El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

El Despacho Desordenado ~散らかった事務室より~

2015年1月4日から「Diario de Libros」より改名しました。
メインは本の紹介、あとその他諸々というごっちゃな内容です。
2016年4月13日にタイトル訂正。事務机じゃなくて「事務室」です(泣)。

もし、本ブログ記事内で張られたリンクが切れていてつながらない場合はコメントでお知らせください。コメントは全ての記事で受け付け、かつ即公開される仕様ではございませんので、気兼ねなくお教えいただければ幸いです。どの記事でも構いませんが、当該記事にコメントをつけていただければありがたいです。

こんにちは。歳食ったせいか時間感覚が最近おかしくなっている、エドゥアルド・ルイスです。おかげでこのツイタチに投稿した先月買った本リストの文面がひと月ずれてるのに「投稿する」ボタンをクリックしてから気づいて2度も修正する羽目になり散々でした。体のあちこちに不調出てきてるし、そうこうしているうちに伊勢神宮の式年遷宮も10年切ったって聞くし、何ともはや。

そんな私は、金田一少年の20年後を描いた『金田一37歳の事件簿』との相性が案外いいのかもしれません。

 

少年時代に3度も殺人事件に巻き込まれた歌島を20年後、婚活ツアー遂行の仕事で訪れた金田一一37歳。そこで(案の定)2件の殺人に出くわしますが、残された手がかりからトリックを暴いていきます。剣持元警部(嗚呼懐かしや!)から警察の内部情報を手に入れた彼は、後輩の葉山まりんからある素朴な疑問を打ち明けられたのをきっかけに当初推量していた犯人像をガラリと変えつつ、決定的な証拠を探そうとシャンデリア落下殺人の起こった現場に向かうのですが……。

 

一(はじめ)「…そうか… だったんだ」

まりん「え? 逆って…どういうことですか? 金田一主任」

一「どうしよう葉山くん…」

(p.19)

 

この直後、次のページまるごと一コマで『37歳』シリーズを特徴づける決め台詞が続き出版社側からもプッシュされていますが、私としてはここに引用したはじめちゃんの最初の台詞を強調したい。シビれました。難解なパズルに最後のピースがはまったかのように、残された手がかりから事件の全体像が彼の脳内で再構築された瞬間を垣間見たような。古くからのファンも同意していただけるのではないでしょうか。ここから彼自身の口よりその事が宣言されるまでのわずかな時間、タメとも言うべき一瞬が、推理漫画としての『金田一一』シリーズ一番の見せ場と言えましょう。こっからなんですよねぇ。20年後、そして擦れた21世紀前半の世相がモロに出てくるのが。

 

『金田一少年の事件簿』シリーズは、それ自体パロディの側面があります。昭和の名探偵・金田一耕助の孫という二次創作的かほりのする主人公からしてそうです。横溝正史先生は金田一一を認めてなかった?そらそーだ、発表前に亡くなったんだから。ここで今取り上げている37歳の事件簿は、自身の少年時代もパロディ対象にしている点がさらにおかしみと深みを増しています。

世に出回る推理モノの事件、特に殺人は計画性の高いものが多いです。特に昔の伝承や創作をなぞって殺害方法や現場に工夫を凝らし当事者をさらなる恐怖に陥れる劇的な見立て殺人ともなれば備品を外から持ち込むところからコツコツ準備するのが普通です。が、今回の“ファントム”はその場にあったモノだけでやってのけてます。一流シェフは手元の材料から優れた料理を作るといいますが、行った先に転がってるブツからアリバイトリックを即製して2人殺すとか、手慣れすぎてて嫌すぎる。

あと、動機ね。私が今まで見聞きしてきた推理モノでもかなり短絡的な部類に入ります。荒んでるなあ。20年前はこうじゃなかったよ。犯人達は聞くも涙の晴らせぬ怨みを抱いて、知恵の限りを絞ったトリックを使って復讐殺人をして、はじめちゃんに見抜かれたら自殺なりなんなりして殺人犯なりに自分のしたことにケリをつけてたよ。それが今じゃあんな軽い理由で人を殺めるとか、ハァ、昔は良かった……良くねえよ、あの頃は事件一回起こるごとに軽く3、4人は死んでたぞ。

終盤、はじめちゃんは関係者を一堂に集めて謎解きを披露しようとするのですが、やってきたのは全身黒ベタの犯人だけ。ああいう場面ってポワロのドラマでも見ますけど、よく考えたら犯人も他の人も素直に顔出さないよなぁ。皆さんだったら行けます?殺人犯がうろついてる孤島で唐突に集まってくれと探偵みたいにふるまってる赤の他人に言われて?

