判例時報2491号で紹介された裁判例です(東京地裁令和2年6月30日判決)。
いわゆる振り込め詐防止法(正式名称:犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)では、金融機関が口座について犯罪利用されていると疑う相当な理由があるときは、口座の凍結をすることができると定められています。
警察などからの要請に基づく場合もあれば、金融機関が独自の判断で行うこともあります。
本件は、無登録での投資助言業などを行っている(高騰銘柄を推奨するなどとして顧客から投資顧問料を得ていた)として裁判所から行為の禁止を命じられた各会社(A社など 代表者らはその後金商法違反容疑で警察に逮捕された。)との間で業務提携契約や広告宣伝の委託契約などを締結していた原告会社が保有する口座につき、クレジット決済代行会社からの多額の入金、A社などへの支払いがされていたことから、金融機関が原告会社が保有する口座の凍結をしたというものです。金融機関としては、クレジット決済会社からの多額の入金がされた後にA社などへの送金がされており、そのようなお金の流れから摘発されたA社などとの関連性を疑い、本件原告の口座が犯罪に利用されているものと判断したようです。
裁判所は、口座凍結した時点では合理性があったとはいえるものの、クレジット決済代行会社からの送金があってから常にA社など対して支払いがされていたわけではなく、また送金の間隔も開くこともあったこと、A社などに対する送金は業務委託契約などの根拠に基づくものであったことなどから、A社などに対する送金が、法が規定する資金を移転する目的でなされた振り込み、その振り込みにかかる資金と実質的に同じである(要するに実質的にA社などの資金である)とは認められないとしました。
また、口座凍結から2年以上経過しているものの、その間に請求や差押手続きなどが取られていないことなども理由として挙げられています。
本件は、金融機関が独自の判断で口座凍結したという事案ですが、警察などからの要請に基づくものである場合には、ある程度時間が経過した後、要請した警察などに凍結解除を求めると解除されることが多いです。
本件は凍結したのが金融機関自身であったため、解除の判断について自縛自縄となってしまい、判断がつかずに裁判所の判決まで言ってしまったというような気がします。
銀行口座の凍結措置について犯罪性がなかったことが立証されたとして払戻が認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)
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