一時期、ベンチャー企業の若い経営者やスタッフとよく遊んでもらっていた。お互いに忙しくなって最近はなかなか会えないが、MLやメール、ネットニュースなんかで消息を聞いたり見たりする。いま話題のあの企業の記者会見なんかに当時の遊び仲間が出ていたり。
ある飲み会で、会社を立ち上げたとき備品として必要なものは何か、という話題になったことがある。パソコンはもちろんだが、何よりもみんなが共通して“絶対必要なもの!”としてあげたのが『ホワイトボード』だった。
何はなくとも、ホワイトボード! ボクも、ホワイトボードは大好物だ。
会社の通常の会議では、事前に用意をしたレジュメを配布し、出席者はその紙に視線を落としながらひたすらプレゼンターの説明を聞く。
しかしボクたちのプロジェクトでは、プレゼンに限らず日常のミーティングでも、若いスタッフや、ネット系ビジネスに携わるコラボ企業の参加者が、普通に、気楽に、しょっちゅう席を立ってマーカー片手に熱弁を振るう。異論、疑問があるときは、その人間が立ち上がって、別のカラーマーカーでラインを引き、コメントをつける。
気が付くと、誰もテーブルについておらず、全員がボードの周辺に集まっていることもある。
そんな会議の結果は、概して成功の予感がするものだ。
プロジェクトのイメージを共有していくために、コンセプトを明確にしていくためには、なるべくあやふやな思いこみを排除していく必要があるのだ。ホワイトボードを使った会議を経ると、それぞれの役割分担に応じて、各自が責任を持って現場でブレのないジャッジが速やかに下せることになる。ビジョンを共有し、スケジュールを確認し、スピーディーな仕事に繋がる。
考えてみると、あうんの呼吸、とか、上司の意を汲む、とか、そんな時代ではないのだ。
社員旅行に出かけたり、終業後に揃って縄のれんをくぐったり、上役の引っ越しを手伝ったりして親睦を深める…。日本の企業は、日本という国はそうやって発展をしてきた。
先週の『サンデープロジェクト』で、ライブドアの堀江さんが田原総一朗氏のインタビューを受けていたが、その傍らにはホワイトボードが用意してあった。途中、堀江さんは田原氏に一言断って、ボードに企業経営者の責務について分かりやすく図を書き始めた。なるほど…といいつつ、田原氏もマーカーを手にして、堀江さんの図に、自らの理解が正しいかどうかを確認する意味で、さらにラインを引いていた。そういうことなんですよ、と堀江さん。そこで、初めて世代格差のあるふたりに共通の認識が生まれた。
時代の変化を象徴するシーンだな、とボクは思った。
選択肢も少なくあうん、で通じた世代と、帰国子女や外国人や異なる宗教や登校拒否や飛び級や、とにかく様々な個性に囲まれて育った世代の違いは大きい。7チャンネルしかなかった世代と、100チャンネルから番組を選べる世代の差だ。つまり、彼らには、フツーは、の普通は存在しないし、当然みんなは、の当然も、ない。そのことを知っているから、共通の概念を確認するためにも、ホワイトボードは必須なのだ。
編集部には小さくてAVルーム兼用の会議室があるのだが、スペースもなくていままでボードがなかった。だがホワイトボードになるマグネットシートを見つけて、アスクルで購入した。今日、若いスタッフとふたりだけで新しいコンテンツビジネスについての企画会議でシート型のホワイトボードはデビューした。ようやく一人前の会議室になったのだ。
いままでこの会議室では、まずテーブルに模造紙を広げてテープで留め、それをボード代わりに使っていた。この方法は、シリコンバレー華やかなりしころ、ネットビジネス創世記の当地で大活躍をした“ガズーバ!”の大橋禅太郎さんにヒントをもらった。
会議中、3色のサインペンを使い分けて、ボード代わりにどんどんとメモをとり、図を描いていく。向かいに座るスタッフも、自分のボールペンで、そこに反対側から書き込む。初出、初耳の言葉は、文字で書くことで思い込みがなくなる。プロジェクトのフローは、より分かりやすく、よりシンプルにまとまっていく。
この模造紙法の良いところは、会議終了後に、必要な部分を千切って持ち帰れること。
電話番号や、アドレスなどもチョコチョコとメモして、ビリッと相手に渡せる。
今日のミーティングで、また新しいコンテンツアイディアの卵が生まれた。
もしかしたら、大きく育つヒット企画になるかもしれない。
若いスタッフは、ボードに書かれた内容の一部を模造紙に書き写し、グワッシとテーブルからはがしてそのまま持ち帰った。
きっと、週末にはそれを自宅で広げて、さらにアイディアを膨らませ、具体化してきてくれるだろう。
ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記/大橋禅太郎
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