ジェームズ・タイラー・ケント博士による


「ホメオパシーのマテリア・メディカに関する講義」(1911年)より和訳します。

 

ホメオパシーは、宇宙指数になる程、希釈し振盪した物質が、


どのような症状を作り出すかを証明し、


それを、その症状を持つ人に与えることで、体自身が情報を得て、


自ずと治癒に向わせる、というメソッドの代替医療です。

 

マテリア・メディカでは、その症状の記録が書いてあります。

 

 

 

 

Sulphur (ソーファー/硫黄)

 

Sulphurは、どこから手をつけていいかわからないほど、

充実したレメディーだ。

 

人のあらゆる病気の類似点が含まれているようで、

初心者がSulphurのプルービングを読むと、

すべての病気のイメージが含まれているようなので、

他のレメディは必要ないと、自然に思うかもしれない。

 

しかし、それが人のすべての病気を、治すわけではないことがわかっており、

他のレメディーと同じように、無差別に使用するのはよくない。

マテリア・メディカについてあまり知らない医師ほど、

Sulphurを頻繁に処方するようだが、

優れた処方者でも、そうである;

そのため、医師がSulphurを処方する頻度から、

医師の無知と知識の境界線を引くことができない。

 

Sulphurの患者は、やせているか、太っていて、

お腹がすき、肩がこっている、消化不良の人だが、

多くの場合は、太って丸々としていて、

栄養状態の良い人に与えることになる。

 

しかし、典型的なのは、角ばった、痩せ型の猫背の患者であり、

特に、長い間の消化不良、悪い同化作用、貧弱な栄養状態から、

このような状態になった場合である。

Sulphurの状態は、長い間家に閉じこもっていて、

食事を胃に合わせることによって起きる事もある。

 

部屋に閉じこもって、勉強したり、瞑想したり、哲学的な探求をしたり、

運動をしないで、座りっぱなしの生活をしている人は、

しばらくすると、

簡素な食べ物しか食べられないことに気付き、

体を養うのに十分でない食べ物だけとり、

最終的には哲学マニアになってしまう。

 

また、顔にSulphurの症状が見られる患者もいる;

汚れ、しなびて、赤い顔の人だ。

皮膚は大気の影響を受けやすいようである。

寒い日も湿った日も、外気に触れると顔が赤くなる。

 

繊細で薄い皮膚で、ちょっとしたことで顔を赤らめ、

どんなに洗っても、いつも赤くて汚い顔をしている。

子供の場合、母親が頻繁に顔を洗っても、

いつも、とりあえず洗ったかのような顔をしている。

 

ヘリングはSulphurの患者を「ぼろを着た哲学者」と呼んだ。

 

Sulphurの学者は、発明家であり、古ぼけた服とボロボロの帽子で、

昼夜を問わず働き、長髪で汚い顔をしている。

Sulphurは、このような無秩序な状態、整頓されていない状態、

不潔な状態、「どうなってもいい」という状態、

自分勝手な状態を生み出すようだ。

 

彼は偽哲学者で、この状態が続けば続くほど、

世界が彼を、地球上で最も偉大な人物と考えていないことを知って、がっかりする。

老齢の発明家は、いくらやっても失敗する。

 

このような症例で起こる病訴は、

たとえ急性の病訴であっても、Sulphurになる。

このような患者を受け持つと、

何週間も同じシャツを着ていることに気づくだろう。

もし彼に付き添う妻がいなければ、

彼はシャツが落ちるまで着続けるだろう。

 

Sulphurの患者は、清潔にすることにあまり関心がない。

彼は汚れているのに、

きれいな襟や袖口、きれいなシャツを着る必要性を感じていないのである。

Sulphurは清潔な人にはほとんど適応しないが、

不潔さを気にしない人には適することがよくある。

 

町の診療所に勤めている時、

Sulphur投与後、自分のことを気にし始め、

清潔なシャツを着ていることに気づくことが何度もある。

この人は前は、同じ古いシャツを着ていたのだ。

また、Sulphurの患者で、特に小さな子供たちは、

あっという間に服を汚してしまうことには驚かされる。

 

子供は、非常に驚くほど不潔な傾向がある。

その小さい子がSulphurの患者だと、不潔なことについての話を母親はする。

子供は鼻や目などからカタル状の分泌物を出し、

鼻くそを口に入れることがよくある。

 

さて、奇妙なことだが、
Sulphurの患者が嫌うのは、不快な臭いだ。
不潔な臭いには過敏だが、不潔な物質そのものは、食べたり、呑み込んだりする。
自分の体や自分の息の臭いにさえ吐き気を催す。

 

