さくら/西 加奈子 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

デジタル編集者は今日も夜更かし。

出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!


とんでもない小説だった。

フワフワとした文章、分かりにくい構成に、なんじゃ、こりゃ?、読みにくい小説だなぁ、と思いながら最初の1~2章はかなりガマンをしながら読む。
“理想の家族”を構成する両親、兄、妹、“僕”、そして愛犬サクラがそれぞれ次第に魅力的に思えてきて、それだけでしばし読み進むことができた。
ただ、予約していた村上龍の新刊『半島を出よ』が届いたばかりなので、早くそちらを読みたくて、最後まで気力が続くかなぁと危惧しながら。

そして…
気が付いたら、朝だよ。
参ったな。
悲しさとか、切なさとか、感動とか、そういった感情とは別の涙がにじむ。何だか、普通の小説とは違う魅力があった。力があった。
だから、読みにくい。
展開する物語と登場人物たちと正面切って向き合うのに、体力と精神力を必要とした。
疲れた。けれど、もしかしたら、自信はないけれど、読んで良かった。

家族の愛。子供たちが成長する過程で出会っていく、それぞれの愛。
そして、どんな家庭でも起こりうる事件を通して、あっけなく崩壊していく“理想の家族”。

帯に「奇蹟」とあるが、奇蹟はない。決して、いま流行の奇蹟の物語ではない。
しかし、救いはある。
「それでも、僕たちはずっと生きていくー。」
帯に大きく書かれたこの言葉が、この小説の本質を表していると思う。

マジメに読めばそれだけしんどいけど、読んでみて損はしない小説。

さくら/西 加奈子
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*写真は、本を読む前に一本だけ満開となっている都内某所の山桜をバックに写した。でも、内容とは無関係の写真になってしまった。タイトルの『さくら』は、もしかしたら愛犬サクラのことかな? サクラの名前の由来はたった一枚の桜の花びら。さりげなく象徴的なエピソードとして書かれているけど、満開の桜とは、関係がない。