脳はほとんど機能しておらず、意識はなく、医師からはあと数日だと言われた。
実家は今住んでいる所から車で4時間かかるので、私は職場に無理を言って休みをもらい、お別れをするつもりで会いに行った。
高速バスの中ではずっと泣いていた。突然のことで職場も大変な時期だったのに、みんなでがんばるから大丈夫、気にせず行ってらっしゃい、と優しいメッセージをくれ、その優しさにまた涙が止まらなかった。
ICUのベッドで寝ている祖母は、とても小さかった。祖母の目を開けた顔を見ることや声を聞くことはもうないんだと思った。
次に会う時はもう…と覚悟して、私にできることを、後悔しないように、とタッチケアをして帰った。
祖母は心臓が肥大したり肺に水が溜まっていて、いつ心臓が動かなくなるか、呼吸ができなくなるか、という状態のまま、1週間が経ち、2週間が経ち、とうとう1ヶ月が経った。
ICUから一般病室に移り、近々療養施設に移る予定とのこと。
昔から気が強く、バイタリティのある人だったが、こんな状態になってもそれは変わらないのかと思うと感心する。
強く覚悟をしていただけにちょっと拍子抜けな感じもある。
祖母が生きていてくれて安心する気持ちと同時に、ずっと意識のないままの祖母に会いに行くと、やっぱり元気な祖母と言葉を交わしたかったという気持ちが膨らむ。
私は祖母と離れて暮らしていたので、最後に祖母と会って話したのは4ヶ月も前。何を話したのか覚えていない。
私はおばあちゃん子だったので、祖母から教わったことはたくさんある。夫の好物の卵焼きは祖母直伝である。
でも、もっともっと教えてもらいたかった。
だけど、悔やんでもしかたのないこと。
BUMP OF CHICKENのsupernovaという曲に助けられた。
大切なものはなくしてから気づく。出会いがあったから自分の歴史があり、自分が作られる。大切な存在は自分の中にある。
という意味の歌詞がある。
祖母との出会いがあったから今の私がいる、祖母から伝えられたものは私の中にたくさんある。
今私は、寝たきりの祖母とどう向き合うのか、どう関わるのかを考えている。