ヘリングはSulphurの患者を「ぼろを着た哲学者」と呼んだ。
Sulphurの学者は、発明家であり、古ぼけた服とボロボロの帽子で、
昼夜を問わず働き、長髪で汚い顔をしている。
Sulphurは、このような無秩序な状態、整頓されていない状態、
不潔な状態、「どうなってもいい」という状態、
自分勝手な状態を生み出すようだ。
彼は偽哲学者で、この状態が続けば続くほど、
世界が彼を、地球上で最も偉大な人物と考えていないことを知って、がっかりする。
老齢の発明家は、いくらやっても失敗する。
このような症例で起こる病訴は、
たとえ急性の病訴であっても、Sulphurになる。
このような患者を受け持つと、
何週間も同じシャツを着ていることに気づくだろう。
もし彼に付き添う妻がいなければ、
彼はシャツが落ちるまで着続けるだろう。
Sulphurの患者は、清潔にすることにあまり関心がない。
彼は汚れているのに、
きれいな襟や袖口、きれいなシャツを着る必要性を感じていないのである。
Sulphurは清潔な人にはほとんど適応しないが、
不潔さを気にしない人には適することがよくある。
町の診療所に勤めている時、
Sulphur投与後、自分のことを気にし始め、
清潔なシャツを着ていることに気づくことが何度もある。
この人は前は、同じ古いシャツを着ていたのだ。
また、Sulphurの患者で、特に小さな子供たちは、
あっという間に服を汚してしまうことには驚かされる。
子供は、非常に驚くほど不潔な傾向がある。
その小さい子がSulphurの患者だと、不潔なことについての話を母親はする。
子供は鼻や目などからカタル状の分泌物を出し、
鼻くそを口に入れることがよくある。
さて、奇妙なことだが、
Sulphurの患者が嫌うのは、不快な臭いだ。
不潔な臭いには過敏だが、不潔な物質そのものは、食べたり、呑み込んだりする。
自分の体や自分の息の臭いにさえ吐き気を催す。
便はとても不快な臭いで、一日中この人に付きまとう。
彼はそれを臭う事ができると、思っている。
悪臭に敏感なため、彼は何よりも腸内を清潔に保っている。
それは誇張された嗅覚だ。
彼はいつも不快な臭いを想像し、探している。
この人は通常、非常に強い想像力があるため、
記憶の中にあるものだけ、嗅ぎ分ける。
Sulphurの患者は、全体を通して不潔である。
彼は不潔な悪臭の犠牲者である。
息は不潔で、強烈な悪臭の便が出る。
性器は不潔な臭いがし、服を着ているにもかかわらず、
部屋の中でもその臭いがし、自分自身にその臭いがする。
分泌物は、常に多かれ少なかれ悪臭がし、強く不快臭さがある。
常にシャワーしているにもかかわらず、脇の下からは刺激的な臭いがし、
時には、体全体が腋窩から出るような悪臭を放つ。
身体のあらゆる部分から出るSulphurの分泌物は、
不快であるだけでなく、表皮を削ぐ。
Sulphurの患者は、あらゆる粘膜のカタルに悩まされ、
カタルの排出物はそこら中の表皮を削ぐ。
鼻風邪では、分泌物で唇や鼻の表皮を削がれる事がよくある。
時には、鼻に残った鼻水は火のようにヒリヒリし、
それが子供の唇に触れると、燃えるように痛く、刺激がある;
Sulphuricum acidの状態とほぼ同じで、触れた部分が赤くなる。
月経は大量で、性器の皮膚が剥ける。
薄い便が、肛門の周りで、燃えるように痛く、皮膚が剥けたようになる。
女性の場合、尿が一滴でも性器に残っていると、燃えてひりひりする;
多くの場合、拭うだけでは不十分で、洗い流さないと痛みが和らがない。
子供においては、肛門と臀部の間が表皮剥離を起こしているのが見つかる;
便によってその裂け目全体が赤く、皮膚が剥け、炎症を起こしている。
この傾向から、一つのキーノートが出来上がり、それは悪い意味ではなく