便はとても不快な臭いで、一日中この人に付きまとう。

彼はそれを臭う事ができると、思っている。

悪臭に敏感なため、彼は何よりも腸内を清潔に保っている。

それは誇張された嗅覚だ。

彼はいつも不快な臭いを想像し、探している。

この人は通常、非常に強い想像力があるため、

記憶の中にあるものだけ、嗅ぎ分ける。

 

Sulphurの患者は、全体を通して不潔である。

彼は不潔な悪臭の犠牲者である。

息は不潔で、強烈な悪臭の便が出る。

性器は不潔な臭いがし、服を着ているにもかかわらず、

部屋の中でもその臭いがし、自分自身にその臭いがする。 

分泌物は、常に多かれ少なかれ悪臭がし、強く不快臭さがある。

常にシャワーしているにもかかわらず、脇の下からは刺激的な臭いがし、

時には、体全体が腋窩から出るような悪臭を放つ。

 

身体のあらゆる部分から出るSulphurの分泌物は、

不快であるだけでなく、表皮を削ぐ。

Sulphurの患者は、あらゆる粘膜のカタルに悩まされ、

カタルの排出物はそこら中の表皮を削ぐ。

鼻風邪では、分泌物で唇や鼻の表皮を削がれる事がよくある。

 

時には、鼻に残った鼻水は火のようにヒリヒリし、

それが子供の唇に触れると、燃えるように痛く、刺激がある;

Sulphuricum acidの状態とほぼ同じで、触れた部分が赤くなる。

 

月経は大量で、性器の皮膚が剥ける。

薄い便が、肛門の周りで、燃えるように痛く、皮膚が剥けたようになる。

女性の場合、尿が一滴でも性器に残っていると、燃えてひりひりする;

多くの場合、拭うだけでは不十分で、洗い流さないと痛みが和らがない。

 

子供においては、肛門と臀部の間が表皮剥離を起こしているのが見つかる;

便によってその裂け目全体が赤く、皮膚が剥け、炎症を起こしている。

 

この傾向から、一つのキーノートが出来上がり、それは悪い意味ではなく

「いかなる体液も、通過する部分を燃やす」というもので、

体液が刺激性で、ヒリヒリした痛みを引き起こすという意味である。

この事は、Sulphurのどこにでも当てはまる。

 

Sulphurの患者は、あらゆる種類の発疹が起きる。

 

小水疱、膿疱、癤、鱗状の発疹ができ、いずれも強い痒みを伴い、

分泌物や化膿を伴うものもある。

皮膚は発疹ができなくても、痒みが強く、

暖かい寝床や、ウールの服を着ることで痒くなる。

 

Sulphurの患者の多くは、絹や綿以外のものを着られない。

痒いところを掻くことができないと、部屋の暖かさで絶望に追い込まれる。

掻いた後は、痒みが緩和されるが、燃えるような痛みがある。

掻いた後や寝床の暖かさに入ってから、

大きな白い湿疹が体中に出てきて、さらに痒くなり、

そのため、皮が剥げるまでか、燃えるように痛くなるまで掻き続けることになり、

その後痒みがおさまる。

 

この過程は継続し続ける:

夜寝ている間、恐ろしいほどの痒みが起き、朝起きるとまた始まり、発疹は痒く、ジクジクする。

オデキの群れや小さなオデキのような発疹が出てくる。

そのため(Sulphurは)とびひにも有効である。

 

このレメディは化膿に役に立つ。

(これは)あらゆる種類の化膿性の腔、小さな膿瘍や大きな膿瘍を作り出す;

皮膚下や、細胞組織、内臓の膿瘍を形成する。

化膿の傾向は、Sulphurにおいて顕著である。

腺が炎症を起こし、その炎症が化膿へと進む。

 

Sulphurの病訴が起きる所はどこにでも、燃焼感が見つかる。

あらゆる部分が燃焼する;

うっ血しているところが燃えるように痛い;

皮膚が燃えるよう、または皮膚に熱感がある;

あちこち部分的に燃焼する;

腺、胃、肺が燃える;

腸、直腸が燃える;痔が燃えヒリヒリする;排尿時に燃える、または膀胱に熱感がある。

あちこちに熱感があるが、特に典型的なSulphurの患者は、

「足の裏や、手のひらや、頭のてっぺんが燃える」

と言う。

 

足の裏の燃焼感は、患者が寝床で温まると、気づくことが非常に多い。

Sulphurの患者は、夜寝床に入ると足の裏が非常に熱くなり、燃えるようで、

足をシーツから出したり、足を布団の外につき出して寝る。

Sulphurの患者の足の裏と手のひらを調べると、皮膚は厚く、寝床で温まると燃焼する。

 

多くの疾患は、寝床で温まることによって起こる。

Sulphurの患者は、暑さにも寒さにも耐えられないが、外気を強く欲する。

一定の温度を欲する;激しい温度の変化はきつい。

 

