未完の建築――アジテータになれなかったネオ・ルネサンス図書館
(国立国会図書館国際子ども図書館[旧国会図書館支部上野図書館・旧帝国図書館])
東京国立博物館(通称・東博)西側と東京藝大の間の区道に入るとすぐ左手に現れるのがスクラッチタイルのこぢんまりとした黒田記念館。その先に巨大な洋建物が突如として現れる。パステルカラーに緑青(ろくしょう)の屋根がのる。異国情緒たっぷり。このエリアは別世界をかたちづくっている。
子ども図書館は、図書館という大きな枠組みを保ちながらも当初の帝国図書館→国会図書館支部上野図書館→国立国会図書館国際子ども図書館――とその用途を変えながら、100年以上生き続けている。まさに、じんわりとした生命力と根気強い忍耐強さが伝わる建築物だ。
児童書に特化し、しかも国立とか国際とうネーミングから、ついつい蔵書数に期待感を膨らませてしまいがちだが、蔵書に埋まるというイメージからはほど遠い。とはいえ、部屋は豪華だ。
旧貴賓室を改修した「子どものへや」、「おはなしのへや」、「世界を知るへや」等が圧巻!
室内撮影は禁止されているので、ぜひ足をお運びを。現在、年齢、子連れに関係なく、誰でも自由に入館できる。
館内にはいると、新たに改修され差し替えられた部材と従来からの部材が肉眼で判る!
来訪者に強烈な印象を与える巨大な三連アーチ窓。
アーチ窓。建物の基本はルネサンスなのだが、
この開口部はチューダーアーチになっている。
キーストーン(要石)。ただし、この子ども図書館の構造はRC。
階段窓。近代建築を訪れた際、まず目にしたいのが階段まわりだ。
窓台。こんな立派な窓台がつくられていたんですね。ビックリ!
内部から見る情景(森の向こうにバロック建築の旧帝室博物館、
表敬館が見える。
人間の尺度を超えたアーバンスケールの建物は、視覚的にインパクトがある分、建築主の財力、権力、威厳――をこれでもか、というように見せつける。建築物は施主のアジテーション、プロバガンダとなる。
「小さく産んで大きく育てる」というのは、ゼネコン(general contractor)の専門用語で、計画当初は予算が通りやすいように小規模で進め、受注後は、現場は生きものだ、土は生きものだ、との論理から設計変更に次ぐ設計変更を繰り返し、目的の額にまで増やすというものだ。これが、業界でのある種常識ともいえるのだが、帝国図書館は、逆に予算が減額され(日露戦争による予算不足。ただし、中央停車場〔現・東京駅〕は戦勝記念を絡め、事業規模を膨らみに膨らませた)、当初計画でロの字型の広大な建造物になる筈であったものを表通り側のみで工事は終了させている。図書館という施設が国民に国力をアピールする強力な情宣活動となりえない、と判断されたわけだ。
当初計画の1/4ほど、ということで、エントランス部がよく判らないのもこの理由から、ともいわれる。
第1期
竣工:1906(明治39)年
設計:久留正道、真水英夫、岡田時太郎
構造:鉄骨補強煉瓦造り
第2期
竣工:1929(昭和4)年
設計:久留正道、真水英夫、岡田時太郎
構造:RC(鉄筋コンクリート造り)、
地下1階地上3階建て(一部7階建て)
住所:東京都台東区上野公園12―49
[東京都選定歴史的建造物]
第1期の構造物が単純な煉瓦造りではなく、耐震性のある鉄骨補強煉瓦造りとしたのは、当時日本最大の地震・濃尾地震(1891・明治24)を経験したあとに進められた建築物だからである。








