https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190613/k10011951221000.html
フィリピンの警察では、薬物と銃器に関わる事件で逮捕したフィリピン人の男女2人が殺害を実行したとみて捜査を進めていました。
その結果、容疑者が日本から電話などで犯行を指示した疑いが強まり、現地の警察と情報交換を続けていた兵庫県警察本部が、刑法の「国外犯規定」を適用し、殺人の疑いで逮捕しました。(6月13日NHKニュースウェブから一部引用)
刑法の「国外犯規定」は、日本人が重大な犯罪を行ったり、海外で犯罪に巻き込まれたりした場合、日本の刑法の効力が及ぶことを定めたものです。
国外犯規定を適用すれば、現地の捜査当局だけでなく、日本の警察も捜査を行うことができます。
日本国民が国外で行なった犯罪について(今回の件が最終的に犯罪として認定されるかどうかは別として),日本の刑法の適用があるか(犯罪が成立するか)については刑法3条に規定があり,犯罪の種別によって刑法の適否が定められています。殺人罪は適用がされる犯罪として定められています。
時折,東南アジアなどでは日本人による殺人事件が報じられますが,このような件について日本の警察は日本の刑法の適用がある者として捜査することができます。もっとも,捜査といっても,日本国外には日本の警察の捜査権は及びませんので,政府を通じて捜査共助等を行うことになります。
国民の国外犯として規定されているものとしては,殺人や放火,強制性交といった重罪のほか,窃盗や詐欺,業務上横領,背任といった財産犯罪も含まれています。
名誉棄損罪も含まれているのですが,他に列挙されている犯罪類型と比べると異質な感じもします。
(国民の国外犯)刑法第3条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適用する。七 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪
犯罪を犯した者が日本国民かどうかに関わらず,日本国外で行われた場合にすべて適用とされる犯罪としては内乱罪など国家の法益に関わる犯罪が規定されています(刑法2条)。ほかには,通貨偽造罪,支払用カード電磁的記録不正作出罪などが含まれています。
(すべての者の国外犯)刑法第2条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。二 第七十七条から第七十九条まで(内乱、予備及び陰謀、内乱等幇助)の罪(以下,略)
国外で行われた犯罪について,日本国民が被害者となった場合の一定の犯罪についても,その犯人が外国人であっても日本刑法の適用があります(刑法3条の2)。強制性交や殺人といった個人の身体,生命に対する重大な法益侵害がされた場合が多いです。日本人がイスラム国により人質とされた上に殺害された件などがこれにあたります。
(国民以外の者の国外犯)刑法第3条の2 この法律は、日本国外において日本国民に対して次に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に適用する。一 第百七十六条から第百八十一条まで(強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ及び準強制性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、未遂罪、強制わいせつ等致死傷)の罪二 第百九十九条(殺人)の罪及びその未遂罪(以下略)
また,公務員に限って定められている国外犯罪もあります(刑法4条)。
(公務員の国外犯)刑法第4条 この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国の公務員に適用する。一 第百一条(看守者等による逃走援助)の罪及びその未遂罪二 第百五十六条(虚偽公文書作成等)の罪三 第百九十三条(公務員職権濫用)、第百九十五条第二項(特別公務員暴行陵虐)及び第百九十七条から第百九十七条の四まで(収賄、受託収賄及び事前収賄、第三者供賄、加重収賄及び事後収賄、あっせん収賄)の罪並びに第百九十五条第二項の罪に係る第百九十六条(特別公務員職権濫用等致死傷)の罪
特に,近時ではインターネットを通じて海外を経由して犯罪が行われるということもあり,犯罪が成立するのかという点のほかに,犯罪の立証という点でも難しい問題が生じていると思います。
【漁業取締船で高校野球賭博 水産庁職員ら39人書類送検】
https://ameblo.jp/egidaisuke/entry-12245132925.html