映画化をきっかけとして新装版が出て、この『フライ、ダディ、フライ』は正確に6回目を読んだ。
恥ずかしいけれど、本当に恥ずかしいけれど、この小説はボクにとってほとんどバイブルと言ってもいいかもしれない。いつ読んでも、何回読んでも、元気がモリモリ湧いてくるとっても楽しい応援小説なのだ。
東京に200万人くらいはいそうな平凡な中年サラリーマンが主人公だ。
映画の公開日と同じく‘7月9日'に、事件は起こる。
この事件が妻子あるおっさんにとってシンプルだけど重要な動機となって、今までの世界から飛び立つ決意をする。そして、イチバン大切なものを守るために、夏の一ヶ月間を使ってカラダを鍛え、心を解放していく。
なんて単純なストーリー。まるで少年ジャンプの漫画のようなコンセプト。
でもね、そんなシンプルさが、根回しとか、やむを得ない事情とか、訳知り顔とか、ゴマすりとか、お追従とか、馴れ合いとか、世間の目とか、常識とかに代表される閉塞感と永年付き合ってきたサラリーマンや、
自主規制とか、たったひと言がいえない躊躇いとか、他人に対するやっかみとか、体力的な限界とか、目標を達成できないときの諦めなどなど、自分のなかで上手に折り合いをつける事で世渡りしてきたオトナにとっては、じつに新鮮なのだ。
目覚めた主人公のおっさんをルーク・スカイウォーカーとすれば、オビ-ワン・ケノービやヨーダの役割を“あの" 高校生たちが担う。自分をおっさんに置き換えての共感に加えて、彼らの視点からも楽しく読める。
だからもし未読であれば『GO』で世界観を共有した後、『対話篇』、『レヴォルーションNo.3』 と、できれば順番に読むべきだ。ゼッタイに順番に読む方が100倍楽しい。どうしても早く読みたい、というのであれば、せめて『レヴォルーションNo.3』を読んでから。お願い…。
笑えるシーンも泣けるエピソードもたっぷり満載。そして、しっかりと自分と世の中の関わりを再度考えさせられる。
何度読んでも、後半に突入するとページ毎に、“がんばれ!がんばれ!"とおっさんを応援してしまう。気がつくと、ボロボロと泣いている。負けるモンか!と、元気と勇気が湧いてくる。
そして、たまにしか挙げないダンベルに10Kgをセットしてみたり、いつもは本が積んであるベンチを片付けて、腹筋100回にチャレンジしてみたりするのだ。そんな日は、ぐっすり眠れる。どうせ3日も続かないから、また、しばらくしてこの小説を読むのだけれど。
■フライ、ダディ、フライ/金城一紀■
*金城氏によれば、『フライ、ダディ、フライ』もともと『GO』映画化の時からのシナリオアイディアが先で、小説はそのノベライズだとか。ホントは、一方の主人公スンシン役は長瀬クンをイメージしていたのだけれど、岡田クンでもいいや。見に行くぞ~。