孤独便  -3ページ目

白骨化した太陽の頭蓋に

 

欠けた月が棲みつく

 

氷結した銀河は星の氷柱となり

 

その凍てつく牢獄の牙が未だ月の巣を砕けずに

 

孤高はよいよ水晶の塔になる

 

 

 

蝉の脱け殻を夢中でひろう少女の泥の手は

 

いつしか瑠璃色の過失とみなされた

 

 

太陽の黒点を消毒もせずに凝視める少女の眼

 

次第に眼は焼け焦げ

 

裡なる火事は感受性を使い果たすまで


鎮まることを知らず燃えあがる


 

 

 

氷柱を溶かす無二の手を

 

若くして去勢する人の世で

 

少女はありふれた麻薬に溺れてみせ

 

 

言葉を溶かす無二の眼を

 

言葉で塞ぐ人の世で

 

少女はありふれた言葉にかくれてみせ…

 

 

 

 

 

 

光と闇が相打ちに倒れた白夜

 

腹の底から産まれた子

 

親の顔を知らない子

 

正義は孤児の血に眠り、悪は血の階段を駆け下りて

 

背骨を空き巣にしたばっかりに

 

雑多な精神なんざ住みついた

 

 

血は赤茶けた深刻を子に盛りつづけ

 

子は日蝕を素手で編むように血を揺り起こす

 

たとえ風に横殴りされようが子は歩き

 

玄関の扉を叩くように心臓を殴っては

 

閉め出された涙が立ったまま手紙を書き綴る

 

 

やがて子は孤独な人と出会い

 

ようやく見つけた一つの椅子を譲り合う

 

どちらかの孤独が立つしかない世界で

 

二つの国は月夜の帽子を目深にかぶり立ち去った

 

その気高さの死角に置かれた

 

脆き椅子を

 

国境にして…

 

 

 

混沌と秩序とが相打ちに倒れた白昼夢

 

花籠を落とした井戸の底から産まれた子

 

親の顔を知ってる子

 

血が起床するまえに

 

起きてる子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鏡のなかにうつる鏡のなかにうつる鏡のなかには

 

螺旋階段を踏み外した女の青いハイヒールが枝葉を重ね生い茂る

 

虚空へ巣立ち鬱蒼とした奈落へと落下する青い鳥

 

三十七枚目の鏡がハイヒールを拾いにいくが

 

四十五枚目の鏡がハイヒールを隠す

 

 

鏡のなかに区画された売春街では

 

幾重もの鏡が伽藍堂の扉を開け微かに洩れる吐息を競い合う

 

粘つく光に舐め回されたその琥珀の足で女は目の前の鏡を砕き

 

蹴散らした永遠の中から死に至る約束だけを掠め取る

 

蜘蛛の形をした美しさを自らの喉元に飾り青空に毒が回ると

 

女は夕焼けを吐血した

 

土の上にはねた木漏れ日を拭うには余りに雲は白すぎる

 

 

女の反転したままの性欲が精巧な首輪を作りあげた頃

 

女はコスモスの淡い香りから吹き抜けに広がる永遠を探しにいく

 

鏡のなかの永遠に飼われていたかつての女のように

 

女は永遠を飼うという

 

鏡を覗き迷宮の墓参りをすませた女が

 

自らを見送るように泣いている

 

涙は心に棲む亡霊の形見に相応しく

 

透き通る永遠の裸そのものだ