家庭の法と裁判31号で紹介された事例です(東京家裁令和2年6月26日審判)。

 

 

被相続人に相続人が存しない場合に、裁判所が特別縁故者として認めた場合には相続財産からの分与が認められることがあります。

 

 

近時の事例としては次のようなものがありますが、本件もそのような認容事例の一つです。

 

 

成年後見人であった親族について特別縁故者として認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

特別縁故者に対し被相続人の遺産総額約6700万円のうち2000万円の財産分与が認められた事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

いとこらに対して特別縁故者として合計9500万円相当の財産分与を認めた原審の決定を取り消した事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

特別縁故者と認められなかった事例 | 弁護士江木大輔のブログ (ameblo.jp)

 

 

本件において,いとこ2名は,特別縁故者として民法958条の3第1項に具体的に掲げられている被相続人と生計を同じくしていたり,療養看護に務めた者には該当せず,裁判所は,「その他被相続人と特別の縁故があった者」という包括的な要件に該当するための基準として,生計同一者,療養看護者に準ずる程度に被相続人との間で具体的,現実的な交渉があり,相続財産を分与することについて被相続人の意思に合致するであろうことが認められる程度に被相続人と密接な関係があった者をいうとしたうえで,次のような事情から,特別縁故者と認めています(それぞれ相続財産の中から5000万円分与)。

・幼少時からいとこ同士で親しい関係にあったこと(〇〇ちゃん,〇兄ちゃんよ呼び合う仲であり,とこのうちの一人とは同じ会社に就職し,お互い実家や自宅を行き来して食事をしたり宿泊するなどしていた。)

・いとこ会を作ってメーリングリストでメンバー相互のやり取りがなされていた。

・被相続人の勤務先の移籍にあたっていとこの一人が緊急連絡先とされていた。

・被相続人と同居していた妹(被相続人に先立って死亡)について,自分に万一の事があればよろしく頼むと言っていた。

・被相続人の死亡後,遺体を引き取り費用を負担して葬儀や納骨などを行ったほか,自宅内の遺品整理やごみの搬出などを行った。

 

 

特別縁故者として多額の分与が認められましたが,それでもその他の多くの遺産は国庫に帰属するということになりました。

被相続人としては親しくしていたいとこたちにすべて分与するということを望んでいたようにも思われます。

ライフスタイルの多様化に伴い,一生独身でいたり,子どもがいないことも珍しいことではなくなっており,そのような場合に遺産についてどのようにしたいのかということを遺言に残しておく,ということも考えてみることをお勧めします。