「いかなる体液も、通過する部分を燃やす」というもので、
体液が刺激性で、ヒリヒリした痛みを引き起こすという意味である。
この事は、Sulphurのどこにでも当てはまる。
Sulphurの患者は、あらゆる種類の発疹が起きる。
小水疱、膿疱、癤、鱗状の発疹ができ、いずれも強い痒みを伴い、
分泌物や化膿を伴うものもある。
皮膚は発疹ができなくても、痒みが強く、
暖かい寝床や、ウールの服を着ることで痒くなる。
Sulphurの患者の多くは、絹や綿以外のものを着られない。
痒いところを掻くことができないと、部屋の暖かさで絶望に追い込まれる。
掻いた後は、痒みが緩和されるが、燃えるような痛みがある。
掻いた後や寝床の暖かさに入ってから、
大きな白い湿疹が体中に出てきて、さらに痒くなり、
そのため、皮が剥げるまでか、燃えるように痛くなるまで掻き続けることになり、
その後痒みがおさまる。
この過程は継続し続ける:
夜寝ている間、恐ろしいほどの痒みが起き、朝起きるとまた始まり、発疹は痒く、ジクジクする。
オデキの群れや小さなオデキのような発疹が出てくる。
そのため(Sulphurは)とびひにも有効である。
このレメディは化膿に役に立つ。
(これは)あらゆる種類の化膿性の腔、小さな膿瘍や大きな膿瘍を作り出す;
皮膚下や、細胞組織、内臓の膿瘍を形成する。
化膿の傾向は、Sulphurにおいて顕著である。
腺が炎症を起こし、その炎症が化膿へと進む。
Sulphurの病訴が起きる所はどこにでも、燃焼感が見つかる。
あらゆる部分が燃焼する;
うっ血しているところが燃えるように痛い;
皮膚が燃えるよう、または皮膚に熱感がある;
あちこち部分的に燃焼する;
腺、胃、肺が燃える;
腸、直腸が燃える;痔が燃えヒリヒリする;排尿時に燃える、または膀胱に熱感がある。
あちこちに熱感があるが、特に典型的なSulphurの患者は、
「足の裏や、手のひらや、頭のてっぺんが燃える」
と言う。
足の裏の燃焼感は、患者が寝床で温まると、気づくことが非常に多い。
Sulphurの患者は、夜寝床に入ると足の裏が非常に熱くなり、燃えるようで、
足をシーツから出したり、足を布団の外につき出して寝る。
Sulphurの患者の足の裏と手のひらを調べると、皮膚は厚く、寝床で温まると燃焼する。
多くの疾患は、寝床で温まることによって起こる。
Sulphurの患者は、暑さにも寒さにも耐えられないが、外気を強く欲する。
一定の温度を欲する;激しい温度の変化はきつい。
呼吸に関しては、苦しい時には、ドアや窓を開けたがる。
しかし、しょっちゅう体はわざわざ覆うのだが、
衣服で暖かくなると、皮膚のかゆくなったり燃焼したりする。
悪化する時間については、疾患が晩に起きるのが特徴である。
頭痛は夕食後に始まり、夜になるとひどくなる;
痛みのために眠りにつくことができない。
夜痛みが起き、夜喉が渇く;
夜苦しくなり、寝床で温まると皮膚の症状が出てくる。
「断続的で周期的に起きる神経痛は、24時間ごとに悪化し、
一般的には午前12時または午後12時に発生する」
真昼もSulphurの病訴が悪化する時間帯だ。
正午に寒気がし、正午には熱が上がり、
正午には精神的な症状が増し、正午には頭痛がひどくなる。
週に一度の病訴、7日間の悪化は、Sulphurのもう一つの特異な状態である。
Sulphurの患者によく見られる下痢は、
昔から「Sulphurの下痢」として知られているが、
他の多くのレメディーにも、早朝に下痢をするという同じような症状がある。
Sulphurの下痢は、深夜から朝にかけての時間に属するが、
どちらかというと、起きようかと思い始める時間である。
「下痢のため、寝床から飛び出す」
