令和4年5月18日に訴訟のIT化などを主とする民事訴訟法が改正されましたが、システムの構築などが必要な改正事項もある為、実施時期は、改正事項ごとに順次施行されることとなっています。

 

 

改正法では、訴訟委任を受けた弁護士は訴状をオンラインで提出することが義務付けられることになりました。また、今回はオンライン提出のための環境整備を国が本腰入れて整えることになるので、訴訟委任を受けた弁護士でなくても、オンライン提出はできることになります。

 

 

令和4年民事訴訟法改正⑤ 訴状等のオンライン提出 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

次なる問題は、提出された訴状を被告にどのように送達するかということになります。

オンラインでメール添付なりシステムへのアクセスをしてもらって被告にも訴状にアクセスしてもらえば、まさしく便利ということになります。

 

 

議論の中では、原告が知れている被告のメールアドレスなどを提出させてそこに充てて送信するなどの方法も議論されたようですが、なりすましなどあまりにリスキーであるため、採用はされませんでした。

 

 

そのため、改正法においても、原則としては、オンラインで提出されたデータを出力(プリントアウト)した書面(紙媒体)で送達することになります(民法109条)。

 

 

改正法

(電磁的記録に記録された事項を出力した書面による送達)
第109条 
電磁的記録の送達は、特別の定めがある場合を除き、前款の定めるところにより、この法律その他の法令の規定によりファイルに記録された送達すべき電磁的記録(以下この節において単に「送達すべき電磁的記録」という。)に記録されている事項を出力することにより作成した書面によってする。

 

但し、裁判所のサーバーに記録されたデータにアクセスして閲覧することで送達としてよいという届出がされた場合には、以降はその方法によって閲覧がされれば送達という扱いとなります(改正法109条の2 システム送達・オンライン送達)。

オンライン提出された訴状の場合でいえば、当然のことながら、被告はその時点でシステム送達の届出等はしていないので、裁判所が訴状の副本を被告に郵便で送達することになります。

ここでの問題は、誰がその副本を紙で用意するのかということがあります。

裁判所がプリントアウトしてくれればよいのですが、裁判所の事務がパンクする恐れがあります。原告側が副本を用意するというのであれば、それがデータとして提出されたものと一致しているのかの確認が必要になることや果たしてそれが国民が使いやすいオンライン提出の推進という制度に合致しているのかという疑問を生じることになります。この辺りはどうするのかまだ議論が続ていているようです。

本来であれば、マイナンバー制度ともリンクして全国民が登録してあるメールアドレスに送達を受けるようなシステムが制度としては完結しているのでしょうがまだまだそこまでには至っていないようです。

 

 

(電子情報処理組織による送達)
第109条の2 
電磁的記録の送達は、前条の規定にかかわらず、最高裁判所規則で定めるところにより、送達すべき電磁的記録に記録されている事項につき次条第一項第一号の閲覧又は同項第二号の記録をすることができる措置をとるとともに、送達を受けるべき者に対し、最高裁判所規則で定める電子情報処理組織を使用して当該措置がとられた旨の通知を発する方法によりすることができる。ただし、当該送達を受けるべき者が当該方法により送達を受ける旨の最高裁判所規則で定める方式による届出をしている場合に限る。
2 前項ただし書の届出をする場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、同項本文の通知を受ける連絡先を受訴裁判所に届け出なければならない。この場合においては、送達受取人をも届け出ることができる。

 

なお、届出しない限りシステム送達とはならないのですが、訴訟委任を受けた弁護士については届出がされていなくても問答無用でシステム送達が適用になります。(改正法109条の4第1項)

 

 

(電子情報処理組織による送達を受ける旨の届出をしなければならない者に関する特例)
第109条の4第1項 第百九条の二第一項ただし書の規定にかかわらず、第百三十二条の十一第一項各号に掲げる者に対する第百九条の二第一項の規定による送達は、その者が同項ただし書の届出をしていない場合であってもすることができる。この場合においては、同項本文の通知を発することを要しない。