判例時報2577号で紹介された裁判例です(東京地裁令和4年12月23日判決)。

 

 

本件は、婦人服を納品していた下請業者が、納品先との間の合意(中間会社を経由しての手数料の支払い合意)は、下請法4条1項3号に違反するもので公序良俗に反する合意であったと主張して損害賠償請求したという事案です。

 

 

下請代金支払遅延等防止法

(親事業者の遵守事項)
第4条1項
 親事業者は、下請事業者に対し製造委託等をした場合は、次の各号(役務提供委託をした場合にあつては、第一号及び第四号を除く。)に掲げる行為をしてはならない。
 下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。

 

判決では、本件合意が下請法4条1項3号に違反するものであったことは認めましたが、それが公序良俗に反するもので無効であったとまではいえないとして請求を棄却しています。

下請法はあくまでも行政法規で、これに違反した場合の私法上の効力がどのようになるかについては別途検討が必要とされています。

この点、独禁法違反の合意と公序良俗違反に関して、最高裁判例(最高裁昭和52年6月20日判決)があり、次のとおり摂餌しています。

「独禁法19条に違反した契約の私法上の効力については、その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として、上告人のいうように同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。けだし、独禁法は、公正かつ自由な競争経済秩序を維持していくことによつて一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするものであり、同法20条は、専門的機関である公正取引委員会をして、取引行為につき同法19条違反の事実の有無及びその違法性の程度を判定し、その違法状態の具体的かつ妥当な収拾、排除を図るに適した内容の勧告、差止命令を出すなど弾力的な措置をとらしめることによつて、同法の目的を達成することを予定しているのであるから、同法条の趣旨に鑑みると、同法19条に違反する不公正な取引方法による行為の私法上の効力についてこれを直ちに無効とすることは同法の目的に合致するとはいい難いからである。」

 

 

本件では、中間会社の介在により目減りした分の損失を織り込むことは可能であった、損失を防ぐための措置が講じられていたこと、合意締結までの間に契約終了をするなどの制裁を科すことを告知したこともなかったことなどが指摘され、本件合意が不当性が強く、公序良俗に反する無効なものであるとまではいえないと結論付けられています。

 

 

 

下請代金の減額合意と公序良俗違反 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)