「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」
98分 日 1984年
監督 押井守
製作 多賀英典
原作 高橋留美子
脚本 押井守
音楽 星勝
撮影 若菜章夫
出演 古川登志夫 平野文 神谷明 杉山佳寿子 島津冴子
鷲尾真知子 田中真弓 千葉繁 ほか
目覚めても、夢の世界。★★★★★
〔ストーリー〕
あたるの通う友引高校は、本番を明日にひかえて文化祭の準備に大わらわ。
だが、翌日になってもやはりあたるたちは文化祭の準備をしていた。実は友引高校のみんなは同じ日を延々と繰り返していたのだ。
事態に気付いた担任の温泉マークと養護教諭・サクラは原因を究明しようとみんなを下校させるが、無事帰り着けたのはあたるとラムだけ。みんなは何度帰ろうとしても、友引高校に戻ってきてしまうのだった。
その後も異変は起こり続け・・・。
押井守、脚本監督作品。
押井監督の原点であり出世作だそうで、作品の評価が高いとの事。
よくわかる(笑)
「1」の「オンリー・ユー」と、この「2」は全然違う(笑)
「1」は「うる星やつら」として成功しているんだと思うけど、「2」は押井作品として成功しているんだろうな。
ただ、「うる星やつら」である必然性がないというか、「うる星やつら」でない方がかえって良かったんじゃないかとも思ってしまう。
全編をつらぬく異様な雰囲気は冒頭から濃い。
「機動警察パトレイバー the Movie(1989)」ではカラスだったと思うけど、鳥を使った演出が鋭敏。
真っ青な空と真っ白い入道雲、そこを切り裂くカモメが廃墟と化した友引町へと視線を導いていく。
破壊された町を背景に能天気に遊ぶラムちゃん達とぼけ~と呆けるあたる。
この冒頭のシーンがこの物語のすべてを語っているようだ。
闇にそびえ立つコンクリートのかたまりと、寒々しくこうこうと照らされる電光。
人けのない、もしくは心がない街と、しかしあふれる物と情報。
押井監督の中にある、この無人の街のイメージは何なのだろう。
「機動警察パトレイバー the Movie」において、真夏に刑事たちが天才プログラマーの足跡を追い木造アパートを訪れる。
町があっても人の気配がない、その異様で砂漠のような荒涼とした世界。
今回はさらに、そこに身をおく事の違和感も語られる。
おかしいのはこの世界なのか、自分なのか。
同じ日が繰り返されている・・・、その事に気づいた温泉先生が消えてしまう。
錯乱坊やしのぶも消えていく、そして町から人がいなくなる。
異常なことが徐々に起こり始め、その世界が壊れていく展開は近年のサイコホラーにも通じたものがある。
あたる達がいる友引町は、実は妖怪・夢邪気が作り出したラムちゃんの夢の中である事がわかる。
その夢を妖怪・獏が呑み込むシーンは圧巻!
すごい!!
現実が、世界が崩壊していくその描写は本当にキョーレツ!!!
「マトリックス(1999)」は実際、こっちの影響があるんじゃないかなと思ってしまう。
クライマックスの、あたると夢邪気のバトルからラストへの展開はテンションも高く
一気に走り抜ける爽快さがすごく気持ちよかった。
そのドタバタの中で語られる温泉先生や夢邪気、さくら先生の長いセリフがとても押井作品らしい(笑)
現実と虚構、自分と外の世界とのあいまいさと不確実性。
現実を生きていると思っている自分こそ夢の中にいるのでは・・・。
人間の知覚あってこその時空であり、人間そのものがあいまいなのだから時間と空間が(人間の中で)正確に存在し得るわけがない。
ただ気づいていないだけで、もしくは気づかないフリをしているだけで、同じ時をただぐるぐる回っているだけではないのか。
事の真相に感づいていた、あたるを現実へと呼び戻したものは、やはりラムちゃんへの愛だった。
夢邪気に自分の夢であるハーレムを作らせるが(笑)、そこにラムちゃんがいない事を知り完全な夢の世界でない事を悟る。
すべての美女美女が好きであると同時に、またやはりあたるはラムちゃんが大好きなのだ(笑)
ラムちゃんの純粋さに惹かれていた夢邪気は、あたるのそのハレンチな身勝手さに激怒するが、観ているこっちは爆笑。
たくさん登場する主要キャラクター達がとにかくよく動くし、学園祭を準備する学生らのモブシーンの画面も濃厚。
「うる星やつら」を知らなくても、十二分に楽しめる痛快作。
素晴らしい映画。