南アジアの島国モルディブで、現職の国務大臣の女性が警察当局に逮捕された。AFP通信が27日に報じた。地元メディアによると、この国務大臣は、ムイズ大統領に対して「黒魔術」を使った疑いをもたれているという。

(6月30日朝日新聞デジタルから一部引用)

 

日本でいえば、殺したい相手を念じつつ五寸釘で人形を打ち付けるというところでしょうか。

このような行為は、刑法の古典的な論点の一つで不能犯と呼ばれており、結果を引き起こす危険性が全くないことから、犯罪にはならないものとされています。

 

 

もっとも、ことはそう単純ではなく、呪いの類であれば不能犯として犯罪が成立しないことは明らかであるとしても、どの範囲を不能犯として評価し、どの範囲から犯罪としてとらえるのかということは存外に最近になっても論じられたりしています。

 

 

特殊詐欺における詐欺未遂罪成立のための欺罔行為と実行の着手 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

騙されたふり作戦と不能犯 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

後からみれば、絶対に犯罪が成立し得なかったといえるとして不能犯であったとするのでは社会秩序の維持という刑法の目的にそぐわないとして、行為の時点に立って一般人の観点から犯罪実現の危険性があったかどうかを判断するというのが判例通説とされます。

このような立場に立って判断すると、呪いの類については、その時点でも一般人からすれば一笑に付すべき行為にすぎず不能犯となりますが、例えば、殺人の目的で静脈内に空気を注射したときは、その空気の量が致死量以下であつても、右行為は不能犯とはいえないということになります(最高裁昭和37年3月23日判決)。