江ノ島の水族館脇のいつもの場所で
久しぶりに高校時代の元カノと再会した
僕らはビーチを散歩しながら昔話に浸っていた
近況を話合うと…お互いにバツイチだそうだ
そりゃま…50代の半ばじゃ
ひとりでこんなとこに来るのは…そんな事しか無いでしょう
しかし…過去には幾度か僕を見かけたり
聞けば…職場や住んでいる場所が近かったり
友人の冠婚葬祭などで
幾度かニアミスがあったそうだ…
確かに友人の結婚式で見かけたりはした記憶はあるが…
あいにく僕は殆ど気がついてなかった…らしい
驚きと共にやはり笑うしかない
すると彼女は言った
「そう言えば…私達…ちゃんとお別れしてなかったわよね」…と
そう…高校生の交際なんて殆どが
お互いの勘違いで自然消滅パターン
僕らも…まさにそれ…
「そうだね」と言うと
「随分…おじさんになったわね」と
「君こそ…でも綺麗になったね」と返すと
彼女は笑って…
「そう言う所は変わらないのね」と言った
僕の頭の中では
もうここまで来ると…クドイ様だが
やはりドッキリを仕掛けられてるか
夢の中での話…としかあり得ない状況
人生…いろいろある訳だ
「わたしね…この歳になって気がついたんだけど…」と言って黙った
「ん?…どうした?」
「あなた…わたしの事…覚えてた?」
「あ…そうだなぁ…本来なら覚えていた!と言うべきなんだろうが…申し訳ないが…忘れていた」
「あんまりね…でも正直でいいわ」
「すまんな…」
「わたしはね…」と言い
彼女は背を向け海を見ていた
しばしの沈黙…ただ波の音だけがしていた
あぁ…そう言えば
前にもこんなシチュエーション…あったな
と思いながら…海をバックに彼女の横顔を見ていた
「わたしはね…
おぼえていたわ…そりゃ忘れてた時もあったけど」
と言い…振り返って僕を見た
その時…僕は思い出した
「あ…昔のままだ」
それは…70%の笑顔
目は笑っているんだけど…
顔が笑っていない
なにか言いたい事があるのに言えない時にする彼女の癖
「…で?」
と僕は言ったあとに少し後悔した
すると彼女は驚いた顔で僕を見ると…大きな声で笑いだした
「おっかしぃ~なにそれ~全然変わってないのね」と
僕が困った時に必ず言うのが「…で?」であった
それが癖だと…昔、僕に教えてくれたのは
…彼女であった
「あれ…わたし…あなたを困らせている?」
「いや…そんな事はない」
と言いながら僕はあきらかに動揺していた
…つづく
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