1か月単位での変形労働時間制のほか,1年の時季により繁忙がある業界(デパート,物流業界)において採用可能な制度として1年単位での変形労働時間制度があります。
【1か月以内の変形労働時間制】
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1年単位での変形労働時間制は,1か月単位のそれと異なり,必ず事業場の労使協定で内容を定めることが必要となります(労基法32条の4第1項 そして,締結した協定は労基所長への届出が必要・規則12条の4第6項)。労使協定には有効期間を定めておく必要があり(労基法32条の4第5項 規則12条の4第1項),1年程度とすることが望ましいものの,3年以内のものであれば受理して差し支えないとされています(通達)。
労働基準法第32条の4第1項 使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、次に掲げる事項を定めたときは、第三十二条の規定にかかわらず、その協定で第二号の対象期間として定められた期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において、当該協定(次項の規定による定めをした場合においては、その定めを含む。)で定めるところにより、特定された週において同条第一項の労働時間又は特定された日において同条第二項の労働時間を超えて、労働させることができる。
労使協定の実質的な要件として,まず対象となる労働者の範囲の定めが必要です(労基法32条の4第1項1号)。対象となる労働者の範囲はできる限り明確に定める必要があるとされています(通達)。
一 この条の規定による労働時間により労働させることができることとされる労働者の範囲
次に,変形労働時間制の対象となる対象期間を定める必要がありますが(2号),これは起算日を明らかにして定めるものとされています(通達)。この期間は1か月を超えて1年以内の期間に限られます。
二 対象期間(その期間を平均し一週間当たりの労働時間が四十時間を超えない範囲内において労働させる期間をいい、一箇月を超え一年以内の期間に限るものとする。以下この条及び次条において同じ。)
なお,協定において,対象期間中の特に業務が繁忙な期間を特定期間と定めて,この特定期間内においては連続労働日数の上限を12日とすることができます(3号・3項・規則12条の4第5項 特定期間を定めない場合の連続労働日数の上限は6日)。
三 特定期間(対象期間中の特に業務が繁忙な期間をいう。第三項において同じ。)
労基法32条の4第3項 厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見を聴いて、厚生労働省令で、対象期間における労働日数の限度並びに一日及び一週間の労働時間の限度並びに対象期間(第一項の協定で特定期間として定められた期間を除く。)及び同項の協定で特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度を定めることができる。
対象期間における労働日および当該労働日ごとの所定労働時間を定める必要があります(4号)。これらを定めるにあたっては,対象期間わ平均して1週当たりの労働時間が40時間を超えない範囲であることが求められます。具体的には,1年の変形労働時間制度あればその総労働時間を算出し(365日の場合は40時間×365日/7日=2085.7時間),これを平均して1週当たり40時間を超えないように組んでいくことになります。ただ,これを厳格に貫くと何か月も先の労働時間まで具体的に決めておかなければならなくなり不合理なため,対象期間を1か月以上の期間に区分した場合には当該機関の初日の属する期間(最初の区分期間)における労働日と当該労働日ごとの労働時間を定めておけば,残りの期間についは総労働日数と総労働時間を定めておけばよいものとされています。ただ,こうすると,労働者は最初の区分期間以降の自分の労働日等が不明になってしまうので,残りの区分期間についてはその初日の30日前までに使用者は過半労働組合等の同意を得て,当該区分期間の労働日等を書面(勤務表など)で定めなければならないこととなっています(労基法32条の4第2項)。
なお,労働日を定めるに当たり,変形期間が3か月以内の場合は限度はありませんが,3か月を超える場合には280日×(変形期間の暦日数/365)で計算し,1年の場合には260日が限度になります(規則12条の4第3項)。連続労働日数の上限については前記した通りです。
また,1週および労働日における労働時間を定めるに当たり,3か月以内の変形労働期間制の場合は,1週52時間,1日の労働時間の限度は10時間とされています(規則12条の4第4項)。3か月を超える場合は,①対象期間を通じて労働時間の合計が48時間を超える週は3週を限度とすること②変形期間の初日から3か月ごとに区分した期間においてその労働時間が48時間を超える週の初日の数が3以下であることの2つの要件を満たす必要があります(規則12条の4第4項)。
四 対象期間における労働日及び当該労働日ごとの労働時間(対象期間を一箇月以上の期間ごとに区分することとした場合においては、当該区分による各期間のうち当該対象期間の初日の属する期間(以下この条において「最初の期間」という。)における労働日及び当該労働日ごとの労働時間並びに当該最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間)
労基法32条の4第2項 使用者は、前項の協定で同項第四号の区分をし当該区分による各期間のうち最初の期間を除く各期間における労働日数及び総労働時間を定めたときは、当該各期間の初日の少なくとも三十日前に、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の同意を得て、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働日数を超えない範囲内において当該各期間における労働日及び当該総労働時間を超えない範囲内において当該各期間における労働日ごとの労働時間を定めなければならない。