そして謎解きが披露された後キレた、いやキレ切った犯人が、はじめちゃんとまりんちゃんを崖に追い詰めます。船越英一郎さんも追い詰められたことはないんじゃないかなぁ。これもまた推理モノあるあるに対するキツいパロディですな。明智警視長が来なかったらどうなってたか……かなり思考飛びますけど、彼があの場にいたら甲斐峯秋さんももっと早く本土の病院に移送されたことでしょう。

 

反面、20年という時も変化を与えられていない奴もいます。覚えてるぞ、初登場した事件はアニメで見たことある。お前、体重不足からトリック見抜かれてそっから芋づる式に捕まってたよな?どんなトリックだったか忘れたけど! つーか一声も出さずに塀の外の手下に命じて失態を犯した弟子に死の制裁を加えるとかシンプルに怖い。

こんな彼との対話や、まりんちゃんと犯人しか居ない場で推理を披露するときにはじめちゃんの頭によぎったものが、徐々にではなく一つの事件が彼の心に決定的一撃を与え謎解きから遠ざけたことが示唆されています。シリーズ全体の隠し事として気になるところです。

 

37歳にして久しぶりに事件簿に加わったこの一件は、20年の時を経て変わったもの、変わってないものを古参新参の読者に確認させる役割を担っています。歌島という舞台はこの役割を更に補強していると言えましょう。

 

さて、そんな「歌島リゾート殺人事件」はここまで。“相性の良さ”から今後問題案件を回されることとなり職場のブラックぶり、更なる波乱の予感を改めて確認させられつつ、第2巻の最後から「タワマンマダム殺人事件」が始まります。被害者(予定)はタワマンマダムの1人、犯人はそのマダムを心底憎むタワマンマダム3人組。推理モノ業界で言う「ハウダニット」ですね。どす黒いものが渦巻き犯人の顔も黒ベタ塗りになるタワマンに、お隣さんの仕事のお手伝いという形ではじめちゃんは又しても何も知らぬまま飛び込みます。彼を先輩として以上に慕うまりんちゃんも合流するのですが、そうとも知らぬあの3人組はどう殺すつもりなのやら。にしてもはじめちゃん、有給はきちっと消化してるのか……そういうところは見習いたい。

 

 

¡Se me han resuelto todos los misterios......!

謎がすべて解けちまった……!)(p.20)

 

 

『金田一37歳の事件簿』(2)
天樹征丸(原作) さとうふみや(漫画)
講談社イブニングKC
高さ:18.2cm 幅:13.1cm(B6、カバー参考)
厚さ:1.3cm
重さ:158g
ページ数:191
本文の文字の大きさ:不定

こんにちは、エドゥアルド・ルイスです。寒いですね。さて、そんな当たり障りもへったくれもない枕から今年始め、2026年1月に買った本をさらりと紹介。

 

早速買い進めてしまいました。ミステリーである以上ネタバレはいつも以上に慎重にならねばなりませんが、いやぁ、20年の歳月を感じさせる部分と20年を経ても変わらぬ部分のコントラストが素晴らしいですね、

 

『金田一37歳の事件簿』(2)

『金田一37歳の事件簿』(3)

『金田一37歳の事件簿』(4)
天樹征丸(原作) さとうふみや(漫画)
講談社イブニングKC

 

 

 

去年から復帰したいと言っておきながら全然できてなかったのが、私の2025年の反省の一つ。復帰の糸口として購入した次第です。

 

『やりたいことから引ける! 鉄道模型Nゲージ テクニックバイブル』

SHIGEMON

成美堂出版

 

 

 

コーヒーは、様々な角度から読むこともできます。世界史とコーヒーの関わりをあらましからつかむため買いました。

 

『コーヒーでめぐる世界史』

増田ユリヤ

ポプラ社(ポプラ新書)

 

 

 

新聞は普段あまり読まないのですが、たまたま地元紙の書評欄で見てその日に出かけたついでに購入。“絶滅”なる用語、概念がいかにして生まれたかを、日米の二人の研究者が共同作業で綴っています。

 

『絶滅の発見』

マーティン・ジャナル、真鍋真

創元社

凡例:
月日
『本のタイトル』
作者、訳者など
出版社、レーベルなど
 

1月11日

『金田一37歳の事件簿』(1)
天樹征丸(原作) さとうふみや(漫画)
講談社イブニングKC

 

1月18日

『ボーイッシュ彼女が可愛すぎる』(1)
牛乳麦ご飯
スクウェア・エニックス

 

1月25日

『変な家』(6)
雨穴(原作) 綾野暁(漫画)
一迅社

 

