水瀬あやこ | 赫いわななき〜地獄編〜

赫いわななき〜地獄編〜

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「夢が醒めたら」水瀬あやこ
作詩曲/水瀬あやこ 編曲/矢田部正
C/W 「奇跡の海」
作詩曲/水瀬あやこ 編曲/矢田部正
メロディ YZME-15184 2018.05.02.
ご無沙汰しておりますm(_ _)m

という事で久々の更新は楽曲レビューを。ここ何作か濃い味の楽曲紹介が続いてましたので(だって好きなんだものw)純粋にナイスな歌謡曲をご紹介しましょう。水瀬あやこさんの「夢が醒めたら」っす。


水瀬さん、俺が爆推ししております千葉山貴公さんとも親しい歌手の方でして俺も一応のチェックはしてたんですね。ただまあ基本J-POP寄りの方なのかなと思いまして…いや別にJ-POPだろうがアイドルポップスだろうがコンプラ系ラップだろうがwここでは制限なくご紹介する気負いなんですが、一応カラーは作ろうと(笑、何色なんだよオマエは)

ところがですね、今回の水瀬さんの曲はイイの!ワッサワサ揺さぶるのアタシのはらわたを!!こういう曲を提示されちゃあ黙ってるワケにいきませんわ。って事でご紹介してしまいます。

まず水瀬さんのプロフですが、ウィキにもある通り2002年3月1日日本コロムビアより楠野紋子名義でデビュー(その前、お子様の頃に「カエルのルンバ」(1991.09.20. TODT-2717)という曲を出してるそうです。TBS『美空ひばり物語』でお嬢の幼少期を演じられたのも彼女とか)。コロムビアでシングル2枚出した後徳間に移籍して楠木あや名義で2枚リリース、その後現在のお名前に改名されてらっしゃいますね。今回ご紹介する「夢が醒めたら」は通算10作目になるのかな。

水瀬さん、正式デビュー前にロンドンで音楽に携わってた時期があるそうでして歌声もそういえば何となく巻き舌ææアッシュ風。余裕を感じられるヴォーカルという感じですが、この作品ではそこからひと皮剥けた、切羽詰まったような歌唱を堪能できるんですよ。

いや歌唱自体は常に安定・高品質の絶品ヴォーカルなんすけど、その上でどこか “崖っぷちに立たされて歌ってる” ような緊迫感を感じるんだよなーこの「夢が醒めたら」は。聴きながらこっちまで巻き添え喰らって堕っこちるんじゃないかと不安/期待で涙目失禁するようなスリリングチューンとなっております。
PVより。畏ろしい程の高精度な映像…きっとかなりセンスのある監督さんが作ってらっしゃるハズ。この曲に限らず、彼女のPVはレベル高いのが多いよね。

歌詩の内容はざっくり云うと『やっぱりおかわりが欲しくなった』という感じ?(ザックリし過ぎww)実る季節はもう来ないと知っていてそれでもやっぱり求めてしまう “おんなの深いサガ” を歌ったものでして、深読みするとかなりドロリとした世界ですね。サビラストの
♫信じ生きてゆく
ってのがイヤに効いてます、何かとてつもなく荘厳なテーマみたいで。さらにオーラスはこのフレーズの後
♫明日が来るまで…
と畳み掛けてカットアウトするとゆう荒技まで!きゃーーーっっ、シビれるぅぅっ!!
『歌謡最前線』で歌われてた時のVより。これは不忍池で行われた公録のヤツですね、去年は行けなかったんだよなぁ⤵︎
それにしても(多分水瀬さんお手製!の)この衣裳!た…たまらんっっ💨💨

C/Wの「奇跡の海」もいきなり♫裏目に出てきた〜なんて歌詩から始まる燻し水銀のような濡れ作品。サビで一瞬転調?するとこが堪んなく快感なオシャレ曲よ。こっちもいい曲だわー。


