消滅時効期間について改正法によって大きく手が加えられた分野になりますが,取引(契約)によって生じた債権の消滅時効期間については,その原因となった行為(契約)が施行日前であるか後であるかによって,適否が判断されることになります。

 

 

【改正民法における消滅時効期間】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12297349743.html

 

 

【民法改正 消滅時効の規定についての改正法の適用時期】

https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12587531278.html?frm=theme

 

 

これに対して,交通事故などの不法行為によって生じた人身損害に関する損害賠償債権については,附則35条により次のように定められています。

 

 

(不法行為等に関する経過措置)
改正民法附則第35条 旧法第七百二十四条後段(旧法第九百三十四条第三項(旧法第九百三十六条第三項、第九百四十七条第三項、第九百五十条第二項及び第九百五十七条第二項において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。)に規定する期間がこの法律の施行の際既に経過していた場合におけるその期間の制限については、なお従前の例による。
2 新法第七百二十四条の二の規定は、不法行為による損害賠償請求権の旧法第七百二十四条前段に規定する時効がこの法律の施行の際既に完成していた場合については、適用しない。

 

 

すなわち,まず,旧法の除斥期間(20年間 旧724条後段)について,施行日である令和2年4月1日時点で,この期間が既に経過していた場合には旧法の規定により判断され,経過していなければ,改正法の適用があることになります(附則35条1項)。そのため,不法行為時点から施行日後に20年が経過する場合においては,時効の中断などの規定が適用がされることになります。

また,旧法の不法行為の消滅時効期間である損害及び加害者を知った時から3年間について(旧724条前段),施行日においてこれが完成していたときは旧法が適用され,施行日において完成していなかったときは改正法724条の2の規定,すなわち,損害及び加害者を知ったときから5年間権利を行使しないときは消滅時効期間が完成するとした規定が適用されます(附則35条2項)。つまり,施行日以降に,不法行為自体は施行後より前に生じていたとしても,施行日後に人身損害,加害者を知った事案においては,その知った時から改正法が適用され5年間の消滅時効に服するということになります。

相当以前の不法行為事案においては,消滅時効の適用判断について頭に入れておく必要がありそうです。