判例時報2584号で紹介された裁判例です(福岡地裁令和5年8月30日決定)。

 

 

【事案の概要】

・マンションの管理組合法人Xの代表理事Aが、Bを被告として、Bがマンション屋上の賃貸借契約の賃料回収に際して司法書士法に違反してXから報酬を受け取ったなどとしてXを原告として訴訟提起した(訴訟①)。

・Bは、他の組合員とともに、裁判所に対して、Aの理事の職務執行停止と職務代行者選任を求めた。

・裁判所は、Aの理事としての職務執行を停止し、職務代行者としてC弁護士を選任する仮処分を行った。

・C弁護士は、Xの代表理事の職務代行者として、訴訟①を取り下げた。Aは、取下げが無効であるなどとして争ったが退けられた。

・その後、Xは、改めて、Bを被告として訴訟①と同じ内容の訴訟提起をしたところ、C弁護士がBの訴訟代理人となった。

 

 

Xの代表理事の職務代行者として関与したC弁護士が、同内容の訴訟について、今度はBの訴訟代理人となったことから、Xが、弁護士法25条1号の職務を行い得ない事件に当たるとして、C弁護士の訴訟行為について排除の申立てをしたというのが本件です。

 

 

弁護士法

(職務を行い得ない事件)
第25条
 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

 

C弁護士側では、C弁護士が職務代行者となったのは、Xに依頼を受けたわけではなく、裁判所から選任されたものであるとして、弁護士法25条1号に当たらないと反論しましたが、裁判所は、当事者の利益保護、弁護士の職務執行の公正の確保、弁護士の品位の保持という同号の目的、趣旨に照らして、相手方の依頼を承諾したのと同様の利益状況にあるとし、同号を類推適用して、C弁護士の訴訟行為は排除されるものと判断しています。

 

 

・・普通に考えて引き受けないと思うし、余計なお世話ですが、今後裁判所からの事件の依頼は来なくなるのではないかなと心配したくなりますね。

 

 

弁護士職務基本規程57条に反する訴訟行為につき相手方当事者がその排除を求めることの是非 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)