特筆すべきは何とこの作品、両面とも水瀬さんご自身が書かれたものなんすね。このフツフツと煮沸き立つ感覚、というか情念、好きよ❤️

自作の曲を歌われる歌手の方ってやや自身の殻を破らない傾向(そりゃセルフプロデュースだから極力おキレイに見せたいでしょうし声域や特徴も把握してるから切り口も似通っちゃうしね)があるんですが、この「夢が醒めたら」での水瀬さんはその殻も核膜すらも完全に破り切ってらっしゃると思うのよ。もちろんサビのハイトーンとか得意技はしっかり駆使されてるんですが、もうそれ以前にご自身のキャラクターや想定される路線からは一歩引いて、ドン詰まったザ・歌謡曲をシングルとして発表される…この意気込みがナイフの刃を局部に突き立てるような歌唱に繋がってるのかしら。

こういう曲、昔TVドラマのEDとかで使われてたなぁ…。やけにシンプルでドラマティック、に見せかけつつ過剰に豪華な曲展開。こういうよくわかんないパワー、ハッタリ重ねて惹きつけるドラマの主題歌にピッタリだと思わない?(テレ東さん、是非ご検討を)
そんなドラマ風な展開の「夢が醒めたら」、焦点合わせずに見据えながらじゅっぽり歌いたくなる逸曲です。俺も一時期取り憑かれたようにこの曲ばっか歌っておりました。最近歌いに行けてないんで、また久方ぶりに歌いたくなってきたワ🎤🎤🎤
何しろC/W含めグゥの音云わさぬバイブスで迫り来る作品、ザ・歌謡曲がお好きな方なら是非タメシテ頂きたい逸曲ですわよ。



さて、ここからは水瀬あやこさんについてもうひと捏ねしてみようかと思いますの。
上で “J-POP寄り” と書きましたが水瀬あやこ名義になってからは割りかし歌謡曲寄りの展開となっておりますのでサラッとディスコグラフィをご紹介しておきましょう(殆どのCDは千葉山貴公さんにご提供頂きました。ありがとうございますm(_ _)m)
「東京ブギウギ」
作詩/鈴木勝 作曲/服部良一 編曲/ha-j
「逢いたくて逢いたくて」
作詩/岩谷時子 作曲/宮川泰 編曲/秋山誠司
「恋をしましょう」
作詩/冬弓ちひろ 作曲/山崎一稔 編曲/秋山誠司
徳間 TKCA-90124 2006.06.07.

「京都の恋」
作詩曲/ドン・ウィルソン、メル・テイラー、ジェリー・マギー、ジョン・ドリル 日本語詩/林春生 編曲/徳武弘文
「黄色いさくらんぼ」
作詩/星野哲郎 作曲/浜口庫之助 編曲/Deep寿
「太陽のバカンス」
作詩/ちあき哲也 作曲/長沢ヒロ 編曲/Deep寿
徳間 TKCA-90192 2007.04.04.

「つぐない」
作詩/荒木とよひさ 作曲/三木たかし 編曲/京田誠一
「最後の恋」
作詩/純花 作曲/長沢ヒロ 編曲/Deep寿
徳間 TKCA-90295 2008.10.08.

「追想」
作詩/天地明 作曲/武市昌久 編曲/矢田部正
「忘れたいのに」
作詩曲/水瀬あやこ 編曲/矢田部正
メロディ YZME-15123 2016.06.15.


改名後の徳間ジャパン作品では昭和歌謡の名曲カバーを連投されてますね。J-POPから歌謡曲路線への過渡期を作るというコンセプチュアルなリリースなんでしょうか?オリジナルはどれも超がつく有名曲なんですが、それなりに各々カバーされちゃってるしなぁ。
日野美歌ねいさんの「つぐない」は「冬の嘘つき」C/W。他に野村将希さんも歌ってます、カバーちゅうか競作気味ですが。村越裕子ちゃんは大好きだったのよ❗️矢野誠アレンジのニューウェーブver「京都の恋」、C/W含め名盤っ❤️「東京ブギウギ」は室井滋ねえさんのが有名だけど、変則カバーの長良いづみ「東京ズキズキ娘」推し。これを水瀬さんがカバーしてくれたらなぁ(しねーよw

