反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク5/石田衣良 | デジタル編集者は今日も夜更かし。

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この本の最後の十数ページを、池袋ウエストゲートパークのベンチに座って読んだ。マコトが言うところの石油パイプラインのような、あのベンチで。
なんという贅沢。至福の時。

シリーズをずっと読んできたファンにとっては、好ましく高品質な安定供給ぶり。
期待通りにマコトはトラブルに首を突っ込み、魅力的な新キャラと絡み、そして最後にはいつものように、せつなく、爽やかに決着をつけてくれる。

ボクもある時期、訳あって出かけた池袋だけど、久しぶりに出かけてみると他人の縄張りに踏み込んだような居心地の悪さを感じる。
ウエストゲートパーク=西口公園にだって、日が暮れて立ち寄る勇気はない。豊島区の公園紹介には、“芸術の香りをただよわせています”なんて冗談が書かれているけど、もちろん、石田衣良の描写の方が正確だ。

ミッソーニのSAMPLE品のようにド派手なセーターを着たオジサンが、煙草を吸いながらJRの階段を昇ってくるのをみた。
背中にディズニーライクな、でも、プルートでもグーフィーとも違う巨大な犬キャラを背負ったジャージ姿の母と娘が仲良く歩道にしゃがんでいた。
少人数の撮影クルーが、過剰な化粧をした見たこともない女のコを、レフなしでスチール撮影していた。

マコトは、そんな池袋で生きている。
今回、マコトはいつもの池袋を出て、なんと六本木ヒルズにまで足を延ばす。似合わねぇ~。あまりマコトを池袋の外に連れ出さないで欲しいな。彼だって、六本木は居心地が悪いに違いない。それが唯一、気になったところ。
池袋ウエストゲートパークは、とってもドメスティックな“青春小説”だ。
だからこそ、たとえどんな事件が起ころうがディテールにリアリティがあって、事件と正面から向き合うマコトの真摯な生き方とともに、作品の魅力に繋がっている。

I.W.P.G.、“池袋ウエストゲートパーク”のシリーズを一冊も読んだことのない人は、もしかしたら、日本一の幸せ者だ。なぜなら、これからサルやキング、ヒカルにだって会えるのだから。ボクも、もう一度、シリーズを最初から読み返してみようと思う。
(もしI.W.P.G.未体験なら文春文庫になっている第一作『池袋ウエストゲートパーク』から読んで欲しい)


反自殺クラブ 池袋ウエストゲートパーク5/石田衣良
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163237704/ideabowl-22/

*写真は、池袋ウエストゲートパーク=池袋西口公園を見下ろす某所よりいつものように携帯で撮影。同心円の周囲に銀色に光るのが、小説にもたびたび登場するパイプのベンチ。画面右方向に池袋駅、左側に芸術劇場が隣接する。正面奥に西口ロータリー、その先に、マコトの果物屋がある西一番街通りがある。