9月29日、やっと「全国学力調査」結果が発表されました。
例年なら、8月末に発表となるのですが、今年は採点に関わった業者に集計ミスがあったため、遅れたようです。
小6生と中3生合わせた約209万人を対象に、53億円をかけた大規模な調査です。
これだけの規模で、しかも毎年実施する必要性が、どこにあるのか?
私には、どうも納得できませんが、調査内容と結果には関心があり、今回も小学6年生の結果をさあっと見てみました。
以下、算数の結果について、私なりに気づいたことを、書いてみたいと思います。
(国語・算数それぞれ、A問題は基礎的な知識を問うもの、B問題は活用的な場面を問うもの。)
「割合」に関する問題の正答率
毎年、「割合」に関する問題の正答率が低いので、今年は一体どうだったのか、気になりました。
昨年は、B問題で1問出題。
B問題全体の平均正答率・45.2%に対し、「割合」の問題の正答率は、13.4%。
図形の問題の正答率12.6%につぐ、低さでした。
今年は、A問題で出題。基礎的な知識として出題されました。
このアとイに入る数字を、20・80・100・120 の4つの中から選ぶ問題です。
やはり、A問題の中では正答率が一番低く、51.2%でした。(A問題の平均正答率は77.8%)
式の意味を説明する問題の正答率
B問題で、正答率のワースト3は、いずれも「記述」問題でした。
全13問中、記述問題は4問です。
B問題全体の平均正答率は47.4%ですが、
この「ワースト3」の正答率は、 7.0% 15.8% 25.0% 。
なんと、1桁正答率が出てしまいました。
「正答率7.0%」の問題は、こんな問題。
三角定規2枚で左下のような二等辺三角形を作り、それを3組使って、右下のような正三角形を作る場面です。
続けて、正答率「ワースト2」の問題も紹介します。
40m走のそれぞれのタイムをもとに、40mハードル走の目標タイムを設定する場面です。
ここまでの説明部分を読んだ上で、上の式にある「0.4」という数字は、どのような時間を表しているか、説明するのです。
立式の意味を説明することが苦手
ここで紹介した2問に共通していることは、「立式の意味を説明する」ことです。
*正三角形の問題で、一番多い誤答は、(「360」も「120」も説明できているのに)「360」は
「120」のいくつ分になるのかを求める式であることが、説明できていないものだそうです。
代表的な誤答例は、こんな感じです。
「360は1回転した時の角の大きさです。120はイの角の大きさです。」
式の中の「÷」という記号が、どんな意味を持っているのか、説明できないのです。
*40mハードル走の問題は「0.4」という数字が、何を表しているのかを問われています。
「0.4(秒)×ハードルの数」を言語化することが問われているのです。
例えば、次のような掛け算場面だったら、どんなふうに考えますか。
・「1.5(L)×ジュースパックの数」という式の時、「1.5」という数字は
何の量を表していますか?
「1.5(L)」だけを見ていても、液量だということは分かりますが、具体的に何の量なのか分かるはずがありません。
「×ジュースパックの数」に目を向けて初めて、「1.5Lは、1パックに入っているジュースの量だ。」と分かってくるのです。
ですから、掛け算の式は「(一つ分の数)×(いくつ分)」として成り立つことが、分かっていなければなりません。(一つ分の数)、(いくつ分)という算数用語を知ることは、そのためにも大切だと思えます。
(私自身は、教科書にある「一つ分の数」という表現には批判的です。「L」「m」「g」等、単位量を扱った乗除算の出てくる高学年の内容までを見通すなら、「一あたりの数(量)」という表現にするべきです。)
40mハードル走の場合だと、(ハードル1台あたりに「0.4(秒)」増える)という言語的な理解ができるかどうかです。そして最後に、「1台のハードルを飛び越えることで増える分の時間」という理解に落ち着くのではないでしょうか。
算数は、数少ない抽象化された記号(数字・=・+・ー・×・÷など)で問題を処理する教科です。立式する際に、いちいち言語で考えてから・・・というふうにはなりにくい教科だと思います。つまり、直感的に立式することが多いのです。
そして、なぜそうした立式をしたのかという説明は後から言葉として出てくるのです。
それだけに、子ども達に立式の意味を説明できるような力を育てるには、教師の側に、意識的な指導の視点が必要だと思われます。
私の知る限り、子ども達の多くは、掛け算の式を言葉で言えたとしても、「(かけられる数)×(かける数)」という表現が殆どです。
おそらく、学校で、掛け算を「計算」として扱う場面が多いのでしょう。
「かけられる数」「かける数」という言葉だけが耳に残っているのではないか、と思えるのです。掛け算九九を暗唱するなら「(かけられる数)×(かける数)」で良いのです。
しかし、掛け算を現実の現象に適用してゆくなら、「(一つ分の数)×(いくつ分)」という認識が不可欠になります。
今回の算数B問題に表れた、子ども達の「学力」は、何か特別の対策をすることを求めているのではありません。
通常の学習時間の中で、文字通り、いろいろな場面に掛け算・割り算を適用して考えていく学習を原則的に進めていくことが大事だということを教えてくれていると思うのです。
児童文学で人間力を育てる よしだ教室 HP:URL http://www.yoshida-kyoushitsu.jp/
無料体験授業、随時受付中!
お申し込みは電話かメールでどうぞ。
☏048-799-3363 ✉yoshida-m@ac.auone-net.jp
2016年度の設置コース
*小1国語算数コース 毎週火曜日 *小2国語算数コース 毎週金曜日
*小3国語算数コース 毎週土曜日 *小4国語算数コース 毎週水曜日
*小5国語算数コース 毎週火曜日 *小6国語算数コース 毎週木曜日
*中学生のための読解・記述コース 隔週土曜日
小4国語教材の児童書 小5国語教材の児童書 小6国語教材の児童書