呼吸に関しては、苦しい時には、ドアや窓を開けたがる。

しかし、しょっちゅう体はわざわざ覆うのだが、

衣服で暖かくなると、皮膚のかゆくなったり燃焼したりする。

 

悪化する時間については、疾患が晩に起きるのが特徴である。

 

頭痛は夕食後に始まり、夜になるとひどくなる;

痛みのために眠りにつくことができない。

夜痛みが起き、夜喉が渇く;

夜苦しくなり、寝床で温まると皮膚の症状が出てくる。

 

「断続的で周期的に起きる神経痛は、24時間ごとに悪化し、

 一般的には午前12時または午後12時に発生する」

 

真昼もSulphurの病訴が悪化する時間帯だ。

正午に寒気がし、正午には熱が上がり、

正午には精神的な症状が増し、正午には頭痛がひどくなる。

 

週に一度の病訴、7日間の悪化は、Sulphurのもう一つの特異な状態である。

 

Sulphurの患者によく見られる下痢は、

昔から「Sulphurの下痢」として知られているが、

他の多くのレメディーにも、早朝に下痢をするという同じような症状がある。

 

Sulphurの下痢は、深夜から朝にかけての時間に属するが、

どちらかというと、起きようかと思い始める時間である。

 

「下痢のため、寝床から飛び出す」

 

それは一般的には薄い水状;

噴出はあまりなく、量もあまり多くなく、時にはかなり少なく、黄色い便が出ることもある。

この朝の排便後、多くの場合、翌朝までそれ以上の問題は起こらない。

 

朝、寝起きに便意を催すという症状が、年中続いている人が多い。

腸の痛み、腹痛、不安感、燃えるような痛みに悩まされる。

通過する便は燃えるようで、

便が触れる部分はどこでも、痛く、表皮を剥ぎ、かなり擦りむく。

 

Sulphurの患者は非常に喉が渇いている。
いつも水を飲んでいる。

大量の水を欲しがる。

 

この人は、お腹が空いたとか、何か食べたいと言うが、

食卓につくと食べ物を嫌がり、目をそむけ、食欲がなくなる。

ほとんど何も食べず、非常に簡単で軽いものしか口にしない。

刺激物やアルコールを欲しがり、牛乳や肉を嫌う;

後者を摂ると気分が悪くなるので、欲しがらない。

 

随分前、ある人が、これらのことから

「よく飲み、ほとんど食べない」

というキーノートを考案した。

 

これはSulphurにおいて真実であるが、

他の多くのレメディーでも同じ症状がある。

キーノートの使用に関しては、

すべての症状とその関連性をまとめるのがよいと、言っておこう。

1つの小さな症状、あるいは2、3の小さな症状に、大きく頼らないほうが良い。

症例全体の症状を考慮した上で、

キーノートや特徴、その他すべてのものが、レメディーを包括し完全なものにし、

患者全体のように見える時、初めてそれが適したものとなる。

 

午前11時にお腹が空く。

24時間の中で空腹を感じる時間があるとすれば、それは11時である。

昼食が待てないようだ。

 

Sulphurの患者について、こういう事もある:

いつもの食事時間になると、非常に空腹になり、

食事が遅れると、弱って、吐き気をもよおす。

12時頃に食事をする習慣のある人は、午前11時に、空っぽな空腹感を感じる。

1時や1時半に食事をする習慣のある人は、12時頃にその感じが起きる。

空っぽの感覚は、多くの人の場合、食事の定刻の約1時間前に起きる。

 

顕著なSulphurのグループを凝縮するとこうなる;

午前11時に胃の中が空っぽの空腹感になり、

足の裏が燃えるようになり、頭のてっぺんが暑くなる。

 

この3つは、Sulphurの必須条件とされてきたが、

Sulphurの始まりには、ほとんど見られない。

 

Sulphurには、発疹の他に、皮膚の不健康な状態がある。

皮膚がよくならない。

小さな傷は化膿し続ける;

皮膚の下にできた膿瘍は、瘻孔のある小さな排出腔となり、

これらは漏れて、長い間出続ける。

 

Sulphurは、炎症部分に浸潤を作り出し、

そのため、そこが硬くなり、この硬さが何年も続く。

炎症が肺のような重要な臓器に起きた場合、

この浸潤はずっと耐えられるものではない;

肺炎の後に、肝変と呼ばれる浸潤を残す。

 

Sulphurは、全身の炎症部位に同じ傾向を作り出すため、

肝変の治療によく使われる。

 

Sulphurは、有機組織における乾癬の状態のため、

疾患が長引いた後に、患者が反応しない場合、非常に有用なレメディである。

急性疾患の終わりあたりになると、患者は弱り、疲労困憊になる。

炎症状態は、化膿や浸潤となる;

