令和4年5月18日に訴訟のIT化などを主とする民事訴訟法が改正されましたが、システムの構築などが必要な改正事項もある為、実施時期は、改正事項ごとに順次施行されることとなっています。

 

 

2026年(令和8年)5月24日までに施行される新たな制度として、ウェブ会議により証人尋問が実施できるようになるということがあります。

 

 

現在でも、証人が遠隔地に居住するときなどの場合には、テレビ会議システムを利用しての尋問が認められています(法2-4条)。

但し、現在の制度では、証人は必ず裁判所(受訴裁判所の法廷ではない別室か又は他の裁判所)には出廷していなければならないものとされています(規則123条1項2項)。

 

現行民事訴訟法

(映像等の送受信による通話の方法による尋問)
第204条
 裁判所は、次に掲げる場合には、最高裁判所規則で定めるところにより、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって、証人の尋問をすることができる。
一 証人が遠隔の地に居住するとき。
二 事案の性質、証人の年齢又は心身の状態、証人と当事者本人又はその法定代理人との関係その他の事情により、証人が裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所において陳述するときは圧迫を受け精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるとき。

民事訴訟法規則

(映像等の送受信による通話の方法による尋問・法第二百四条)
第123条
法第二百四条(映像等の送受信による通話の方法による尋問)第一号に掲げる場合における同条に規定する方法による尋問は、当事者の意見を聴いて、当事者を受訴裁判所に出頭させ、証人を当該尋問に必要な装置の設置された他の裁判所に出頭させてする。
2 法第二百四条第二号に掲げる場合における同条に規定する方法による尋問は、当事者及び証人の意見を聴いて、当事者を受訴裁判所に出頭させ、証人を受訴裁判所又は当該尋問に必要な装置の設置された他の裁判所に出頭させてする。この場合において、証人を受訴裁判所に出頭させるときは、裁判長及び当事者が証人を尋問するために在席する場所以外の場所にその証人を在席させるものとする。

 

改正により、証人が裁判所に出廷する必要はなく、相当な場所であればウェブ会議システムにより尋問が実施できることとされるとのことです。

 

 

しかし、実際のところ、この制度がどこまで利用されるのかについては私自身は懐疑的ではあります。

当該証人に対して反対尋問をしたい側にとっては、きちんとその証人が目の前にいて証言をすることを求めたいわけですし、一般的には裁判所以外の別の場所といっても弁護士事務所くらいしか考えられないような気がしますが、相手方の代理人である弁護士事務所でいわばガードされているような状態で反対尋問したいと考える弁護士はいなさそうな気がします。

また、尋問の際には、いろいろな書証を示すことが多いですが、そこに回答を暗示するような記載が書き込まれていたりとか、そもそもきちんとその書証が示されているのかといったことについて公正を担保できるのかといった問題が出てきそうです(この辺りは書証を示す前に画面越しに必ず見せる運用にするとか工夫はできそうですが。なお現在の制度では承認の傍に裁判所の職員がいて尋問者が希望した書証を示してくれます)。

ちなみに、新型コロナの感染が拡大していた時期に修習生の模擬裁判の尋問をウェブでやったことがありましたが、誰が何の書証を示しているのかが分からずにぐちゃぐちゃになったり、通信が途中で途切れたりと散々であった記憶があり、尋問という訴訟の山場でこのシステムを使おうという勇気はなかなか湧かないかなという気がします。

 

 

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