
職場のストレス=外的要因
個人の感じ方、考え方などの心理的要素=内的要因
ストレスに晒されていた期間=時間的要因
この3つの要因が適応障害を発症する3要因です。
部下の状況についてこの3つについて考えてあげましょう。
解決できない課題やゼロにできない要因もあると思いますが、それでも軽減することができないか検討するべきです。
外的要因が除去され、内的要因に自分や周囲が上手く対応するることでかなりストレスは軽減できるはず。
時間的要因は、ストレスに晒される期間が短ければ短いほど回復や復帰は早くなります。
長期になれば、外的要因や内的要因が除去されても職場に復帰するには時間がかかり、症状が長引きます。
つまり、早期に対応することが大切であり、日頃からのストレスチェックやコミュニケーションにおいて不調や兆候を早期発見することが求められます。
2.組織的に取り組む
メンタル不調の原因はあなたの管理能力だけが原因ではありません。
事業所全体が直面している課題です。
面倒とは思わずに、疾患を理解し、多様な接し方、コミュニケーションを上司自身が学ぶ。
制度や支援体制を作り、活用することはもちろん、ストレスが少ない職場環境に改善する方法を検討してください。
産業保健の取り組みには4つのケアが挙げられます。
①セルフケア(自分で健康管理する等セルフコントロールするケア)
②ラインケア(係長、課長、部長、場長など上司や職場によるケア)
③事業場内産業保健スタッフ等によるケア
④事業場外資源によるケア
ケアの順序も①〜④の順で行われます。
③④は保健師や産業医、専門医の関わりが必要なケアです。
①②を強化することが③④の状況を予防することに繋がります。
私はメンタルヘルスケアにおいて、職員の育成や教育は不可欠だと考えます。
対人関係やコミュニケーションを学び、社会人としてのストレス対処能力を上げるのはセルフケアの一つですし、管理職が管理するのは個々の業務だけでなく、仕事へのモチベーションを引き出し、健康的に働ける人間関係や職場づくりです。部下との会話、業務の割り振り、指示の出し方、指導の方法は重要なラインケアです。
優秀だと思っていた人が、頑張っていた人が、ある日突然メンタル不全で休職する。また、なんとなく兆候が見えていたけど「大丈夫です」という本人の言葉だけを判断材料に何も介入しなかったらやっぱり診断がついて休職してしまった。
という状況は①②のケアが機能していない証拠だと思います。
職場の危機を組織全体で共有し、全体が同じ方向を見て取り組むことを考えてもらいたいと願っています。
メンタルヘルスは上司も部下も当事者一人の力で解決するなんて無理!
管理職のメンタルの為にも何かヒントになることお伝えできればよいのですが…
参考図書:『もし部下が適応障害になったら』