1月31日

『あくまでクジャクの話です。』(5)
小出もと貴
講談社モーニングKC

こんにちは。性経験がない、エドゥアルド・ルイスです。大っぴらにこういうことを書くとまず周りから引かれますが(当たり前だ)、この状態はオスの行動を大きく左右します。ここから生物学的に結論付けられる事実を駆使して、我らが阿加埜さんが学校をまたいだ問題を強引に解決したエピソードが『あくまでクジャクの話です。』の第5巻に収められています。

 

二つの高校の男子生徒が集団でゲームセンターで人気の筐体ゲームを占領プレイしてるせいで小学生が遊べないと学校に苦情が舞い込む事案が発生。久慈先生は根津先生とともに御茶海高校代表として隣の高校の先生との指導方針のすり合わせ(と称した飲み会)のため居酒屋に向かうのですが、二人が良い雰囲気なのを察している阿加埜さんはそんなの絶対許せません。ここで取った策が、先んじて問題を解決して指導方針のすり合わせ(と称した飲み会)の必要性を吹っ飛ばすことでした。……どうしよう、理にかなっているのに強引にしか見えない。

 

早速ゲームセンターで高校男子の注意を三月ちゃんに仕掛けたガムテープパンチラで引き付けた後(これもヒドイ)、彼らにハツカネズミのオスが子ネズミを前にして取る行動にふたつパターンがあると語りかけます。一方は面倒見よく保育行動をとり、もう一方は噛みつくなど殺しにかかる。この両者の違いは、「メスとの性経験があるかないか」(p.74)。攻撃する理由として推測されるのは、子どもを自分の競争相手、またはメスが自分にかまってくれない理由、邪魔者と捉えるからか。いずれにしても、小学生でも引く行動形態です。

血筋関係なしに子どもに優しく接するオスがそうでないオスの5倍モテるという結果がゴリラで観察されています。こうした事実から逆算すれば、モテたければ子どもに優しくしろとなるわけですな。

 

阿加埜九音「ここまで話せばお前らが今どうすべきかは自明だな? それとも脳細胞が壊れるまでゲームに没頭して女という概念自体を忘れてみるか? 神はお前らに女は与えぬがゲームは与えてくれる」

三月羅美(相変わらず嫌な詰め方するなアカノちゃん…)

(p.78)

 

さて、ここで「神」が出てきました。実はこれも生物学で説明できます。「ミーム」、私もネットでの俗用しか知りませんでした。まさか生物学用語とは。

ミームは、生物の脳を介して広まるものです。そして遺伝子と同じく世に適応したものだけが残る特性があります。人類誕生以来楽曲も無数に生まれたはずなのにベートーヴェンの「運命」のように現代に伝わっているのはそう多くないのも、これで説明できます。昔の人も今の人もとらえるミーム、ただそのとらわれ方、人がミームに対して抱くものは違う可能性がある、つまり「その経緯や思いを一緒くたに見るのは本質的ではない」(p.135)点は注意すべきところ。

そんなミームの中で最も人類にウケたのが「神」である。だからこそミームの視点で古より京都に立つお寺や神社を訪ねることは生物学的に意義深いことである。だから久慈先生、急遽欠員の出た3年生(阿加埜九音もこの学年)の修学旅行の引率に立候補してください!……何なんだ、この強引極まりないのに説得力ある説明は!?

 

そんなわけで久慈先生は引率代打になり、さっそく下見に行きます。一仕事終えてから飲もうと、あることをきっかけに知り合った京都の男の居酒屋を訪れたのですが、その彼の口から九音・蕾夢姉妹の母親、奈沙理(なさり)の過去が明かされます。なんつー展開だ、それでいてSNSが手がかりとか有りそうで怖!となる間もなく、読者は久慈くんとともに衝撃を受けることになります。とりあえず、お母さんは単なるカッコウではなかったようです。女王様でした。

しっかしあのプロデューサーだかなんだか知らんあの長髪グラサンの上役、『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』から引っ張ってきたんでしょうが、AIだのミームだのにかこつけて“商品”として扱いやすくしようと両想いの二人を切り離したかっただけでは?と邪推してしまいます。今井むつみ先生も秋田喜美先生もそんなつもりで書いたんじゃないぞ!

 

それと、今更なのですが、表紙カバーの折り返しや各話の扉に九音さんと描かれた生物の絵がとても写実的で素晴らしいですよね。この骨太の画力で「この夏喜寿がまぶしいマリリンとの海」や多古溝さんのBL時代の漫画やジュディス様が生み出されているわけで、何というかその、イチイチ破壊力が高い。

 

 

¡Tú eres todo para mí!

