「吸血鬼ゴケミドロ」
84分 日 1968年
監督 佐藤肇
製作 猪股尭
脚本 高久進 小林久三
音楽 菊池俊輔
撮影 平瀬静雄
出演 吉田輝雄 佐藤友美 北村英三
高橋昌也 高英男 加藤和夫
金子信雄 キャシー・ホーラン ほか
【完全ネタバレ】
ちゃちいけど、すごい。まさに日本!て感じ。☆☆☆★★
〔ストーリー〕
旅客機が空飛ぶ光体と遭遇し計器が狂い岩山に不時着した。乗客たちはからくも一命を取り留めたが、乗客の一人は吸血宇宙生物ゴケミドロに身体を乗っ取られていたのだった・・・。
松竹の怪奇特撮映画。
模型飛行機やちゃちいメイクが楽しい。
ウィキで見ると、タランティーノ監督はこの映画の大ファンで、「キル・ビル(2003)」の中でも本作へのオマージュを採り入れているそうだ。
「ウルトラマン(1966~1967)」とかが好きな人はこういうの大好きなんだろうなぁ。
冒頭の特撮に模型飛行機が墜落するところがあるけど、一部の人には名シーンなのかも。
とにかく、ストーリーが素晴らしいと思った。
「エイリアン(1979)」などでよくある、限られた空間において人間たちが何者かにより恐怖の極限状態に追い詰められながら、一人一人その何者かの犠牲になっていく・・・という展開で、すでにめちゃ完成度が高い。
墜落した旅客機で生き残ったのは、副操縦士、政治家、精神科医や宇宙生物学者、ベトナム戦争で夫を亡くした米国の未亡人と多彩。
自分たちがどこにいるのかもわからず水も食料もない中、ただ夜明けと救助隊を待つ。
しかし、少しづつそれぞれが冷静さを失いエゴをむき出しにし始める。
なんと言っても物凄いインパクトを持って迫ってくるのは、吸血鬼ゴケミドロに体を乗っ取られた殺し屋役・高英男(こう ひでお)のルックス。
ウッチャンナンチャンのウッチャンのコントで、歌舞伎役者が現代劇なのに濃いメイクと台詞回しでめちゃめちゃやるコントがあったと思うけどこれをヒントにしたのかなと思った(笑)
この高英男という人はシャンソン歌手で、シャンソンを日本に普及させた第一人者だそう。
映画出演作では、その個性からギャング役が多いという。
本作のDVD特典インタビューでは、衣裳は自前でなかなか費用がかかったと語っている。
「ゴケミドロ」は血液を常食とするアメーバ状の宇宙生物で、地球人の体を乗っ取り吸血鬼となる。
宇宙船(ベタな円盤型宇宙船)が登場しSF感が強いけど、人を襲う時は吸血鬼ドラキュラみたいになるというなんか変な感じ。
「ゴケミドロ」って何じゃと思うけど、ウィキによると
『この「ゴケミドロ」の名の由来はパイロット・フィルムを制作した、うしおそうじが京都でよく立ち寄るという「西芳寺」(苔寺=こけでら)と、「個人的に興味があった」という「深泥池」(みどろいけ)から着想した造語で、当初「コケミドロ」としたが、興行で「こける」は禁句なので、濁点を着けて「ゴケミドロ」としたものである。』
とある。
ホンマかいな(笑)
光のあて方がとても繊細でジャパニーズホラーは近年世界で大流行したけど、一朝一夕で培われたものではなく長い歴史があってこそなんだと思い知った。
暗闇の中浮かぶゴケミドロの顔などがとても不気味で楽しい。
襲ってくるゴケミドロから逃れ、副操縦士と女性フライトアテンダントは命からがら街へ逃げて行く。
が、すでに襲われた後で死体の累々を見ることになる。
しーんとしたゴーストタウンの異様さや絶望感は「猿の惑星(1968)」のラストシーンに似ていてカッコいいし、最後の宇宙船襲撃シーンや音楽は「マーズ・アタック!(1996)」を連想させる。
残念ながら画はちゃちいけど、やってる事は「すごいな、もうやってるのか」と驚かされる。
日本映画は実際、多彩なんだなぁ。