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銘木屋のひとりごと

京都の老舗銘木店の経営者という観点から、日々の生活を通じた京都の老舗が守り伝えてきた衣食住にまつわる伝統的な暮らしの文化を少しでも世間にご紹介していきたいという願いで拙いブログをはじめました。

サルスベリはミソハギ科の落葉樹で、
梅雨明けから初秋かけて花の咲いてる期間が長いので、
別名、百日紅(ヒャクジッコウ)とも呼ばれています。
関東では山花梨(ヤマカリン)とも呼ばれ、

また、われわれ関西の銘木屋の間では、一般的にリョーブ(良母)と

呼んでいます。

 

サルスベリの花

 

サルスベリとリョーブは同じ樹種として扱われていますが、

それらは一見すると非常によく似ていますが、

よく観ると表面の皮肌の感じが若干異なります。


サルスベリは皮の表面がとても滑らかで、

猿が登っても滑って落ちてしまうところから

サルスベリ(猿滑り)といわれるようになったという説もあります。


ところで、銘木・建築材としてのサルスベリ・リョーブは、

和風建築の中では謂わば脇役の存在です。
極く稀に床柱に使用されることもありますが、

どちらかと言えば、茶室の中柱や床の間の落掛けや壁止めなど、

少し謙った所に使用されます。


弊社にも25年ほど前から在庫として長さ3M、末口12㎝もある、

かなり太いサルスベリ(厳密にはリョーブ)の皮付丸太がありました。

サルスベリ・リョーブは成長が遅い為、末口12㎝もあると

樹齢は50年以上になります。そして材質は緻密で非常に堅いです。

 

弊社にあったリョーブ皮付丸太 その1

 

弊社にあったリョーブ皮付丸太 その2

 

先日、ある御縁でこのサルスベリを売却することになったのですが、

出荷する際によく観てみると末の方の約半分が虫に喰われていて、

先方了解の上、やむなく出荷を断念いたしました。

 

虫喰いの跡


サルスベリなどの皮付丸太の虫は表皮の下の一番外側の

柔らかい夏目の部分を喰いますので、表面からは全く分かりません。もしも、この虫喰いを見落として出荷してしまったら、

逆に弊社の信用を落としていたところです。


そこで、半分虫喰いということで化粧柱などの商品にはなりませんが、
捨ててしまうのも忍びないもので、何か使えないものかと考え、
結局、元の方は全く虫喰いの影響がないので、

台目(1.5M)の長さの床框を2丁こしらえてみました。


これだけ太いサルスベリで直材で節も何もないものは珍しいので、

珍しい風情のある床框が2丁も取れました。

 

 ①サルスベリの皮付太鼓落しの床框です。

  正面の丸い皮付き部分と上端の白い身の部分とのコントラストが鮮やかです。
  栗ナグリや北山丸太の床柱に合わせやすい床框です。

 

 

②サルスベリの手斧(チョンナ)ナグリ床框です。
サルスベリのナグリの部分(身の部分)は色が白いので

柿渋を5回塗り、ツバキ油で艶をだしました。

赤松皮付丸太の床柱に合わせやすいと思います。 

 

たとえ虫喰いの木でも、どこか使える所があれば、

それをどのように生かすかを考える・・・・

これも銘木の面白いところです。

 

今年の西日本は大変遅い梅雨入りとなりました。

農作物にとって梅雨入りしたのはいいことですが、

地域によって大雨の被害がないことを祈るばかりです。

 

昨日、建築家であり、且つ自らお茶人でもあり、書家でもあられる

静岡の太田新之介先生が久々に弊社におみえになりました。

 

弊社の銘木の倉庫をご覧になりながら、

太田先生のお話やお考えをお伺いし、いつもながら逆にいろいろと

私の方が勉強させていただいております。

 

太田先生は茶の湯、書道、陶芸、歴史などあらゆる伝統文化・芸術に

ご造詣が深く、そうした総合的な観点から建築を創造されますので、

お言葉の一言一言に深い含蓄があり、お話を聴かせていただく側にもそれなりの心構えと知識が必要なのです。

 

最後に弊社の八帖広間に座っていただき、

六月ということで水無月のお菓子と薄茶を差し上げました。

 

萩焼十二代坂倉新兵衛造り(即中斎書付、銘「木かげ」)の

平茶碗で薄茶を差し上げたら、お茶碗を見るなり褒めていただき、

坂倉新兵衛の茶碗の見所を分かりやすく解説していただきました。

 

 

私の人生で自分の出したお茶碗を褒めていただけるお客様は少なく、

太田先生には大変失礼で、お目だるいことでしたが、

本当に有難い経験をさせていただきました。

 

 

立礼席の設え

掛け軸・高雄山乾岳筆「随處楽」

 

 

広間の設え

掛け軸・尋牛斎筆「山雲海月情」

花入れ・煤竹宗全籠

花・鉄線(テッセン)、半夏生(ハンゲショウ)、

 

磨き葭の簾

 

母屋から八帖広間に繋がる廊下の軒簾を

新しいものに取り替えました。磨き葭の真新しい白さと黒糸が

美しいコントラストを見せ、良いタイミングでお客様をお迎えすることが出来て良かったです。

30年つづいた平成が幕を閉じ、

いよいよ新元号・令和の時代が始まりました。

 

 

令和が平和で活気に満ちた時代であることを切に願いつつ、

また、私にとって令和元年が自己の人生の通過点として、

「将来に向けて今の自分はどうあるべきか。」と改めて己を

見つめ直し、心の緒を引き締める良い機会でもあります。

 

さて、この10連休は家に閉じこもって過ごすつもりでしたが、

折角の連休に家にいるのも何か勿体ないような気がして、

家族で3日間ほど北陸の温泉に骨休めに行ってきました。

 

 

観光はせず、時間を気にしないで温泉につかったり、

ゆっくり読書に耽ってました。・・・・時間が止まったようで

とてもリフレッシュできました。

 

唯一、九谷焼の工房で陶芸体験をさせていただきました。

初めてロクロで回転する粘土に触れましたが、

全く思うようにいかず、かなり悪戦苦闘の連続でしたが、

先生のサポートもあり、最後は何とか抹茶茶碗の形になりました。

後は先生が釉薬をかけて、窯で焼いてくりゃはるそうです。

一ヶ月半後の出来上がりが楽しみです。

 

 

右側が自作の抹茶茶碗

 

皆様も良い10連休をお過ごしください。