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雑記帳「目白で目が白黒」

エディットハウス代表 岩中祥史のブログ

 前日、札幌から帰京。今日は上野の東京文化会館にオペラを観に行きました。あいにく、前の日から降り続いていた雨で、着ていく服にそれほど配慮することができませんでした。でも、オペラというのは、好むと好まざるとにかかわらず、そういうことを考えなくてはならない代物なのです。歌舞伎とオペラに共通しているのは、その点にあるといっても過言ではなさそうです。違うのは、オペラのほうがチケット代がべらぼうに高いことでしょうか。歌舞伎のような「ちょい立ち見で」といった席も、オペラにはありません。


 そんなオペラに、大枚はたいて行ったのですから、肩が凝るのはしかたないかも……というのが正直な思いでした。でも、実際に観てみると、これがけっこう楽しめるのですよ。歌舞伎も、日本語なのに現代人には理解できない台詞が多いので、ときにイヤホンガイドのお世話になることがありますが、そういう意味ではオペラも同類かもしれません。


出演者は皆外国人で、台詞はイタリア語だったりドイツ語だったり。舞台の両サイドにプロンプターというのでしょうか、台詞を日本語に訳した文字が流れ出てくる電光掲示板のようなものが用意されているので、ストーリーもほぼ理解できるわけです。まあ、演し物によっては、内容がほぼ想像できる場合もあるようですが。


 いまさらながら驚いたのは、観客の素性がふだん私のような者が接している人たちとかなり隔たりがあるということです。自分で楽器をひいたり歌を歌っているとおぼしき、いかにもといった感じの人も多いのですが、「趣味 オペラ鑑賞」これはもう“別人種”といったほうがよいかもしれません

 11日から沖縄に滞在しているのですが、昨日はゴルフをしました。ゴルフなるものを、自分でもやってみようかと思ったのは55歳を過ぎてから。それでも、さしたる意欲はなく、自分で道具を買い揃えてみようと思ったこともなければ、ましてや自分からゴルフ場に行きたいと思ったこともありません。だいたい、ゴルフなんぞにうつつを抜かす人の気が知れなかったのです。それと、なぜか小さなころから、ピンポンとか小さな球は苦手で……。

それが、なぜに、突然?


 4月30日に、ほぼ半年ぶりくらいでクラブ(これももらいもの)を手にしたのですが、スコアカードをつけるまでもないような、全ホール“アンカウンタブル”の結果。ただ、その日の夜、せっかくお金を出し、貴重な時間を費やして遊ぶ以上は、何か楽しみを得られないと……と、ふと思ったのです。「モト」は取りたいなというという、名古屋的な発想といってもいいでしょう。


 そして沖縄に入ると、すばらしくさわやかな天気。こういうときにゴルフなんかすると、きっと楽しめるんだろうなと思ったものの、グリーン上での悪戦苦闘ぶりを思うとためらってしまいます。でも、もちろん、道具など持ってきていません。そこで、とりあえず中古品でいいから揃えてみようかと思い立ちました。インターネットで検索すると、沖縄にも中古のゴルフ用品店がいくつかあります。その中で、分室のあるところから近い店を選び足を運んでみました。


そこで出会ったスタッフが、実にすばらしい人だったのです。これまでの実情を正直に話すと、「たしかに、初心者のうちは道具に支配される部分が多いですね。自分の力、体格に合わない道具を使うと、おかしなクセができちゃって、その後進歩しなくなりますから」とのこと。なるほどと思いました。


とりあえず「いまの自分に合ったものをそろえたい」とお願いしました。中古のゴルフ用品店には珍しく、試打ができるコーナーまであります。そこで、スイングらしいことをしてみせると、そのスタッフは何本か、私に合っていそうなクラブを持ってきてくれました。そして、次々と試し打ちをし、ドライバー、ユーティリティー、アイアン6本、サンドウエッジ、パターと全部で10本のクラブを選んでくれました。靴やら手袋など、プレーに必要なものをそろえ、なんとなく高揚した気分で店を後にしました。


それからゴルフ場を自分で予約し、15日にグリーンに出たのです。サザンリンクスという、どのホールのティーグラウンドからも海が見えるような、いかにも沖縄らしさに満ちたコースでしたが、自分でも信じられないくらいのプレーができました。まあ、楽しかったこと楽しかったこと。第一打がまっすぐ、そしてある程度遠くまで飛んでいくことがこれほど気持ちのいいことだとは! 後で聞くと、けっこうレベルの高いゴルフ場だったようですが、そんなことは関係ありません。プレーする人が楽しめれば、それでいいのです。


この経験を機に、しばらくゴルフに真剣に取り組んでみようという気持ちになったのはいうまでもありません。「弘法は筆を選ばず」という言葉がありますが、ゴルフ初心者にとっては、「道具がプレーヤーを選ぶ」のだと思ったしだい。

 クルマで走っていても、首都圏のように「急(せ)く」ドライバーのなんと少ないことか。信号が黄色だと、たいていのクルマが停車します。赤に変わっても強引に進むクルマが多い首都圏などとはまったく違います。優先権のない通りからメインの通りに出ようとするときなど、驚くほどの寛容さで道を譲ってくれます。クラクションの音もめったに耳にしません。


 東京に長く暮らしていると、あわてない、急がないという暮らし方を、すっかり忘れ去ってしまっているのですが、そのことの不健全さを改めて実感するのが沖縄といっていいでしょう。

 東京から来るときは、ふだんのクセというか習慣で、つい多くの仕事を持ってきます。高い送料を払って、段ボール箱にぎっしり資料を事前に送ったりもしました。ところが、那覇の空港に降り立ち、その空気に触れたとたん、仕事モードは消えてしまいリラックスモードに支配されます。そこがまた、リゾート地・沖縄の魅力なのかもしれません。


「リゾート」という言葉の語源は

フランス語の“resortir”で、「再び出かける」という意味だそうです。


一回こっきりで終わるのでなく、何回でもそこに行きたくなる場所──ということでしょうか。そして、その地でもう一度自分を取り戻す、もう一度自分を見つめ直す。それを実現するための空気というか土台というか、そんなパワーを秘めているのが「リゾート」なのではないかと思います。

 だとすると、そういう場所に「仕事場」を設けること自体、なんだか矛盾しているような気もします。ただ、私個人についていえば、オフィスだろうが取材で出向く出張先だろうがリゾート地だろうが、そこにはいつだって「仕事」があります。どう理屈をつけようが、それから逃げることはできません。逆に言うと、どこでも、いつでもできてしまう仕事なのです。


 ただし、仕事モードの中で仕事をするのと、リラックスモードの中で仕事をするのとでは、おのずと中身が違ってくるかもしれません。来るたびに「自分を取り戻し、自分を見つめ直す」ことができるのですから、心強いことこの上ないとも言えます。その強みをこれから先の仕事に生かしていきたい、そんな殊勝な(笑い)ことを思いました。