市川拓司が、好きなんです。
だから…ね。
『いま、会いにゆきます』は、たまたまブームの100万部ではなくて、ちゃんと100万人に読んで欲しい小説だった。
『そのときは彼によろしく』の暖かさや、『恋愛写真―もうひとつの物語』の切なさは、“いま、会い”以上に素敵だし、ネットから生まれた市川たくじ時代の『Separation』から大好きな物語を紡ぎ出してくれている。
この『弘海』は、市川作品ならなんでも許せてしまうファンの方か(つまり、次の作品も必ず読む人のこと)、まだ一冊も読んでいない方(つまり、たまたま“いま、会い”を読みたかったけど図書館で100人待ちになっていたから先に新刊を手にしたと言うような人)には、オススメ。(^^ゞ
市川作品って、父性の小説だと思っている。
ただし、まだ父親にはなっていないか、なりたての新米パパや、あるいは女性が想像するある意味で理想的な父親としてのパートナーのような。
彼の書く父性の愛は幻想、つまりファンタジーであって、ボクたちはあり得ない世界だと知っている。あり得ないけれど、あるかもしれない、あって欲しい、と願いながら感情移入をしている。そこが魅力なのだ。
だからこそ、恋愛や家族愛を、ファンタジーを織り交ぜながら、心地よい会話とテンポで読ませてくれる貴重な作家である氏の作品が、予定調和に陥って世界を閉じないで欲しい、と切に願う。
氏自身はこの『弘海』を「いつものように、ぼくの隣にいる女性にまず読んでもらったら、「もしかしたら、一番好きかもしれない」って、言葉が返ってきました。」と言っているが、だとしたら“世間=読者”は氏を取り巻く環境の外にある、と思うのだ。
ボクは読んだ本の数冊に一冊程度、ホントに皆にも読んで欲しい、という作品に限ってこのブログで紹介しようと思っている。しかし、今回はこの作品については、“市川拓司”っていいよ!ホントはもっと面白いよ!という意味で、過去の作品にリンクを貼って一緒に紹介をした。
もし、『そのときは彼によろしく』を読んでいない人がいたらぜひ! 泣きます。あり得ないほど都合の良い設定かもしれないけど、それが分かっていても泣きます。
弘海 -息子が海に還る朝/市川 拓司
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022579900/ideabowl-22/
*写真は『WIND SURFING 前野やすし写真集/海・を・跳・ぶ』(1982年 リード社)特別付録をバックに撮影しました。