ロジカルシンキングという道具箱と『死の蔵書』その1 | 編集機関EditorialEngineの和風良哲的ネタ帖:ProScriptForEditorialWorks

「説得」は必ずしも「理解」を前提としません。


「納得ずく」なら「理解したうえで」と言えますが、「説得」は理解のないところでも成立します。


勢いとか、感情とか。つまり、極端な話、「泣き落とし」まで含むわけです(笑)。


仕事上のプレゼンテーションには、この「説得」が含まれます。


クライアントがOKを出してくれれば、プレゼンは成功です。


「ロジカルシンキング」という語は、この「説得」をスムーズに進めるための道具箱という性格を持っています。


だから、ちょっと、このネーミング、実はあまりスマートではないのです。


ロジック=論理は、レトリック(修辞)に含まれています。


それをわざわざ「ロジカルシンキング」と命名しているところがどうも好きになれません。


しかも、「習得しないかぎり、使えない」ものとされているところは、ますます好きになれません。


論理は、言葉を使えれば、いや、言葉の習得より早くから、すべての人の思考に生きて働いています。


特殊なものじゃないです。


論理的思考なら、多かれ少なかれ誰もがしていることです。


(日本の高校までの教科には「論理学」がありません。数学がボンヤリと(笑)代行しています。「帰納」とか、「証明」とか、「公理」とか、「集合」とか)。


さて、なぜ習得しないと使えないのか?


それは説得やプレゼンテーションの技術、その道具箱に「ロジカルシンキング」という名札を貼っつけたものだからです。


それなら確かに、場数を踏んだほうが身につきます。


しかし、「ロジカルシンキングを身に付けていない人と話していると、イライラしてくる」なんてことが、その手の本に書いてあったりすると、おいおいちょっと待ってよ、になります。


冗談じゃないです。イライラするのは、こっちです。


そういうロジカルシンキングの持ち上げ方をして鬼の首でも取ったような気になっている、「ロジカルシンキングを身につけた」という人にこそ、イライラすべきでしょう。


『論理哲学論考』を書いたヴィトゲンシュタインが、こういう「ロジカル」という語の使われ方を知ったら、烈火のごとく怒りはじめることでしょう(爆)


まあ、うまいツリー図を書くとか、要するにプレゼン的コミューニケーションには確かに役立つツールボックスなんですが、「思考」というものを甘く見てはいけません。


「思考」の基本は、対話です。


スラスラと流暢にしゃべるプレゼンテーターは、思考なんてしてません。プレゼンだからそれでいいのです。


ロジカルシンキングが、思考ではないかもしれない、もう一つの理由。


それはロジックのなかでも重要な働きである「推量」というものが、ほぼみじんも含まれていないことです。


いや、推量、推論の問題(レッスン)もあるにはあるのですが、「なぜ山に登るのか?そこに山があるから」というトートロジー(同義反復)の問題を解けないからです。


人は、同義反復で行動します。行動を起こしてもらうことを、目的とするのであれば、とっとと「そこに山があるから」という答えに導きさえすればよいのです。


「論理」の入り込む余地はありません。いやあるのですが、そこに至るまでに使われる論理というのは、結局「レトリック」なのです。


つまり、ロジカルシンキングは、道具としての目的を達成することによって、


自らの存在理由、根拠を、自己否定してしまうわけです。


ほんとにご苦労様です(笑)。


ただし、何度も言いますが、「説得力」のあるツリー図を描いたり、「説得力」のあるプレゼンテーションをするには、確かに便利な道具箱です。


しかし対話によって、新たな第三のものを生み出していくような、コラボレーションする思考ではありません。生きた論理力は、コラボレーションを前提にしたとき、初めて生き生きと働き始めます。




ダウン手を動かしてシンプルマッピングしているとロジカルシンキング+αしていることに気づきます。『A6ノートで思考を地図化しなさい』第2作のテーマは「速度を超える」読書術。シンプルマッピングって? という方は、ぜひこちらをお読みください。


編集機関のシンプルマップ的ネタ帖:ProScript for Editorial Works-シンプルマッピング

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