「アナと雪の女王 Frozen」
102分 米 2013年
監督 クリス・バック ジェニファー・リー
製作 ピーター・デル・ヴェッチョ ジョン・ラセター
原案 ハンス・クリスチャン・アンデルセン
脚本 ジェニファー・リー シェーン・モリス
編集 ジェフ・ドラヘイム
音楽 クリストフ・ベック
出演 クリスティン・ベル イディナ・メンゼル
ジョナサン・グロフ ほか
【完全ネタバレ】
女王様の壮大な逆ギレ。☆☆☆★★
〔ストーリー〕
アンデルセンの童話「雪の女王」をヒントに、王家の姉妹が繰り広げる真実の愛を描いたディズニーミュージカル。
触れた途端にそのものを凍結させてしまう秘密の力を持つ姉エルサが、真夏の王国を冬の世界に変えてしまったことから、姉と王国を救うべく妹アナが雪山の奥深くへと旅に出る。
本作は、第86回アカデミー賞長編アニメ映画賞、歌曲賞や第71回ゴールデングローブ賞アニメ映画賞ほか第67回英国アカデミー賞アニメ映画賞ほか受賞。
日本での興行収入は、253億円(2014年7月23日時点)を突破。
『ハリー・ポッターと賢者の石』を上回り公開128日間の速さで日本歴代3位、世界歴代5位となり記録的な大ヒット、アニメーション映画としては世界歴代1位。(ウィキペディアより)
観ていて20分を過ぎても、あんまり入り込めなくてあせった。
置いてけぼりを食ったまま終わった感じで残念。
これがそんなに売れまくったのか。
宮崎駿監督作品の中で最も成績が良いため代表作が「千と千尋の神隠し(2001)」だと語られる時があるから、そんなものかな。
「タイタニック(1997)」や「アバター(2009)」などがそうで、本作もめちゃ売れて大好きな人がいる一方悪く言う人も結構いるようで。
何故ハマれなかったのかなぁ。
ディズニー長編アニメ史上初の女性監督による作品だそうで、ジェニファー・リー監督は他に「シュガー・ラッシュ(2012)」の脚本、本作では原案も。
「シュガー・ラッシュ」は大好きなのに。
正直、同じ脚本家とは思えないクオリティの違い(笑)
結論としては、僕が男だからハマれなかった、とした。
この成績に貢献したのはおそらく女性たちで、この映画はチックスムービーなのだと考えることにしちゃう。
湖の氷を切り出す冒頭のシーンをはじめトロールの登場や予言、メインキャラクターが女王や王子といったところが童話らしくディズニー作品らしい。
ミュージカル色が濃くてここまで劇中歌が多いのは、最近の作品ではあまりなかったはず。
歌曲シーンが多いためストーリーが薄くなっちゃったのかなぁと思う。
102分か、短くもないな。
やっぱり雪の女王・エルサに感情移入出来なかったのが大きい。
さすがすごい、冒頭10分くらいでエルサの魔法の力とそれがもたらすもの(予言)と妹アナのキャラクター、二人の関係と心情、両親の死と、いとも簡単に短時間でムダなく見事に説明してしまう。
ただここがあまりに整然としすぎているのか、どうもエルサとアナ二人の心情を強く感じる事が出来なかった。
エルサは雪や氷を生み出す魔法の力を持っていて、その力で幼少時、妹アナを傷つけてしまう。
「私は呪われた存在なのか。」
その後彼女は誰も傷つけないよう妹とも距離を置きずっと閉じこもっていた。
唯一の理解者である両親が死に、彼女の孤独はさらに深まる。
彼女のこの孤独感や長年の抑圧された感情のタガがはずれ「Let It Go」と開放されるワケだけど、どうも感情移入できなかったなぁ。
え、ここでもうこの曲なの?と驚いた。
ディズニー・スタジオだったらあと2、3分あればめちゃめちゃうまく演出するだろうに。
もったいない。
狼のチェイスシーンなんか、あんなの本当はいらないんだろうに。
山男クリストフがヒーローとして機能してないんだから(笑)
氷で作られた寒々しい孤独の城でエルサは、トロールが予言したとおり恐怖や不安にかられダークサイドに落ちそうになる。
ここも、もうちょっとエルサが悪になっちゃってもよかったのになぁ。
エルサという主人公がダークサイドに落ち、ヴィランとなってしまう過程をもっとしっかり描いて欲しかった。
事故でもいいから、もう両親を殺してしまうとか。
アナにしたように、氷の像にしてしまう、とか。
国民もみんな氷にしてしまえ(笑)
エルサは触れる物を凍らせてしまう魔法を持つ。
そして、アナはそんな姉を無条件に慕い想う、愛という魔法を持つ。
クライマックス、アナはエルサを助けるため自身を犠牲にし氷の像となってしまう。
そして、この愛にエルサの心は溶解する。
