判例タイムズ1517号で紹介された事例です(東京高裁令和4年11月18日決定)。

 

 

本件は美人局による恐喝事案で、特定少年である少年が,共犯者らと共謀の上,現金等を脅し取ったというものですが、恐喝保護事件において,短期間の処遇勧告を付して少年を第1種少年院(短期間の処遇勧告)に送致した原決定について,その処分が著しく不当であるとはいえないとして,抗告を棄却した事例になります。

 

 

本件少年は、それまで保護処分を受けたことはなかったため、試験観察に付したうえで社会内処遇を図るべきであるとする抗告理由につき、高裁はつぎのとおり説示して退けています。

 

 

「原決定は、これらの事情を踏まえてもなお、少年が有する問題性、すなわち、自己の利益のためには犯罪行為もいとわない身勝手な行動傾向や、物事を被害的に受け止める思考は、長期間に渡って形成されたものであって、その改善は容易ではないこと、少年が、両親からの指導を被害的に受け止めるなどした結果、家庭から離反して一人暮らしを始め、不良交友や問題行動をエスカレートさせて本件非行に至ったという経緯に照らせば、少年が両親の監督下から逸脱して再非行に及ぶ可能性はなお高いことを指摘して、少年に対しては、現時点において、試験観察を含む社会内処遇によって改善更生を図ることは困難であるとしている。原決定が指摘する少年の問題性は、少年の幼少期からの成育歴に関係した根深いものであることからすると、これらを改善して少年の再非行を防止するためには、少年が強く抱いている両親への不満や被害感情を整理させることや、不良交友を含む対人関係の在り方や生活面での問題点を認識させた上、これらへの適切な対処方法を学ばせることなど、専門的な知識に基づく教育が必要であると認められる。そして、本件に至るまでの少年の家族関係や生活状況等に照らすと、これらの教育を社会内処遇によって十分に行うことは困難であり、少年を短期間であっても現在の生活状況から隔離した上で、安定的で強固な枠組みの中で集中的な矯正教育を行う必要があるとして、少年を第1種少年院に送致することが相当であるとした原決定の判断が、不合理であるとはいえない。もとより、少年の特性、年齢、保護環境や処遇の実効性等を考慮して実施の当否が検討されるべき試験観察(中間処分)を経なかったことが、上記結論を左右するともいえない。」

 

 

 

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