先日、東京からの帰りに、池袋でJRに乗り換えた時のことだ。
私の前の座席の若い女性が、スマホに懸命だった。
それだけなら、見慣れた光景だが、
女性の前にはベビーカーがあり、生後6ケ月ほどの赤ちゃんが乗っている。
ベビーカーは、日よけの屋根部分が下ろされ、
赤ちゃんは、身体をベルトで固定されている。
乗客に気遣ってか、ベビーカーは座席に対して斜めに置いてあるのだが、
赤ちゃんは、母親とは反対側を向かされたままだ。
つまり、赤ちゃんは、私を見ることはできるが、母親を見ることはできない。
母親も、ベビーカーの背と屋根のために、赤ちゃんの体の一部さえ見ることのない位置にある。
まあ、すぐに降りるからだろう・・・と思ったのだが、10分、20分が経過する。
そして私の降りる浦和までの30分間、
母親と赤ちゃんは近距離にいながら、全く顔を見つめ合う瞬間もないまま時間を過ごした。
私は何度か赤ちゃんに微笑みかけてしまった。
すると、その母親は私に気づき、不審者を伺うような目つきをする。
それでも、眺めているだけで、可愛くて仕方がなくなる。
母親に気づかれないように、こっそり微笑みかけずにはいられない。
だが、赤ちゃんは、まだ視力が弱いせいか、私には気づかないままだ。
そして、眠ることもなく、頭を動かしたり、自分の手を眺めたり、遠方に目をやったりしている。
だが、そのうちにその赤ちゃんの表情が気になりだした。
10分経っても、一度も笑顔を見せないのだ。
いや、笑顔どころか、表情に変化がない。
とうとう、浦和までの30分間、母親が隣にいながら無表情のままの赤ちゃん。
こんな光景に出くわしたのは初めてだった。
一体、この子には、「嬉しい!」という感情を抱く瞬間があるのだろうか?
「きゃっ!きゃっ!」と、嬉しさの叫び声を挙げる時があるのだろうか?
この子は、いつ、「嬉しい!」という強烈な感情を体得するのだろうか?
「日本赤ちゃん学会」事務局長の中央大学教授・山口真美氏は、
氏の著書『自分の顔が好きですか?』(岩波ジュニア新書)の中で、
赤ちゃんの視線の発達について、次のように語っている。
生後5か月の幼い乳児では、横顔を見ても顔を見る脳が反応しないことがわかっています。(p.84)
つまり、目と目を合わせる顔と視線が、赤ちゃんをひきつける最大の魅力といえるのです。(p.84)
赤ちゃんの注意が、お母さんの目から離れて外界へと移るのは、いつ頃でしょうか。
生後6か月になると、注意は視線の先へと進むようです。
相手が見ている対象を気にしだすのです。
赤ちゃんの興味の対象は、鳥のように目そのものではなくて、目から離れていくのです。
それは動物から人への進化を示すような、劇的な変化ともいえましょう。(p.89)
生後9か月頃になると、親と子で互いにひとつのものを見つめ合うようになるのです。
お母さんの視線の先に注目し、そこに新しい玩具があったり、お菓子があったりするのに気づき、
その対象を確認しあうことができるのです。
ひとつの世界を互いの視線によって共有することは、
人間だけが持つ共通の認識世界を生み出すこととなります。(p.90)
やがて「視線の先」から「指の先」へと、認識世界の共有は移行します。
指さしを通じて、一つひとつの物体を互いに確認しあい、「これがお母さん」「これがマンマ」と、
言葉を教えることができるのです。
人類だけが持つ「言葉」の獲得へとつながっていくのです。(p.90)
「スマホ育児」に警鐘が鳴らされているが、
改めて、赤ちゃんと目で語り合うことの大切さを痛感させられた時間となった。
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