患者は衰弱し、かなり疲労困憊し、寝汗をかく。

 

腸チフスなどの急性疾患の後に回復しない。

回復が遅く、有機組織も疲弊しており、急性疾患の後、調子が戻らない。

このような状態では、Sulphurがしばしば非常に有用になる。

飲んだくれの老人は衰弱し、アルコールへの激しい渇望がある;

酒をやめることができない。

強くて刺激的なものを欲しがり、何も食べたくなく、

冷たい水やアルコールを飲みたがる。

大変疲れるまで飲み続け、疾患が現れる。

Sulphurはしばらくの間、酒へのその渇望を取り除き、元気にしてくれる。

 

組織は弱くなっているようで、わずかな圧力でも痛みを感じ、

炎症や化膿を起こす事もある。

Sulphurの患者は、血行が悪いため、床ずれができやすい。

また、圧迫による硬化も強い特徴だ。

 

Sulphurは、圧迫により魚の目や、豆ができる。

これらの症状が現れやすい。

靴が皮膚のどこかを圧迫すると、大きな魚の目や外反母趾ができる。

歯が舌や頬腔の他の部分と接触すると、小結節が形成され、

これらの小さな小結節は時間の経過とともに潰瘍化し始める。

 

燃えるような、刺すような痛みを伴いながら、

ゆっくりと進行する。癌になることもある。

長期間継続し、その後、悪性の状態になることもある。

癌は、体内にある状態が、外に向かって成長したもので、

その状態は、連続した状態から起きるのかもしれない。

1つの連続した状態ではなく、

悪性状態が、良性状態に後続しているのかもしれない。

Sulphurは、症状が一致した場合、これらの状態を取り除く。

 

Sulphurでは、静脈の乱れが顕著に見られる。

静脈のレメディーであり、静脈の問題が多い。

静脈が弛緩しているように見え、循環が停滞している。

天候や衣服などのちょっとした刺激で、顔があちこちが火照る。

顔が腫れる。

 

Sulphurは静脈瘤がある;

最も顕著なのは痔の静脈で、肥大して燃えるような、刺すような痛みがある。

四肢の静脈瘤。

静脈が潰瘍化し、破裂して出血することもある。

寒いところから暖かいところに出ると、

静脈が肥大し、手足が膨らみ、全身が膨らんだような感じなる。

 

Sulphurの患者はやせ細り、

特に腹部の膨張を伴う四肢のやせが特徴的である。

腹部は肥大しており、ゴロゴロとした痛みや灼熱感があり、

腹部の肥大に伴って他のすべての部分が痩せていく。

首、背中胸郭、四肢の筋肉が衰え、腹部の筋肉も衰えるが、

腹部自体の膨らみが大きい。

このような状態はマラスムスu(栄養失調)に見られる。

 

Calcareaでも同じような状態になる;

Calcareaを必要とする女性においては、

腹部の大きな肥大、膨張、硬さと、体の他の部分の収縮が見られる。

 

Sulphur下では、女性の更年期に見られるような、顔や頭の火照りがある。

Sulphurの火照りは、一般的には胸部と言われる心臓部のどこかで始まり、

まるで、体の中で熱の暖かさが、顔に向かって上がってくるような感じがする。

顔は赤く、熱く、紅潮し、最終的に熱は発汗で終わる。

 

汗と赤ら顔を伴う熱の火照り;頭は暑い。

時には、熱い蒸気が体の中に入ってきて、

だんだん上がってくるような感じを患者が表現し、汗をかくこともある。

小さな震えに続いて、閃光のような暑さと、顔に赤い斑点を感じ、激しく扇ぐ;

扇ぎきれず、ドアや窓を開けたがる女性を見かけることもある。

 

SulphurやLachesis などがそれにあたる。

火照りが胸や心臓のあたりで始まる場合は、Sulphurのようだが、

背中や胃のあたりで始まる場合は、むしろPhosphorusのようである。

 

他の一般的な悪化において、Sulphurには、立つことによる悪化がある。

疾患は全て、長時間立っていると悪化する。

Sulphurの患者にとって、立っていることは最も困難な姿勢であり、

精神の混乱、めまい、胃や腹部の症状、

女性の場合は静脈の肥大感や膨満感、骨盤の引きずりなどが、

立っていることで悪化する。

座っていても立っていても、患者は動き続かざるを得ない。

歩行はかなり可能であるが、静かに立っていると悪化する。

 

睡眠後の悪化は、

Sulphurの多くの疾患に当てはまるが、

特に精神と感覚の訴えに当てはまる。

Sulphurの病訴の疾患は、食後に悪化する。

 

Sulphur (ソーファー/硫黄)②に続く