それは一般的には薄い水状;
噴出はあまりなく、量もあまり多くなく、時にはかなり少なく、黄色い便が出ることもある。
この朝の排便後、多くの場合、翌朝までそれ以上の問題は起こらない。
朝、寝起きに便意を催すという症状が、年中続いている人が多い。
腸の痛み、腹痛、不安感、燃えるような痛みに悩まされる。
通過する便は燃えるようで、
便が触れる部分はどこでも、痛く、表皮を剥ぎ、かなり擦りむく。
Sulphurの患者は非常に喉が渇いている。
いつも水を飲んでいる。
大量の水を欲しがる。
この人は、お腹が空いたとか、何か食べたいと言うが、
食卓につくと食べ物を嫌がり、目をそむけ、食欲がなくなる。
ほとんど何も食べず、非常に簡単で軽いものしか口にしない。
刺激物やアルコールを欲しがり、牛乳や肉を嫌う;
後者を摂ると気分が悪くなるので、欲しがらない。
随分前、ある人が、これらのことから
「よく飲み、ほとんど食べない」
というキーノートを考案した。
これはSulphurにおいて真実であるが、
他の多くのレメディーでも同じ症状がある。
キーノートの使用に関しては、
すべての症状とその関連性をまとめるのがよいと、言っておこう。
1つの小さな症状、あるいは2、3の小さな症状に、大きく頼らないほうが良い。
症例全体の症状を考慮した上で、
キーノートや特徴、その他すべてのものが、レメディーを包括し完全なものにし、
患者全体のように見える時、初めてそれが適したものとなる。
午前11時にお腹が空く。
24時間の中で空腹を感じる時間があるとすれば、それは11時である。
昼食が待てないようだ。
Sulphurの患者について、こういう事もある:
いつもの食事時間になると、非常に空腹になり、
食事が遅れると、弱って、吐き気をもよおす。
12時頃に食事をする習慣のある人は、午前11時に、空っぽな空腹感を感じる。
1時や1時半に食事をする習慣のある人は、12時頃にその感じが起きる。
空っぽの感覚は、多くの人の場合、食事の定刻の約1時間前に起きる。
顕著なSulphurのグループを凝縮するとこうなる;
午前11時に胃の中が空っぽの空腹感になり、
足の裏が燃えるようになり、頭のてっぺんが暑くなる。
この3つは、Sulphurの必須条件とされてきたが、
Sulphurの始まりには、ほとんど見られない。
Sulphurには、発疹の他に、皮膚の不健康な状態がある。
皮膚がよくならない。
小さな傷は化膿し続ける;
皮膚の下にできた膿瘍は、瘻孔のある小さな排出腔となり、
これらは漏れて、長い間出続ける。
Sulphurは、炎症部分に浸潤を作り出し、
そのため、そこが硬くなり、この硬さが何年も続く。
炎症が肺のような重要な臓器に起きた場合、
この浸潤はずっと耐えられるものではない;
肺炎の後に、肝変と呼ばれる浸潤を残す。
Sulphurは、全身の炎症部位に同じ傾向を作り出すため、
肝変の治療によく使われる。
Sulphurは、有機組織における乾癬の状態のため、
疾患が長引いた後に、患者が反応しない場合、非常に有用なレメディである。
急性疾患の終わりあたりになると、患者は弱り、疲労困憊になる。
炎症状態は、化膿や浸潤となる;
患者は衰弱し、かなり疲労困憊し、寝汗をかく。
腸チフスなどの急性疾患の後に回復しない。
回復が遅く、有機組織も疲弊しており、急性疾患の後、調子が戻らない。
このような状態では、Sulphurがしばしば非常に有用になる。
飲んだくれの老人は衰弱し、アルコールへの激しい渇望がある;
酒をやめることができない。
強くて刺激的なものを欲しがり、何も食べたくなく、
冷たい水やアルコールを飲みたがる。
大変疲れるまで飲み続け、疾患が現れる。
Sulphurはしばらくの間、酒へのその渇望を取り除き、元気にしてくれる。
