過去最多の9人による混戦となった衆議院・東京15区の補欠選挙。
候補者の1人がほかの候補者たちの演説場所で、大音量で批判などを繰り返し、各陣営からは“選挙妨害だ”との声が相次ぎました。
警視庁が候補者に警告を出す“異例”の事態にも。
一方で、候補者側は「表現の自由の範囲内だ」と主張しています。
選挙妨害か?表現の自由か?専門家の見方は…(4月30日NHKニュースウェブから一部引用)
問題となる法律の規定は公選法の225条(選挙の自由妨害罪)ですが,かどわかすとか古めかしい規定ぶりです。
2号の「演説を妨害」したかということが問題となりそうです。
公職選挙法
(選挙の自由妨害罪)
第225条 選挙に関し、次の各号に掲げる行為をした者は、四年以下の懲役若しくは禁錮こ又は百万円以下の罰金に処する。
一 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人に対し暴行若しくは威力を加え又はこれをかどわかしたとき。
二 交通若しくは集会の便を妨げ、演説を妨害し、又は文書図画を毀き棄し、その他偽計詐術等不正の方法をもつて選挙の自由を妨害したとき。
三 選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者若しくは当選人又はその関係のある社寺、学校、会社、組合、市町村等に対する用水、小作、債権、寄附その他特殊の利害関係を利用して選挙人、公職の候補者、公職の候補者となろうとする者、選挙運動者又は当選人を威迫したとき。
この点について記事でも引用されていますが,古い裁判例で,「選挙演説に際しその演説の遂行に支障を来さない程度に多少の弥次を飛ばし質問をなす等は許容せらるべきところであるが演説の妨害となることを認識しながら他の弥次発言者と相呼応し一般聴衆がその演説内容を聴き取り難くなるほど執拗に自らも弥次発言或は質問等をなし一時演説を中止するの止むなきに至らしめるが如きは公職選挙法第二百二十五条第二号に該当すると解すべきである」(大阪高裁昭和29年11月29日判決)と説示したものがあります。
公開された動画などを見ると,この裁判例と同様の状況にあったものとも言えそうです。
質問に回答すればいいだけという言い分もしているようですが,応答する気がない相手方に対して執拗に質問に応じるように求めることは問題があるのではないかと思います。
結局,「多少の弥次」ととして許容すべき範囲のものかどうか社会通念に従って判断すべきものですが,話題となった割にはその投票結果を見れば,その答えも出ているように思われます。
・・ただ,候補者の名前を連呼するだけの選挙カー,がんじがらめの細かいルールで縛られた選挙活動などの我が国の選挙事情を思うと,今回のような行為に喝采を送ってしまいかねない素地は常にあり,今回のような行為に対する規制を強化するというだけでは片手落ちなのではないかという気もしてしまいます。
イギリスと日本 選挙戦はこんなに違う | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)