判例タイムズ1514号などで紹介された最高裁決定です(最高裁令和5年5月24日決定)。

 

 

譲渡制限株式は広く自由に株式の譲渡ができないため,株主の投下資本の回収を図るため,最終的に会社に対して株式の買取を請求することができます。

 

譲渡制限株式の譲渡承認手続 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

本件の争点は,株主が会社に対してこのような譲渡制限株式の買い取り請求をした場合において,その株価を算定するに際し,株式の評価方法としてDCF法(将来期待されるフリー・キャッシュ・フローを一定の割引率で割り引くことにより株式の現在の価値を算定する方法)を用いた場合,株式の評価額から非流動性ディスカウント(非上場会社の株式には市場性がないことを理由とする減価)を行うことができるかという点でした。

 

 

この点,吸収合併に反対する非公開会社の株主が,会社法785条1項に基づいて反対株主の株式買取請求をした場合において,DCF法を用いた場合,非流動性ディスカウントを行うことはできないというのが判例の立場です(最高裁平成27年3月26日決定)。

 

 

法785条1項に基づく株式買取価格の決定につき収益還元法と非流動性ディスカウントの考慮の可否 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

本件では,会社法785条1項に基づく反対株主の株式買取請求の場合とは異なり,会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続は、株式会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものであることから,譲渡制限株式の売買価格の決定をする場合において、当該譲渡制限株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に、非流動性ディスカウントを行うことができるものと解され,このことは、譲渡制限株式の評価方法としてDCF法が用いられたとしても変わるところがないというべきであるとし,DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行うことができると解するのが相当であると判断されました。