銘木屋のひとりごと

銘木屋のひとりごと

京都の老舗銘木店の経営者という観点から、日々の生活を通じた京都の老舗が守り伝えてきた衣食住にまつわる伝統的な暮らしの文化を少しでも世間にご紹介していきたいという願いで拙いブログをはじめました。

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皆様、大変ご無沙汰いたしております。

春から新型コロナウィルスの影響で、仕事も私生活も

心理的に足が地につかない状況でブログも自粛しておりました。

 

今年2~3月からの新型コロナウィルスの世界的感染拡大により

4月に緊急事態宣言が発令され、医療分野や経済活動において

未だかつて経験したことのない社会状況に陥りました。

私もこのように人の動きが止まるとどうなるかという悲惨な状況は

生まれて初めて目の当たりにしました。

この度のコロナ禍の影響を受けていない方はほぼおられないかと思います。いつかは必ず出口が来るはずです。ともに頑張りましょう。

 

さて、この数ヶ月は何も考える余裕がなかったのですが、

昨年より決まっていた案件がここに来て少し動き出し、その一つに、

ケヤキ四方柾の床柱という大変珍しい柱を作らせていただきました。ご紹介したいと思います。

 

角材の床柱は、国産の松・ケヤキ・杉・桧など

原木の丸太を製材して作られます。

しかも芯去り材ですと通常は正面が杢目で両サイドに

柾目が来るように挽かれるのが一般的です。

 

 

ところが床柱で最も格式が高いとされる四方柾と呼ばれるものがあり、それはどの面を見ても柾目になるように挽かれた柱のことです。

 

この四方柾で節のない柱を取るためには、

まず原木が太いことが絶対条件で、

松や杉、桧、ケヤキなど、樹齢数百年以上は必要になってきます。

そして四方柾は全ての面で年輪がほぼ直行していないと取れない為

同じ芯去り材でも正面を杢目にする挽き方よりも、

約2倍の材積が必要になり、極めて贅沢な挽き方をします。

 

 

         四方柾を挽く前のケヤキの柾盤

           4200×300×160㎜

 

      どの面も柾目にするために面に対して45°に

      年輪が通っているように挽く

 

    3000×120×120に仕上がったケヤキ四方柾柱

 

一般的に、日本建築はその格式の高さによって、

真・行・草の形式に大別されます。

お寺の庫裏や武家屋敷のような真の建築の書院の床の間において、

床柱は桧の四方柾が昔から最高とされていますが、

ケヤキは広葉樹のため針葉樹のように目が真っ直ぐ通ったものが少なく、ましてやケヤキの四方柾柱をとるということは、

よほど素直な良い原木や盤に遭遇し、そしてその塊のどの部分で

とるかという判断で四方柾の出来の善し悪しが決まってくるのです。

このような観点からいうと、

ケヤキの四方柾柱は正に銘木中の銘木と申せましょう。

 

 

 

 

お正月気分が未だに抜け切れていないまま、

早くも1月も後半にさしかかってしまいました。

 

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

弊社がお世話になっております住友林業ホームテック(株)京都支店様

が、この1月9日~20日まで、四条烏丸の大垣書店本店の

イベントスペース~催~で「京町屋再生展」を開催されておられます。

本日、ちょこっと覗かせてもらいました。

 

「素材を活かし、住み継ぐ」をコンセプトに

伝統木造建築や京町屋の再生を一般大衆に向けて

建築材料の実物を展示して積極的にアピールしておられます。

 

弊社も入口の床の間のカットモデルの床柱・床框をはじめ、

銘木のコーナーでは実物の銘木やカットサンプルを展示させていただきました。

 

大きな書店のイベントスペースということもあり、いろいろな方が足を止めて見ておられました。

 

生活様式が洋風化し、社会の変化がめまぐるしい昨今において、

一般の方々に少しでも木造建築の持つ癒やしや木の温もりが伝わり、

木への感心を持って下さったらほんまに有り難いことです。

住友林業ホームテック(株)京都支店様の地道な取り組みに

心より応援いたします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ秋も深まり、京都の観光名所も

紅葉真っ盛りの季節となりました。

今年も余すところ約1ヶ月、季節の移ろいとともに

何かしら気忙しさを感じる今日この頃です。

 

今年はインフルエンザが大流行しているそうで、

私も今年は早々に予防接種を受けてきました。

予防接種をしたから絶対にインフルエンザにならない

というものではないらしですね。

まあ、世間的、医学的にはしないよりはいいのだと思います。

 

ところで、昨日は弊社に校舎内にお茶室を建築されている

学校法人様が床柱を選びにおみえになりました。

そこで、少しでもお茶の雰囲気を味わっていただきたいと思い、

季節の掛け物と竹の一重切りの花入れに花を生けて

お迎えいたしました。

 

八帖の広間に座っていただきながら、

現在建築中の茶室がどのようなものになるのか、

またはどのような空間にされたいのかをイメージしていただき、

数種類の北山丸太の中から床柱を選んでいただきました。

最終的にイメージに合った1本が見つかったようで何よりです。

 

立礼席の設え

掛け軸・高雄山乾岳筆「随處楽」

 

 

 

広間の設え

 竹一重切花入れ・尋牛斎書付 銘「唐錦」

  花  ホトトギス、ミズキ

 

掛け物は、秋に相応しい画賛で柘榴壺の絵(新井孚鮮?)に

表千家・即中斎宗匠が「日月長」と賛を添えられています。

これは「壺中、日月長し」という禅語を画賛で表現したもので、

壺の中という狭い空間でも心の持ち方次第で、

時間は悠々と流れていくという意味でしょうか。