名もなき毒/宮部みゆき | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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名もなき毒


無差別連続殺人事件が起きて、それを解決していくのだからちゃんとミステリーなのだけれど、ハートフルな要素がずっと流れていて、表題にもある“毒”が持つテーマが重たいのに救われる。
むしろ、“毒”に侵されている多くの人々を救いたいがためのお話にも思える。


探偵役の主人公が、財閥の一人娘と純粋な恋愛で結ばれた“逆玉”サラリーマンで“いい人”。なにもかも順調で幸せな境遇の探偵が、不幸な事件の解決に関わる理由は、彼の好奇心だけではなく、その人の良さが原因だったりする。
昨年夏に新書版で出ている『誰か』 と同じ主人公が登場する連作だが、もちろんこの一冊で十分に成立している。未読なら、この設定が気に入ってから『誰か』 を読んでも遅くない。

人のうらやむ幸せで平穏な毎日を送る主人公の周りにも“毒”が存在する。
つまり、誰にでも、どこにいても、有毒な物質や人の悪意という毒からは逃げ切ることができない…。


って、ここまではがんばって書いてみたけど、このお話に、これ以上のシンパシーを持つことがボクはできなかった。書くべきことが見つからない。
面白いんだよ、この小説。宮部みゆきだし…。イッキに読んだし。
でも、ボクの感情はまったく動かなかった。
なぜ?
いろいろなブログや、アマゾンの書評を読んでみても、評判は良い。
作品に責任はない。
ただ、いまのボクが信じている世界観と、あまりにズレがあったのかも知れない。


ボクが小説で感動する要素のひとつは、人と人との関わり、関係性だ。
恋であったり、信頼であったり、尊敬であったり、嫉妬や恨みや、憎しみが、
小説のなかで際だてば際だつほどフィクションとして面白く感じるし、感動を覚える。
その点で、ここに登場する主人公や周辺、加害者や被害者たちのそれぞれの関係とそこから生まれる感情に、暖かさ以外のシンパシーを感じなかったような気がする。あるいは、理解できなかったのかも知れない。


繰り返すけれど、小説としては十分に面白い。
ハートウォームなミステリーである。
社会性もあり、魅力的なシーンも会話も多々あるし、読み終わって後悔はない。
でも、ボク個人として読後に残ったのは、違う人たちが構成する、違う世界で起こった、ボクとは無関係のエピソード、といった傍観者としての散漫な印象。。。
いつもならブログで取り上げることもなかったワケだが、いろんな本を読んでいると、こういう微妙な出会い方もある、ということを書いておきたかった。
じつは、読了する本の三冊に一冊はこんな感じ。書棚にしまい、再び手に取ることはないのかな。。。


■名もなき毒/宮部みゆき■