「追想/忘れたいのに」にも同名異曲がありますがこちらはオリジナル作品。かなりのめり込んだ歌唱が堪能出来ます。「忘れたいのに」もご自身のコンポーズによるものでサビの展開は好きですね。
徳間でのカバー作品時代もC/Wには一部オリジナル曲が収録されてまして「京都の恋」C/W2の「太陽のバカンス」(これもタイトルだけなら郁恵にあるね、だからそうゆうのカバーすれば面白いのに)なんてカバー曲に合わせて?コケティッシュ寄りで結構スキよ。何たってちあき哲也X長沢ヒロという作家陣が刹那感ドバドバ垂涎してるでしょ。
あと、個人的に彼女のオリジナル作品ではこちらが出色かなと。
「再恋」
作詩曲/ほづみりん 編曲/周防泰臣
C/W「わたしの街」
作詩曲/ほづみりん 編曲/周防泰臣
MEG MSCL-11815 2013.


まずね、このCDのリリース元はMEG-CD(ミュージックグリッド)ってトコに吃驚‼️MEG-CDって過去の作品を再リリースするだけじゃなく、新譜も発売するんだ…これが㐧一弾リリースらしいっすけど。
水瀬さんのリリース時期としては徳間でのラスト「つぐない」の次作。ジャケの感じもその辺を狙ってるし、テレサ寄りのメロウ歌謡路線かなーなんて聴く前は思ってましたが、予想を反して四畳半フォーク調の濡れ歌謡でした。
PVより。上の「夢が醒めたら」も含め、公式よりお借りしましたm(_ _)m

サビがね、いいんですよ!語り口調で淡々とした曲展開から静かに盛り上がり、最後にハイトーンヴォイスでキメキメにしてオトすという鋭い作戦。これは濡れるでしょ。

歌詩展開もヤバい。故郷を棄てひっそりと暮らすわけありの女。そう、“わけあり”よワケあり!帰りたくても帰れない程のそのワケについては歌ってませんが、流れを聴く限りオトコ絡みよねぇ?と邪推してみたり、ふふ。
しかもこの主人公、やたらと被虐体質なの。♫いじめないでねこれ以上、とか、♫ほんとは怖い男(ひと)ですか、とか…もう明らかでしょこの人みたいな。しかも自ら求めにいく自称Mとは違って、心は本気で逃れたくて仕方ないはずなのにどうしても本能がその手のダメ男を引き込んでしまうってタイプね。フィジカルの奥底では虐げられる悦びに戦慄いているのがよーーく解ります。

そんな70年代日活ロマン風の展開を背景から描写まできっちり描いて(センテンスの繋げ方も見事)、しかもメロまでがっぷりハメこんでらっしゃる作詩曲のほづみりんさん。他の作品で拝見した事ない方なんですが、どうやら現役の美人演歌歌手の方だそうですね。特定は出来てるんですがご自身のプロフ含め表記しているところがなく、しかも何しろこの歌詩なので(苦笑、C/W「わたしの街」はまた視点を変えた屈折具合でこちらもステキよ)ここでの表記は控えておきます。是非ご自身の作品でもこの溢れる才覚を活かした楽曲に挑戦して頂きたい。

水瀬さんの歌唱も微妙に前ノリしつつ歌謡曲に踏みとどまってる処がニクいねェ。フォーク演歌にありがちな黴臭さは少なめに、四畳半に拡がる罪と蜜まみれの愛憎劇をグスグスと思い浮かべさせてくれてます。ご自身のスタイルの肝は崩す事なく歌謡曲フィールドでいかにその魅力を昇華させられるか、まるで水瀬さんは実験しながら唄われてるような錯覚も…これが今回の「夢が醒めたら」に繋がってるとしたらスゲェわ。是非これからも、轢き摺られながら貪る愛の顛末をドンズバな歌謡曲に乗せて歌い魅せる歌手として大成して欲しいと思ってますの。これからも応援してますよ!!


笑顔はこんなにキューティ。個人的には“きな粉”をイメージさせるルックスかな?コナモン、好きなの…💕