「斬る」
71分 日 1962年
監督 三隅研次
原作 柴田錬三郎
脚本 新藤兼人
音楽 斎藤一郎
撮影 本多省三
出演 市川雷蔵 藤村志保 渚まゆみ 万里昌代
成田純一郎 丹羽又三郎 ほか
【完全ネタバレ】
不幸な剣。☆☆★★★
〔ストーリー〕
出生に秘密を抱える小諸藩士の高倉信吾は、藩主の求めに応じて水戸の庄司嘉兵衛と立ち会い“三絃の構え”で嘉兵衛を倒した。
数日後、養父の信右衛門と義妹の芳尾が池辺親子に斬殺されたことを知り、信吾は二人を国境に追い詰め討ち果たす。
江戸に出た信吾は千葉道場主栄次郎と剣を交える。栄次郎は信吾の非凡さに気づき、幕府大目付の松平大炊頭に彼を推挙した。三年後、信吾は大炊頭とともに取り締まりのため水戸へ向かうのだったが…。
正直、なんだかわからない(笑)
その閉幕に一瞬、唖然とした。
冒頭、主人公・高倉信吾の説明にぽんぽん時間が飛び展開が早い。
なんか昔話を見ているような気になる。
飯田藩江戸屋敷の侍女、藤子は家老の命をうけ殿の愛妾を刺す。
この侍女の息子が主人公・信吾で密かに小諸(こもろ)藩・高倉家の養子となり一流の武士に育つのだった。
何というか、日本という感じ(笑)
日本映画だ。
信吾は三年間の旅に出る。
その際、その理由として口にするのは「なんとなく・・・」
養父・信右衛門も「そうか、なんとなくか・・・」
義妹・芳尾は「兄だけ・・・、うらやましい」とすねる。
それは武者修行だったのだが、それを口にする事はない。
旅はどうであったかと聞く芳尾に信吾は「野を見、山を見、蝶を見た。」とにごす。
ある日、小諸藩にやって来た水戸の剣客・嘉兵衛との練習試合が行われるが、ばたばたと藩士が倒される。
藩主は最後の砦として信吾を立ち会わせ、信吾は「三絃の構え」で見事破ってみせる。
信吾は元々予定されていたワケではなく、殿に言われるまま肩衣(かたぎぬ)を脱ぎ用意をする。
無言のまま木刀ではなくスッと真剣を抜くが、嘉兵衛もただそれに応える。
日本では、大事な事は本当のことは言わない、見せない。
再び旅に出た信吾、ある日旅籠で追われる侍に彼の姉・佐代の安全を頼まれる。
が、この姉は弟を逃がすため自身を犠牲にするのだった。
その際、佐代は全裸となって刺客たちを惑わせ時間を作るが、密命を果たし散った母・藤子、嫉妬から斬殺された義妹・芳尾、そしてこの佐代のイメージがごちゃまぜとなって信吾の中で「死の覚悟」となる。
裸の女性の胸元にス~と鮮血が流れるイメージがそれなのだけど、幻想的でもないしセクシーさもいまいち。
画がちょっと弱くて迫ってこなかったなぁ。
全編を通して、さばさばした展開と歌川広重作品のような極端な構図や
セルジオ・レオーネのようなクローズ・アップが印象的。
その後、信吾は幕府大目付・松平大炊頭(おおいのかみ)に仕えるようになる。
水戸に入った大炊頭と信吾は騙し討ちにあい、大炊頭はまんまと殺されてしまう。
その遺体の横で信吾は切腹し果てる。
「終」
えぇ~(笑)!!
それで終わり!?
仇を討つでもなく、絶命した大炊頭に「申し訳ありません」と頭を下げ、切腹してしまう。
うそ~ん。
剣客・嘉兵衛や佐代の弟と再びめぐり合い、立ち会う事になり殺陣はあるんだけどなんとも・・・。
佐代の弟が刺客に囲まれて大立ち回りをやるが、このシーンは見ごたえがあったけれど。
ただここで信吾は助太刀するワケでもなく、まんまと頼まれた姉を殺させてしまう。
一流の剣士も時と場所を与えられねば、意味がないという事か。
よくわからない。
殺す事よりも近しい者を殺される方が多かった不幸なマザコン剣士が生き死んだという物語(笑)
そのまま人の一生ではあるんだけど、必殺の「三絃の構え」が大爆発する事もなく、物語としてとてもさみしかった。
主役、市川雷蔵を見るための映画なのかな、よくわからない。