判例タイムズ1513号などで紹介された事例です(大阪高裁令5年5月15日判決)

 

 

本件は,暴力団組員の被告人が対立する組の組長方に自動車で突っ込んだというものですが,そのような行為により脅迫罪が成立するか(第一審判決は否定),また,後記する状況において住居侵入罪が成立するか(第一審は肯定)が争点となりました。

 

 

脅迫罪の成否の点について,控訴審は第一審と同様に成立を否定しています。

「暴力団同士の抗争事件が相互に威嚇や報復攻撃を繰り返すものであることは肯認できるとしても,その一環として行われた攻撃のすべてが,威嚇,すなわち将来の加害の予告と解することができるわけではないし,そのようなものを選別するための一義的に明白な基準があるわけでもない。本件行為についてみても,相応の実害が生じているから,過去に行われた暴力団抗争事件の報復として行われたにすぎないとみる余地があるし,弁護人が主張するように,挑発行為としてなされた可能性も排斥できない。」

 

 

 

住居侵入罪の成否について,被告人が突っ込んだ状況としては,組長方の障壁で囲まれた家屋の門扉に続く4段の石段を走行してその門扉に当たって止まったというものでした。

 

 

住居侵入罪の客体には囲繞地も含まれるが,囲繞地であるためには,その土地が,建物に接してその周辺に存在し,かつ,管理者が外部との境界に門扉等の囲障を設置することにより,建物の附属地として,建物利用のために供されるものであることが明示されている必要があるとされます(最判昭和 51 年 3 月 4 日判決)。

 

 

控訴審判決は,石段の奥の木製門扉が障壁と連続して囲障となっていることからすると,本件石段部分は,A組長方居宅建物,障壁及び木製門扉等によって切れ目なく囲まれている囲障の外側に位置していると考えるのが素直な見方であるとし,本件石段部分を上がった先に郵便受けやインターフォンが木製門扉の両脇の各門柱付近にそれぞれ設置されていることが認められるから,第三者が,管理者の事前の承諾を受けることなく,本件石段を上ってこれらを使用することが想定されているとみるのが自然で,本件石段部分が,外形上,第三者が一般に立ち入ることが禁止されている土地ともいえない。本件石段部分には防犯カメラが設置されているが,これは石段に立ち入った者の素性をA方の住人が把握するためのものと解することができ,これも第三者の立入りが禁止されていないことと矛盾するものではなく,本件石段部分は,囲繞地に当たるとは認められないとし住居侵入罪の成立を否定しました。また,住居侵入罪の成立範囲の明確化の観点からも,居宅の管理者の意思は,囲障によって明示されていることが必要で,公道との色や石段程度の高さの違いで足りると解することはできない。障壁の設置が石段部分で一部途切れている場合と比較しても,囲障が設置されることでみだりな立ち入りを禁止する意思がより明示されるのは囲障の内側とみるのが社会通念に合致した判断というべきであるとも説示しています。なお,住居侵入未遂罪を認めています。

 

 

 

民家敷地内(囲繞地)への住居侵入につき第一審判決を破棄して無罪とした事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)