恋愛寫眞 もうひとつの物語/市川拓司 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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恋愛寫眞


この小説が生まれたのは、一本の映画がきっかけだ。
2003年『恋愛写真』(広末涼子主演・堤幸彦監督・緒川薫脚本)を発案とした小説として、同年、書き下ろしオリジナルとして出版された。
この素敵な小説を世に送り出すきっかけとなった映画『恋愛写真』は、とてもとても優しくて心地いい映画だった。
ひとことで言えば、あちこちで写真を撮りたくなる映画。


その映画のオマージュとして『いま、会いにゆきます』の市川 拓司が書いた小説は、人生から純粋に“恋愛”だけを抜き出して、培養して、世に送り出された。
そしてこの秋、今度はこの小説の方を原作とした映画が公開される。
タイトルは、『ただ、君を愛してる』
ボクは未見だけど、試写を観た人たちの評判がムチャクチャいい。
ゼッタイ観るぞ、と思いつつ、久しぶりに原作『恋愛寫眞 もうひとつの物語』を書棚から引っ張り出し、再読した。
とにかく、大好きな小説のひとつなんだ。


ボクは、
女性には髪がキレイでいて欲しいし(必ずしも長い必要はない)、
明るくて人気者であって欲しいし(イケイケの明るさは必要ではない)、
柔らかなスタイルであって欲しい(必ずしも胸が大きい必要もない)。
小説や映画で感情移入をする対象の場合は、際だつ美しさか、万人が認める愛らしさが前提となったりする。そこに個性が加わって魅力となり、ヒロインたり得る。
なのに、この『恋愛寫眞』のヒロインは正反対の姿で登場する。
彼女が恋をする対象も、純粋だけど冴えない大学生の男のコ。
そんな二人の恋愛物語には、当初、戸惑ったものだ。著者の修辞的な表現が好きだから、リズムに乗った会話やシチュエーションを楽しみながらも、このままこの二人は、この地味な恋愛話に付き合えというのか…、そう思っていたりもした。

結論から言えば、とんでも無かった。
著者は、主人公たちが魅力的に見えてくる要素を、思いも寄らない方法で提供する。
そして読み進むウチに、ボクも、この二人のことを大好きになる。


この小説には長いエピローグがあるのだが、その部分に到達するころには、誰しもきっと流れる涙をこらえきれなくなるに違いない。


小説を読んでいて、感情が勝手に動き出す瞬間が好きだ。
泣く、笑う、怒る、嫉妬する、憎む、欲する…。
実生活ではコントロールしなくてはならない感情を、読者というバーチャルな立場でいるときには、解放できる。感情に、流されるままに。
『恋愛寫眞』は、ボクのココロの底にある感情を解放する。


恋の初心者に、片思いの真っ最中で苦しんでいる人に、大切な人がいてラブラブな人たちに、もう、恋なんて関係ないと思い込んでいるオトナたちのココロにも、ビシビシと響くに違いない。
先入観を持たずに手にとって欲しい。
いま隣にいる愛する人を、今まで以上に大切にしたくなる小説です。

たとえ、それが片思いでも。


映画の公開は、10月28日。
『ただ、君を愛している』、 ゼッタイ見に行くぞ、っと。


■恋愛寫眞 もうひとつの物語/市川拓司■