(オレにはお前が全てだ!)(p.180)

 

 

『あくまでクジャクの話です。』(5)
小出もと貴
講談社モーニングKC
高さ:18.2cm 幅:13.1cm(B6、カバー含む)
厚さ:1.3cm
重さ:163g
ページ数:191
本文の文字の大きさ:不定

最近このブログで話題にしているBSテレ東の『あの本、読みました?』で聞いたホラーミステリー小説『変な家』へのお便りは小学生からも来ているとの編集者さんの発言には私も驚きました、とは『変な家2』の原作本を紹介するときにも書きました。

コミカライズ版もいよいよ「2」こと「11の間取り図」編に突入。始まりとなる第6巻は「資料① 行先のない廊下」全体と「資料② 闇をはぐくむ家」の最初を収録しています。

 

資料読込みに入る前の「私」と栗原さんの会話はコミカライズ版オリジナルの要素もあって読みごたえがあります。栗原さんは、まぁ文句言って良いと思います。ラスト、けっこうストレートに書いてましたからねぇ。髪についてはもうちょっと言い方あると思いますけど!

それにしても、寄せられた情報が100以上! 丹念に調べていく中で「11個ひとつなぎの謎が抽出(ドリップ)された」(p.22、()中フリガナ)わけなのですが、改めて見ると前日譚と片づけるには多すぎます。整理された資料を携え栗原さんのアパートにたどり着くまでの途方もなく膨大な過程で「私」によぎった“家”をめぐる問いは続くことでしょう。

 

さて、本編の資料①の冒頭で「私」本人の驚きがビジュアライズされていたのはとても良かったです。まぁ、素直にギョッとしますよね。かなりおどろおどろしい、およそ小学生に読み聞かせるのはためらわれる内容ですもんね。まさかそこからあんな悲劇が浮かび上がるとはねぇ。

終盤で明らかになったイイハナシからの、急転直下。改めてマンガになったものを読むと、根岸弥生さんの味わった落差は計り知れません。

栗原さんの補足とともに「減築」という耳慣れない用語の一例が子どもの絵レベルの線画でシンプルに表されていたのがありがたかったです。2階から1階に、は確かに現実的。階段の上り下りって年食うときつくなりますからね、ホームエレベーターは高嶺の花だし。でもなんで元から平屋の、その部屋を? 絶望に限りなく近い戸惑いを浮かべる「私」の表情の作画、とても質が高かったです。

 

資料②は、本編前の説明でウっとなってしまいました。「特殊清掃」なる単語は痛ましいニュースを通じて少しずつ知られるようになってますが、具体的な一例を画像にして一般に流布できるのがマンガの強みというかなんというか。孤独死から何か月も放置されてできた遺体のシミの上の白い物体群を見て、「火垂るの墓」を思い出してしまいました。主人公二人のお母さんが搬出されるシーンです。20年は観ていないはずなのにあのボトボト、ウニョウニョは記憶にこびりついています。

その点、本題の事件は起きた直後でそんなの涌いてないから大丈夫、なわけない。体は壊しても「人様あっての家」(p.158)という師匠の教えは忘れていない元大工で特殊清掃業の飯村達之さんもきつかったと語る清掃現場、その間取りは改めて見ても酷いの一言。収納と動線はトレードオフとは一級建築士の船渡さんが書かれた新書ですが、動線を扉のない部屋の上に設定してその行き止まりに収納を設定する、トレードオフどころかプライバシーも潰された間取りは手直しのしようがありません。

でも間取りが悪いからってあんな事件起きる? こんな「私」の疑念はごもっとも。上の話はあくまで前提、問題はそこに誰が住んだのか? 原作紹介するときも書きましたが、11ある間取りの中でコレが一番実在しそうなのが、まぁ怖い。報道記者は今後事件を調べるときに間取り図を切り口にしたらAIよりはマシな記事を出力できるかもしれません。

 

最後に話が突然変わるんですが、コミカライズ版の栗原さんってグルメだよなぁ。これから資料一つ読み終えるたび、もう10カ所分の名物を思い浮かべるんでしょうか。具体的な地名が伏せられていた前作と異なり今回は実在する地名が上がっているだけにおいしそう、ってヨダレ垂らしてる場合じゃないんだよ、これが後々効いてくるんだよ、って伏線みたいに言うんじゃねえよ、小川哲さんに眉ひそめられっぞ!

 

 

¿Qué es la "casa"......?

(“家”って……何なんでしょうね)

 

 

『変な家』(6)
雨穴(原作) 綾野暁(漫画)
一迅社
高さ:18.2cm 幅:13.3cm(B6、カバー含む)
厚さ:1.6cm
重さ:198g
ページ数:195
本文の文字の大きさ:不定