～とても大切だったもの～
主人と子どもに よく似合う
新しい季節の衣服など
あれこれ もとめたその後で
少しぐらいは自分にも
やさしくしてあげたくなって
バーゲンセールのワゴンの中から
運命の出逢いのように
それを見つけた
それは ぴらりと付けられた
値札に並ぶ数字よりは
遙かにずっと贅沢で
ひらくと 光沢のある
パールホワイトの中で
赤、紫、ローズと
鮮やかな花を咲かせた
けれど少しも仰々しくなく
細い金の柄の先が
フック船長の義手のごとく
見事なカーブを描いており
このうえなく洒落ていた
地味好みの私が
雨の日だけ華やぐので
雨は嫌いでなくなった
水溜まりをひらりと跳び越え
お気に入りの
それと共に出かけるとき
少女の日の心が躍る
玄関を出て
色とりどりの花を咲かせて
背筋を伸ばして歩いたものです
或る日
ほんの僅かな気の緩みから
そんな一等お気に入りを
とうとう失う羽目になった
昼下がり 友人宅のお茶会には
賑やかに人が集うので
外(おもて)の階下に
それを立て掛け
私は彼女のドアを叩いた
とりとめもない世間話に始終して
軽く別れを告げた後
それの不在を知ったのだった
あの傘をひらくとき
現在(いま)持ち主となった人は
心も ひらけられるのだろか
雨降りなのに晴れやかな
弾んだ心になれるのだろか
雨の日
花々の配色を想い出すたび
胸に覚える微かな痛みを
鎮める術(すべ)は見つからない
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この詩は 1996年に投稿して
『詩とメルヘン』に掲載されたものです。
名古屋在住中に 偶然 書店で出逢い
次の転勤までの1年半が
私の第2期ポエムブームでした。
実際の傘の配色とは
少し異なるのですが
美しいイラストを付けて頂き
大切な傘を失った代わりに
この冊子は 私にとって
とても大切なものに なりました。
一昨日のこと。
雨が降るのを待って
『傘の王子さま』と勝手に名付けた
オブジェを写真に収めに出た帰り
買い物を済ませ
ショッピングモールの出口へ向かう際
水槽に揺らめく水中花の彩りが
あの時 失った傘を彷彿させ
思わず 写真に撮りました。
それが 冒頭のフォトです。
さて 館内を出ようとしたところ
( ﾟдﾟ)ﾊｯ!
傘が 無いーーーー
慌てて引き返し
落とし物を調べて貰ううちに
つい さっきの水槽を思い出し
駈けつけたものの見当たらず・・・
きっと 写真を撮る時 手から離した筈。
この綺麗な花の水槽の傍に
立て掛けられた花柄の傘を
差して帰った人は
やっぱり 花が好きで
つい 魔が差したのだろうと
諦めのついた私を
悲嘆に暮れた昔の私より
チョットいいかもと思ってたところ
落とし物センターから
見つかったとの 連絡が入りました
(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o)))
この傘は母の日に
贈ってもらったものだったのです。
届けてくださった方、
本当に ありがとうございました
かのんこーど 円香さんのイベント
「あめにうたえば」参加させて頂きました。
https://ameblo.jp/inkwink777/entry-12603812034.html
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九州を始め各地での豪雨による
被災地の方々には
雨関連の記事で 申し訳ありません。
<(_ _)>
降りやまぬ雨に 水害、土砂崩れなどから
身を守るため 迅速に避難されますよう
皆さまのご無事をお祈りいたします。
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