アジテーションする建物 | 小林一郎と歩く「ガード下」と「横丁」

小林一郎と歩く「ガード下」と「横丁」

「ガード下学会」「横丁・小径学会」活動の報告および、予定などをお知らせします。

アジテーションする建物
アーバンスケールの建築物は、社会、つまり世の中に対して、あるいは通行人に対して、メッセージを送り続けています。
その一つが、銀行建築。これは広い意味で金融機関と読み替えられます。
金融機関とは、基本、われわれから原資となる資金を調達して、資金繰りに困っている人たちに金を貸す――これが商売。
ということで、信頼できる企業でなければなりません。これは、安心感。
そして、昨日今日誕生した浮き世の企業では、今いいとしても、決して信頼できません。そこで、古くからやっている、つまり歴史性を兼ね備えていなければなりません。
と同時に、こうした、歴史性、安心性のうえに現代の資金力、豊かさ、厳かさなども求められ、また、そうしたメッセージを発したい、と考えるものです。
そこで、登場するのが銀行建築。実際に、そんな規定の建物があるわけではないのですが、おしなべて、共通するフォルムが形づくられています。
まず、歴史性、これはギリシャ、ローマの列柱、しかも数階をぶち抜いたジャイアントオーダーとよばれる大理石の柱の並べます(西洋ではルネサンス後期・1520年以降登場)。これが基本。なかには、現代風のふうのものでは、御影石をつかったり、円柱ではなくて、角柱を使ったりという設計者もいらっしゃいますが、基本構成となる列柱は銀行建築の第一義。
次ぎに欲しいのが荘厳さ。ということで、列柱のキャピタル、つまり頭柱飾りですが、ギリシャの国花・アカンサス(日本でいえばアザミです)を装飾性豊かにあしらいます。旧財閥の本社や生保本社などではこのアカンサスが飾られています。まあ、どこのものもみな同じアカンサス、と見えるかも知れませんが、これがなんと、結構仕上げが違うんです。いいかげんなものあり、芸術性をもったものもあり、といった具合です。
それに、建物自体のボリューム。通常われわれが過ごすヒューマンスケールの建築の範囲内では、「スゲーなァ、この建物」なん思いませんが、江戸の町割り(120m)いっぱいに建てた建築物はまさに巨塔。このボリュームが安心感を生みださせます。
と、こんなことを考えてまち歩きをしてみたらいかがでしょう。プロバガンダ、アジテーションする建物とそれを受ける市民。まあ、実際にはそれほど意識的にアジテーションを受けるわけではないんですが、人の潜在意識のなかに深く入り込みます。
ただ、このアジテーションする建築物、メインテナンスを怠ると、自滅します。われわれヒューマンスケールの建物と同じ、なんて考えると、ちょっぴり溜飲が下がる!?