どうもエルサの立ち位置が中途半端。
夏の王国を氷で包むという大迷惑をかけつつトンズラし、「Let It Go」と逆ギレソングを歌い上げる。
氷の城を作り上げひきこもり、二人で解決しようと説得に来た妹にも耳を貸さない。
ただ人を殺せるほど残酷でもないし、実際ヴィランは他国の王子ハンスだ。
う~む、全部エルサに背負わせても良かったんじゃないかなぁ。
そもそもアナも閉じこめられる必要はなくて太陽の下で活発に育ったアナと、閉じ込められ日陰で育った少し陰鬱なエルサとはっきり対比させても良かったのに。
それじゃ、ベタかなぁ。
実際そう描かれているのかも知れないけど、それを感じる事が出来ない。
ただアナは鼻元だけでなく肩にもそばかすが描かれていて、細かいなぁと笑ったけど(笑)
そばかすって日に当たらなくてもできるのかな。
もう、男なんかいらないんだと思う(笑)
王子ハンスも山男クリストフもはっきり言って必要ないもん。
女性それも長女の悩みや葛藤、もしくは妹への嫉妬を含めた複雑な感情を描いた作品でキャメロン・ディアスが出演している「イン・ハー・シューズ(2005)」ていうのがあったけどあれに近い気がする。
僕にはよくわからん(笑)
道化でマスコットの雪だるま、オラフの登場に随分助けられた。
こういうキャラクターを作るのがやっぱりうまいよなぁ。
アナはエルサを探しに旅に出、山男のクリストフに出会う。
そこへしゃべる雪だるまのオラフが登場するんだけど、アナが「キャーッ」と叫びながらオラフの頭部を蹴っ飛ばす。
大爆笑してしまった(笑)
暴力と笑いは紙一重、いや痛快。
また、オラフはつららに自身を突き刺してしまいながらあっけらかんと「突き刺さっちゃった」と言ったり、テーマである「愛っていうのは、自分より相手のことを大切に思う事を言うんだ」と臆面もなく言っちゃう、なんか幼児の無垢な感じというかこう反論できない真っ直ぐさを持つキャラクターですぐ好きになってしまう。
そのオラフがつららを望遠鏡のようにするシーンがあって面白かった。
実際そうはならないにしても一回やってみたい(笑)
ディズニーやディズニー・ピクサーのすごいところはおそらくしっかりとテーマを持ってチャレンジしているところ。
「モンスター・インク(2002)や「塔の上のラプンツェル(2010)」では髪や毛並みを「ファインディング・ニモ(2003)」では水や海を、とそれらをどう描くかをソフトの開発を含めて一つ一つ明確にクリアしていってるんだと思う。
そして今回はやはり、雪や氷。
とりわけ、氷の表現はキョーレツ。
冒頭の湖の氷を切ったり割ったりするカットをはじめ、エルサの作り上げる氷の城の質感やアナが転び突っ込む柔らかそうな雪やその舞い方、クライマックス吹き荒れる吹雪ともうすごい。
この映画は何といっても「Let It Go」のシーンが全てで、このシーンを生み出しただけで意味があるんだろうな。
こういう物を世に残せるのが、本当にうらまやしい。
雪が降る中、一人雪山を歩くエルサ。
米粒程の彼女を空撮というか鳥目で撮らえながら、彼女を中心に円を描くように正面アップまでぐ~と回り込む。
またその緩急がもうすごい。
舞い落ちながら光を反射するあの降雪の描写は、おそらく手書きでは無理だと思う。
すごいな、あれ。
そして彼女の心を表すように雪は止み夜空は晴れ上がり、氷の橋を作り上げ峡谷を飛び越える。
その後、グッと夜空を見上げバンッと地を踏み込み見得を切る。
足元に大きな雪の結晶が出来上がり、それを撮らえるためカメラがぽんと空へ跳ね上がる。
実写では不可能だろう映像が洪水のようにやってくる。
もう圧巻。
カメラワークでは、ピクサーの「レミーのおいしいレストラン(2007)」が衝撃的でよく覚えているけど、このシーンもホント心が開放される。
女王である証のティアラをオラッと左手で投げ捨てる、その表情の可愛らしさと力強さ。
エルサが作り上げた氷のゴーレムにアナが雪玉を投げる時、これも左手で投げるがこの辺はうまいなと思う。
「Let It Go」の一節にこうある。
「You'll never see me cry.」
そうか、涙が足りないのかも知れない。
いつもエルサは一人で泣いていて涙を拭おうとすると凍ってしまうとか。
だから父親がいつもやさしく拭いてくれていた、みたいな・・・。
前半の色にあふれた王国や城内と、後半の白銀と灰色に染まるそれらの対比もさすが。
始まってすぐ雪の結晶が、花開くように出来上がっていく様子が提示されるけど、ホント綺麗ですね。