内緒にしておきたい店。 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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出版社に在籍していながら、仕事はネット、携帯などデジタル企画のプロデュース。

もし雑誌をやっていたら記事にしたかもしれない様々なネタを、ジャンルにこだわらずコラム風に書いてみる。アナログ志向のデジタル編集者は、相も変わらずジタバタと24時間営業中!


オトナを対象にした情報誌を、創刊から数年間担当した。
その間、新規にオープンするおいしい店には何軒も足を運んだし、都内の美味いと評判のお店にはなるべく出かけるようにしていた。
おかげで素敵な店をたくさん知った。
それでも、その当時に知った店で、いまも通う店は数少ない。

何度か訪れる店の条件は、いくつかある。美味しいことはもちろん、コストパフォーマンス、客層やサービスも含んだお店の雰囲気。そして創意。これはボクにとってかなり重要で、新鮮な驚きが毎回欲しい。
オトナになると、店の馴染みになって「いつもの!」と注文ができる店が居心地良いことは確かだ。でも、ボクは、まだまだ刺激が欲しい。退屈を心地よさに勘違いするほどには、枯れてはいない。

最近、これはもしかしたらしばらく続けて通うことになるかもしれないというお店にいった。

紀尾井町の超有名料亭で修行をしたというシェフの名刺には、食ディレクターとある。
都心だけど、駅からは少し遠い。和食だけど、20%くらいフレンチのテイストが加わる。13席しかないけど、急かされることなく、ゆっくりゆったりと食事ができる。そして、これが重要なのだけれど、すごく美味しいのに、ゴクゴク一部の人しか知らない(^.^)
店名でGoogle検索をかけても、ほんの数件しかヒットしないお店なのだ。

こういう店は、大切にしたい。情報誌をやっていたのにこんな事を書くのは矛盾するけど、雑誌に紹介された店は、急に混みはじめて荒れることが多い。
紹介して良い店と内緒にしておきたい店があるのだ。だから詳細は、ここでは内緒にしておきたい。

コース料理しかない。日常の夕食としては安くはない。でも接待で行くような店でもないので、特別の人と特別な日に行く店を想像して欲しい。
どれだけ美味いか。たとえば、3月24日にボクが食べたメニューを紹介してみる。食ディレクターのテーマは“待ち遠しい春”。


最初に出てきたのが、千葉産蛤のスープ。
エキスたっぷりの白いスープに、すがすがしく透明で深い緑のトレトレ生海苔と春の鮮やかなグリーンピースが浮いている。そこに桜道明寺が添えられていて、芳醇な海のスープに、春の香りを運ぶ。

前菜は、
富山の蛍烏賊をプロバンスの家庭調味料タブナード(ブラックオリーブベースのソース)和え、新グリンピース豆腐、生雲丹桜花餡、諏訪湖の公魚フライにバジルタルタル、岩手もち豚の炙り、自家製唐墨味噌漬けとリコッタチーズ、を少しずつ。
旬の蛍烏賊、公魚(ワカサギ)は、胎内に春を閉じこめたまま調理され、ソースはその香りを損なわない程度に美味さの手助けをする。バランスが絶妙。最後につまんだ唐墨(からすみ)とリコッタチーズが舌の上でとろける。

次に、
フォアグラとタケノコ豆腐のソテー&木の芽最強味噌に、タケノコ餡掛け。最強は字をあてた洒落らしい。フランス料理の素材であるフォアグラと、木の芽の香り豊かな味噌を塗った豆腐を香ばしくソテーし、青椒牛肉絲のようなタケノコ餡がかかっている。奇を衒っているようで、なんの矛盾もなく一体化した一皿。

魚は、
淡路島の桜鯛と春のフレッシュ旬野菜with自家製ちり酢のジュレ。鯛の甘さと、ジュレの酸味がほどよく絡む。

次に天ぷらが出る。
もうこの辺りになると素材を覚えていないのだが、野菜だけのひと皿と銘打たれた皿には、たとえばいまの季節だけに咲くアロエの花の天ぷらなど。

そして、髭ダラの一人鍋。真ダラよりも鍋にすると味が良いと言われる髭ダラの、小皿のような鍋だ。出汁がきいていて、お行儀悪くも思わず最後まで飲み干す。添えられた新潟のかんずり(唐辛子を雪で晒し、数年の熟成を経てまろやかな辛さとなる伝統的調味料)を少しずつ加えて。

さらにさらに宮城牛肉と姿筍のシンプルな炭火焼き。添えられているのはローズマリー&岩塩と特製金山寺味噌。大好きな岩塩で食すも、味噌も美味くてこれは、そのままいただく。

ご飯は、小ぶりのじゃこ飯焼きおにぎりのお茶漬け。これだけの品数を食べても、さらりと胃に収まる。

そして、デザートもスペシャル…。


満足、満足。
シェフとの会話も楽しく、13席の空間でゆったりと、目でも舌でも春を感じることができた。どうやら、来月発売される某オトナ向け雑誌2誌で紹介されてしまうらしい。開店から十ヶ月、まだまだ満席にならない日もあるとのことで、シェフは雑誌掲載が嬉しそうだったけど、ボクとしては微妙。いつ、予約の取れない店になってもおかしくない実力があるからだ。

こんな店には、時々、せめて季節毎に通いたい。続いて欲しいから、繁盛を祈るけど、でも、予約の取れない店になってしまうのも少し心配だ。

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