本件は,平成5年から京都市交通局の市バス運転手として勤務していた者(各種表彰歴を有する一方で、乗務中の事故を理由として4件の戒告の処分と2件の注意を受けたことがあるが、本件懲戒免職処分を除き、一般服務や公金等の取扱いを理由とする懲戒処分を受けたことはなかった。)が,令和4年に勤務中に運賃1000円分を着服したことと禁止されていたバス車内での電子タバコ(1週間に5回)の喫煙行為を理由として,懲戒免職の上,「退職者がが懲戒免職処分を受けて退職をした者に該当するときは、管理者は、当該退職者に対し、当該退職者が占めていた職の職務及び責任、当該退職者の勤務の状況、当該退職者が行った非違の内容及び程度、当該非違に至った経緯、当該非違後における当該退職者の言動、当該非違が公務の遂行に及ぼす支障の程度並びに当該非違が公務に対する信頼に及ぼす影響を勘案して、当該退職に係る一般の退職手当等の全部又は一部を支給しないこととする処分(以下「退職手当支給制限処分」という。)を行うことができる」旨の本件規定を根拠に,退職金約1211万円の不支給処分とされたことにつき,市の判断が裁量を逸脱したものであったかが争われたという事案です(最高裁令和7年4月17日判決 判例タイムズ1538号ほか)。

 

 

【判旨】

⑴ 本件規定は、懲戒免職処分を受けた退職者の一般の退職手当等について、退職手当支給制限処分をするか否か、これをするとした場合にどの程度支給しないこととするかの判断を管理者の裁量に委ねているものと解され、その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものというべきである(最高裁令和4年(行ヒ)第274号同5年6月27日第三小法廷判決・民集77巻5号1049頁参照)。
 

⑵ 本件着服行為は、公務の遂行中に職務上取り扱う公金を着服したというものであって、それ自体、重大な非違行為である。そして、バスの運転手は、乗客から直接運賃を受領し得る立場にある上、通常1人で乗務することから、その職務の性質上運賃の適正な取扱いが強く要請され、その観点から、京都市交通局職員服務規程(平成2年京都市交通局管理規程第3号の16)において、勤務中の私金の所持が禁止されている(20条)。そうすると、本件着服行為は、上告人が経営する自動車運送事業の運営の適正を害するのみならず、同事業に対する信頼を大きく損なうものということができる。
 また、本件喫煙類似行為についてみると、被上告人は、バスの運転手として乗務の際に、1週間に5回も電子たばこを使用したというのであるから、勤務の状況が良好でないことを示す事情として評価されてもやむを得ないものである。
 そして、本件非違行為に至った経緯に特段酌むべき事情はなく、被上告人は、それらが発覚した後の上司との面談の際にも、当初は本件着服行為を否認しようとするなど、その態度が誠実なものであったということはできない。
 これらの事情に照らせば、本件着服行為の被害金額が1000円でありその被害弁償が行われていることや、被上告人が約29年にわたり勤続し、その間、一般服務や公金等の取扱いを理由とする懲戒処分を受けたことがないこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る本件管理者の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

 

 

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