組織は弱くなっているようで、わずかな圧力でも痛みを感じ、
炎症や化膿を起こす事もある。
Sulphurの患者は、血行が悪いため、床ずれができやすい。
また、圧迫による硬化も強い特徴だ。
Sulphurは、圧迫により魚の目や、豆ができる。
これらの症状が現れやすい。
靴が皮膚のどこかを圧迫すると、大きな魚の目や外反母趾ができる。
歯が舌や頬腔の他の部分と接触すると、小結節が形成され、
これらの小さな小結節は時間の経過とともに潰瘍化し始める。
燃えるような、刺すような痛みを伴いながら、
ゆっくりと進行する。癌になることもある。
長期間継続し、その後、悪性の状態になることもある。
癌は、体内にある状態が、外に向かって成長したもので、
その状態は、連続した状態から起きるのかもしれない。
1つの連続した状態ではなく、
悪性状態が、良性状態に後続しているのかもしれない。
Sulphurは、症状が一致した場合、これらの状態を取り除く。
Sulphurでは、静脈の乱れが顕著に見られる。
静脈のレメディーであり、静脈の問題が多い。
静脈が弛緩しているように見え、循環が停滞している。
天候や衣服などのちょっとした刺激で、顔があちこちが火照る。
顔が腫れる。
Sulphurは静脈瘤がある;
最も顕著なのは痔の静脈で、肥大して燃えるような、刺すような痛みがある。
四肢の静脈瘤。
静脈が潰瘍化し、破裂して出血することもある。
寒いところから暖かいところに出ると、
静脈が肥大し、手足が膨らみ、全身が膨らんだような感じなる。
Sulphurの患者はやせ細り、
特に腹部の膨張を伴う四肢のやせが特徴的である。
腹部は肥大しており、ゴロゴロとした痛みや灼熱感があり、
腹部の肥大に伴って他のすべての部分が痩せていく。
首、背中胸郭、四肢の筋肉が衰え、腹部の筋肉も衰えるが、
腹部自体の膨らみが大きい。
このような状態はマラスムスu(栄養失調)に見られる。
Calcareaでも同じような状態になる;
Calcareaを必要とする女性においては、
腹部の大きな肥大、膨張、硬さと、体の他の部分の収縮が見られる。
Sulphur下では、女性の更年期に見られるような、顔や頭の火照りがある。
Sulphurの火照りは、一般的には胸部と言われる心臓部のどこかで始まり、
まるで、体の中で熱の暖かさが、顔に向かって上がってくるような感じがする。
顔は赤く、熱く、紅潮し、最終的に熱は発汗で終わる。
汗と赤ら顔を伴う熱の火照り;頭は暑い。
時には、熱い蒸気が体の中に入ってきて、
だんだん上がってくるような感じを患者が表現し、汗をかくこともある。
小さな震えに続いて、閃光のような暑さと、顔に赤い斑点を感じ、激しく扇ぐ;
扇ぎきれず、ドアや窓を開けたがる女性を見かけることもある。
SulphurやLachesis などがそれにあたる。
火照りが胸や心臓のあたりで始まる場合は、Sulphurのようだが、
背中や胃のあたりで始まる場合は、むしろPhosphorusのようである。
他の一般的な悪化において、Sulphurには、立つことによる悪化がある。
疾患は全て、長時間立っていると悪化する。
Sulphurの患者にとって、立っていることは最も困難な姿勢であり、
精神の混乱、めまい、胃や腹部の症状、
女性の場合は静脈の肥大感や膨満感、骨盤の引きずりなどが、
立っていることで悪化する。
座っていても立っていても、患者は動き続かざるを得ない。
歩行はかなり可能であるが、静かに立っていると悪化する。
睡眠後の悪化は、
Sulphurの多くの疾患に当てはまるが、
特に精神と感覚の訴えに当てはまる。
Sulphurの病訴の疾患は、食後に悪化する。
Sulphur (ソーファー/硫黄)②に続く