平成29年6月成立の改正民法においては,消滅時効の規定がいろいろと改められています。
(債権等の消滅時効)改正民法第166条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。2 債権又は所有権以外の財産権は、権利を行使することができる時から二十年間行使しないときは、時効によって消滅する。3 前二項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を更新するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。
大きなところとしては,従来,職業別に細かく規定されていた短期消滅時効,また,商事消滅時効(商法522条)を廃止し,主観的起算点から5年間,客観的起算点から10年間を原則とする消滅時効期間とされました。
職業別の短期消滅時効期間が廃止されたので規定としてはずいぶんとすっきりしましたが,権利行使できることを「知ったとき」という新たな主観的要件による時効期間が導入されましたので,客観的に権利行使できるときから10年以内に権利行使したとしても,権利行使できると知った時から5年間は経過しているとして争われるケースという紛争も出てきそうです。
ただ,契約から発生する一般的な権利(売買代金など)については,権利発生時手に権利行使できることを知っているというのが通常であるとことから,主観的起算点と客観的起算点は一致するのが基本であると考えられます。
また,人身損害についての消滅時効については,被害者保護の観点から,法律構成が債務不履行義務違反(安全配慮義務違反)であろうと不法行為であろうと,権利行使できると知った時から5年間,権利行使可能時(不法行為時)から20年間とされています。
(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)改正民法第167条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。改正第724条の2 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。
また,改正法では20年間の期間についての法的性質が「消滅時効期間」と明記され,現在の判例上の立場である除斥期間とは異なるものとされましたので,時効中断事由や新設される協議の合意による時効の完成猶予といったことが認められることになります。